表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫耳はバレちゃいけない  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/53

ふたりとふたり、そしてこれから(4)

ある日の深月の自宅ラボ。

白沢は、いつも通り薬を飲んで動物的反応を抑えていたが、ふと深月がぽつりと呟いた。


「……なあ、大知。お前、うさ耳出たときの生え際って、どうなってんの?」


白沢はぴくりと肩を震わせた。


「は? なんでそないなこと気にすんねん」


「いや、単純に気になっただけ。観察しておきたいんだよね。戻すためにもさ」


深月はソファに無造作に座り、興味ありげに白沢を見上げた。

そのラフな態度に、逆に心臓が跳ねる。


(アホか、ミツの言うこと真に受けたらアカン……)

(けど、ちょっとでも元に戻る手がかりになるんやったら……)


ぐるぐる悩みながらも、白沢は小さく舌打ちし、しぶしぶ薬を飲むのをやめた。

すぐに、微かな違和感が頭にじわじわと広がる。


「……うわ、出てきた、出てきた」


深月が近づき、顔を覗き込んでくる。

白沢の耳元から、ふわりと柔らかい白色のうさ耳が伸び始める。


「や、やっぱ恥ずかしいって!」


思わず身をよじる白沢を、深月はまるで研究対象を扱うみたいに、無遠慮に手を伸ばしてきた。


「ちょ、近い! 近いっちゅうねん……!」


「動くなよ。ほら、根本、こうなってんのか……」


深月の指先が、耳の根元に触れる。

その触れ方は妙に優しくて、白沢の胸の奥が、きゅうっと鳴った。


(なんで……なんでそんな、普通に触んねん……!)


顔が熱い。

自分が恥ずかしがってるのを、深月がどこまでわかってるのか、わからない。


「やっぱ……ちゃんと皮膚から生えてんだな。すげぇな、お前」


「ミツはほんま、無神経や……」


ぼそりと文句を漏らす白沢に、深月はいたずらっぽく笑った。


「でも、嫌なら言えよ? やめてやるから」


その、どこか甘えるような言い方に、白沢はぎゅっと拳を握る。


(嫌なわけないやろ……! むしろ、もっと触ってほしいくらいやのに……)


けど、素直に言えるわけもなくて。

白沢はただ、真っ赤になった顔をうつむかせた。


「……もう好きにせぇよ」


ぼそっと漏らした声に、深月は一瞬目を細めたが、何も言わず、再び白沢の耳元に手を伸ばした。


ラボに満ちるのは、静かな息遣いと、ほんのり甘い空気だけだった。


「ほら、ちょっとじっとしてろって」


深月の低い声に、白沢は抵抗をあきらめたように小さく息を吐いた。

そっと触れる指先が、白沢のうさ耳の付け根を撫でる。


「……っ」


耳がぴくりと跳ねた。


「……ん? もしかして、ここ、くすぐったい?」


深月が悪戯っぽく笑う。

白沢は顔を赤くしたまま、ぷいっとそっぽを向いた。


「し、知らん!」


その反応が可愛くて、つい深月はもう一度、根元を撫でる。

ふわふわとした毛並みに、指が埋もれる感触。

なのに、下には確かに白沢自身の生身の熱がある。


「……ちゃんと、大知の一部なんだな」


自然にこぼれたその声に、白沢はびくりと肩を揺らした。

ふざけた空気ではない。

研究対象を見る目でもない。


「……っミツ」


ようやく、白沢は耐えきれずに顔を上げた。

深月と目が合う。

ふたりの距離は、指先ひとつ分くらいしかなかった。


「なぁ、ミツ……からかってんのか?」


白沢の声は、掠れて震えていた。


深月はふっと苦笑し、手を離した。


「からかってねぇよ。……大知が可愛いの、前から知ってたし」


あまりにも自然に、照れもせず言うものだから、白沢は完全に撃沈した。


「……アホ」


情けないくらい小さな声でそう呟くと、白沢はもうそれ以上、深月の顔をまともに見られなかった。


代わりに、うさ耳をぺたりと伏せる。

そんな白沢の様子に、深月は満足そうに目を細めた。


「まあ……もうちょっと観察させろよ。ほら」


ひょいと白沢の前髪をかきあげ、うさ耳の生え際を覗き込むふりをしながら、深月は、そっと白沢の額に自分の額を合わせた。


「っ!!」


驚いて飛び退ろうとする白沢を、深月は軽く腕で押さえた。


「……大知」


深月が、低く優しい声で呼んだ。

白沢の胸が、ドクンと跳ねる。


(やばい。俺、ほんまに、ミツのこと……)


――好きや。


ごまかしようのない気持ちが、白沢の中にあふれかえっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ