2人のミツと、1人のパニック(5)
夜も更けたころ。
来人は、ようやく秦の待つ部屋に帰ってきた。
玄関を開けた瞬間、秦が速攻で飛んできて、来人をぎゅっと抱きしめる。
「お、おい……秦?」
「……無事でよかった」
低く、少し震えた声だった。
秦の腕は、来人の背中にしっかりと回されていて、まるで絶対に離したくないとでも言うようだった。
来人は、きゅっと胸が熱くなるのを感じた。
「別に、何もされてねーし……」
言い訳みたいにぼそぼそと呟くと、秦は来人の髪に顔を埋めながら、ぼそりと呟いた。
「深月……マジでぶん殴ってやろうかと思った」
「ええっ……!?」
「おまえをアイツに預けるとか、正気じゃねえだろ……」
秦は本気で怒っているらしく、来人の背中をぎゅっと力強く撫でた。
でも、怒りの裏に、心配と寂しさがにじんでいるのが、来人にはわかった。
「……ごめん。心配させた」
素直に謝ると、秦は顔を上げて来人をじっと見た。
その瞳に浮かぶ、安堵と、怒りと、独占欲と――
全部が、来人を胸いっぱいにさせた。
「……今日は、絶対、離さねぇからな」
低い声で宣言すると、秦は来人の手を引き、ベッドへと連れて行った。
ベッドに座らせた来人の膝に、自分の身体を重ねる。
「な、なぁ……?」
「おまえが悪い」
耳元で、甘く拗ねた声。
来人の首筋に、そっとキスが落ちる。
「一晩も……俺をひとりにしやがって……」
ぶつぶつと文句を言いながらも、
秦の手はやさしく来人の髪を梳き、背中を撫で、何度も何度も抱きしめる。
「……甘やかされてるの、俺の方じゃね?」
苦笑混じりに呟くと、秦はほんの少しだけ離れて、来人を睨んだ。
「違う。おまえが甘えろ」
「は?」
「俺に。今すぐ。……バカ」
顔を真っ赤にしながら、なおも真剣に言う秦に、
来人はとうとう堪えきれず、吹き出してしまった。
「あはは……わかったわかった」
そのまま、来人は自分から秦の首に腕を回し、そっと額を預けた。
「ただいま、秦」
「……おかえり、来人」
二人きりの夜は、
ぬくもりと、甘い匂いと、重なる鼓動で満たされていった――。




