2人のミツと、1人のパニック(1)
「……ちょっと、兄貴。これ、何?」
来人は不機嫌そうに眉をひそめ、指先で奇妙な装置をつついた。
銀色に光る小型機械の中央には、小さな画面と、見覚えのある自分の顔――いや、深月の顔が表示されている。
「あー、それ? ものまね装置。なりたい人の写真を読み込ませたら、その人の姿に変身できるんだ」
「なにそれ……なんで俺が兄貴になってんの!?」
「イタズラ心ってやつ?」
深月はまるで悪びれた様子もなく、肩をすくめた。
隣で腕を組んでいた秦も、呆れ顔でため息をつく。
「早く戻してやれよ」
「んー…」
どうも歯切れが悪い。
「そう言われると思った~。だから今、そのための材料集めに行くとこ」
「どこに?」
「沖縄」
さらっと言い放った深月に、来人と秦は同時に叫んだ。
「はぁ!?」 「沖縄って、そんな簡単に……」
「必要な材料、向こうにしかないんだよ。サガリバナって知ってる? 夜咲いて、朝には散る、幻の花。あれが必要なの」
深月は軽く説明すると、小さなリュックを背負い、タクシーを呼び出していた。
白沢には何も言っていないらしい。
「で、俺たちには何を……?」
「深月のフリして大知をごまかしといて。頼んだ!」
そう言うなり、深月はタクシーに飛び乗り、あっという間に走り去ってしまった。
呆然と取り残される来人と秦。
「……おい。マジかよ」
「深月のフリって……よりによって、俺かよ……」
来人は深月そっくりの姿のまま、頭を抱えた。
この状況、果たして白沢にバレずに乗り切れるのか――
嫌な汗が、じわりと背中を伝った。




