――そして、うさぎ男が爆誕した。(5)
白沢が深月のベッドに潜り込んでからというもの、
「同じ部屋で寝る」のがすっかり日常になっていた。
最初は躊躇していた白沢も、夜になると当たり前みたいに隣にやってくる。
「また来たのかよ」
「……しゃーないやろ、うさぎは寂しがり屋やねんから」
「言い訳すんなって」
そんなやりとりをしながら、結局、布団を半分こして寝る毎日。
深月は眠ったふりをしながら、隣の白沢がもぞもぞ動くたびに心臓が跳ねた。
白沢は、たぶん無意識なんだろう。
寝ぼけながら、深月の腕をぎゅっと掴んだりする。
(……意識するなって方が無理だろ)
目を閉じたまま、深月は小さくため息を吐いた。
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そして、ある朝。
「おはよう……って、うわ!」
洗面所で寝癖を直していた深月は、鏡越しにぴょこんと耳を立てた白沢と目が合った。
「耳出てるぞ」
「はあああっ!? マジかっ!」
白沢は慌てて耳を押さえ、バタバタとタオルを被った。
「最近、油断しすぎだろ」
「う、うるさいわ……! だってここ、安心するし……」
白沢は小声でぼそっと呟いた。
(……安心、ね)
その言葉に、深月は一瞬だけ息を詰めた。
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夜。
ふたりでソファに並んでテレビを見ていたとき。
不意に、白沢がぼそりと漏らした。
「なぁ、ミツ」
「ん?」
「……ここ、なんか居心地ええな」
「だろ。俺が完璧にセッティングしてるからな」
「ちゃうわ、お前がおるからや」
白沢は普段よりずっと、柔らかい顔をしていた。
(……やばいな)
最初はただのイタズラだった。
なのに今は、こいつが可愛くて仕方ない。
無意識のうちに、深月は白沢の手の甲にそっと指先を触れさせた。
白沢は一瞬びくっとしたが、拒絶することはなかった。
ふたりの間に、じんわりと熱が広がっていく。
だけど。
「……寝る!」
白沢は勢いよく立ち上がり、ばたばたと寝室(深月のベッド)へ逃げていった。
耳を真っ赤にしながら。
「……ほんと、バカだな」
深月は苦笑しながら呟いた。
けれど心の中は、どうしようもなく温かかった。




