ふたりとふたり、そしてこれから(3)
たこ焼きパーティーもひと段落し、来人と秦は、用意していた段ボールに荷物を詰め終えた。
「よし、あとは運ぶだけか」
秦が荷物を担ぎ上げ、来人も小さなバッグを抱える。
「今日はありがとな、兄貴、大知さん!」
来人が頭を下げると、白沢は笑いながら手を振った。
「気ぃつけてなー。また遊びに来いよ」
秦は深月に一瞬だけ対抗心を燃やすような視線を向けたあと、無言で来人の背中を押し、玄関へ向かった。
「じゃあな」
「またな」
そんなあっさりとした言葉を最後に、ふたりは夜道へ消えていった。
ドアが静かに閉まり、途端に、家の中にしんと静けさが戻る。
白沢は手に残ったたこ焼きの皿を見つめながら、ぼりぼりと後頭部をかいた。
「……片付け、するか」
「おう」
深月も、立ち上がり、グラスや空き皿をまとめ始めた。
キッチンに並んで立ち、ふたりで食器を洗う。
白沢が洗い、深月が拭いていく、自然な流れだった。
「意外と几帳面だな、おまえ」
ふと深月がつぶやく。
「そらな、医者は手ぇ清潔にしとかなアカンからな」
白沢は笑いながら泡だらけの皿を手早く洗い続けた。
その横顔は、いつもの軽さを少しだけ抜いた、素の表情をしている。
深月はその横顔を、ふと、真剣な目で見つめた。
「……なあ、大知」
「ん?」
「……このまま、ずっとここにいていいからな」
唐突な深月の言葉に、白沢の手がぴたりと止まった。
「……なんや、急に」
「別に。言っときたかっただけだ」
そう言いながら、深月はタオルで無造作に皿を拭き上げる。
白沢は何も言わず、もう一度、皿を洗い始めた。
でも、耳の先がじわりと赤くなっているのを、深月はちゃんと見ていた。
食器を拭く手が、ふと止まる。
「……」
深月は、そんな白沢の横顔に、そっと手を伸ばしかけて──
でも、指先がかすかに震えて、結局、何もせずに手を引っ込めた。
まだ、今は、これでいい。
そんな空気を共有しながら、ふたりは最後の皿を並べ終えた。
夜はすっかり更けて、窓の外には、ひっそりとした星空が広がっていた。




