――そして、うさぎ男が爆誕した。(6)
ミツん家に転がり込んで、もうどれくらい経ったんやろ。
最初はただのイタズラで巻き込まれたっちゅうのに、気付いたら、ここが当たり前になってもうてた。
あいつと同じ屋根の下で、飯食って、だらだらテレビ見て、たまにくだらんことでケンカして。
そんな何気ない毎日が――俺には、妙に心地よかった。
「……あっつ」
ソファの上でごろりと寝転びながら、スマホも放り出して天井を見上げた。
頭の中には、さっきのミツの顔がちらついて離れへん。
(なんやねん、あの目……)
じっと見つめられただけやのに、胸がギュッて締めつけられて、息が詰まりそうになった。
普通の友達相手に、こんな風にドキドキするもんか?
いや、ちゃうやろ。
これは、たぶん――
「……好き、なんか?」
口に出した瞬間、自分で自分にドン引きした。
(アホちゃうか、俺)
でも、気付いてしまったらもう、知らんふりはできへんかった。
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夜。
深月が寝室で本を読んでる横に、俺はそろそろと潜り込んだ。
「お、また来たな」
「……うっさい」
顔を背けながら、そっとミツの服の袖をつまんだ。
ミツは、何も言わんと微笑むだけ。
その笑顔がまた、心臓に悪い。
こんな近くにおるのに、まだ言われへん。
『好き』やなんて、簡単に言えるかボケ。
でも、伝えたい気持ちは確かにそこにあって。
黙ったまま、俺はミツの腕に額をこすりつけた。
うさ耳が、ぴょこんと揺れる。
「……甘えたモードか?」
「ち、ちゃうわ……」
「ふーん、そう?」
ミツは、からかうみたいに笑いながら、俺の頭をそっと撫でた。
その手が優しくて、あったかくて。
俺は目を閉じて、小さくミツにくっついた。
――ほんまは、もっと、ちゃんと伝えたい。
せやけど今は、まだ怖い。
だから今は、こうして隣におるだけで、許してほしい。
心の中で、そっとそう思った。




