2人のミツと、1人のパニック(3)
サガリバナ採取ミッションから、無事に帰ってきた深月。
ほっと一息つく間もなく、来人(深月Ver.)と、こっそりと入れ替わろうと画策していた。
「おつかれ。はい、これ装置返す」
来人はぐったりしながら、ものまね装置を深月に押し付ける。
「悪かったな。助かったよ」
深月は悪びれる様子もなく受け取ると、さっそく装置を解除――
「よし、これで問題な――」
その時だった。
バタン、とリビングのドアが開く。
「ミツ、今ちょっとええ……?」
不意に現れた白沢の姿に、二人同時に凍りつく。
そして、白沢の視界には――
・ソファに座る、無愛想な顔の深月(来人Ver.)
・装置をいじる、もう一人の深月(本物)
完全に「2人の深月」が映り込んでいた。
「………へ?」
白沢は、ぽかんと口を開けたまま硬直した。
「おい……深月が……2人おる……」
顔面蒼白になり、後ずさる白沢。
「な、なぁ、これ、俺の目ぇおかしなったんちゃうか!? なぁ!?」
「お、おちつけ大知!」
「そ、そうそう!これには深いワケが――!」
深月と来人が慌ててフォローしようとするが、白沢はもうパニックの極みだった。
「ミツが増えたら……俺、どっち選べばええん……?!」
なぜか**「選択肢」**の問題にすり替わり、勝手に両手で顔を覆ってしゃがみこむ。
「無理やぁぁぁぁ……!!!」
頭を抱えて転がる白沢。
来人は「いや違うから!」と必死で突っ込み、深月は頭を抱えた。
「……だめだ、こいつ完全にパニックだわ」
「どーすんだよ兄貴……!」
呆れる来人を横目に、深月はため息をひとつ。
「しゃーねぇ、大知。落ち着いて聞け」
白沢は涙目でこちらを見た。
「実はな、"俺"だった方は来人だったんだよ。俺が作った装置で、姿だけ深月に変えてただけ」
「……え?」
白沢の頭が、さらに混乱する。
「……つまり、ミツやと思ってたやつ、全部、来人……?」
「まぁ、そう」
「俺が甘えたり……ベタベタしたり……あれ、ぜんぶ来人に……?」
「そーだな」
「…………」
白沢は、真っ赤になって、その場にぶっ倒れた。
「だ、大知さんっ!?!」
来人が慌てて駆け寄る。
白沢はぴくぴく震えながら、最後の力を振り絞るように言った。
「……お、俺の人生、終わったわ……」
そんな白沢を見て、深月は肩を震わせながら笑いを堪えていた。
「まぁ、がんばれ」
こうして――
来人によるものまね偽装は、予想以上にハードモードで幕を閉じたのだった。




