――そして、うさぎ男が爆誕した。(4)
それからというもの、白沢大知と冬崎深月の同居生活は、なんだかんだ言いながらも続いていた。
「なぁミツ。今度、でっかい耳かき買ってこーへんか? 耳のメンテしてや」
「誰が耳かき要員だ。勝手に決めんな」
「頼むわー、自分で耳掃除するのムズいねん」
「……して欲しいなら、土下座して頼めよ」
「アホか!」
軽口を叩き合いながら、掃除や洗濯を分担し、スーパーで一緒に買い物して、飯を作って、酒を飲んで――
ごく普通の、だけど少しだけ変な「同居生活」。
日中は、さすがに仕事に支障が出るため、弟・来人にも渡した、ケモ化を抑える飲み薬を白沢も服用している。
だが、家に帰ってきたあと白沢のうさ耳は、基本的には白沢自身のメンタル次第で出たり引っ込んだりする。
リビングでふたりでゲームしてるときなんかは、大抵、ぴょこんと可愛く飛び出してしまっていた。
「おい、耳出てんぞ」
「うっさいわ、ほっとけ!」
顔を真っ赤にして耳を押さえる白沢を、
深月は毎回ニヤニヤしながら眺めていた。
――はず、だった。
だけど。
(……なんだろう、最近……)
ソファで隣に座る白沢を、つい、目で追ってしまう。
ゲームのコントローラーを握る手とか、
無防備に笑う横顔とか。
ちょっとした瞬間に、胸の奥が、ぐっ、と熱くなる。
(……は? 何考えてんだ俺)
自分にツッコミながらも、
この感覚はもう、誤魔化せなかった。
イタズラで巻き込んだはずだったのに。
実験台として軽く扱うはずだったのに。
――気がつけば、白沢の全部が、どんどん愛おしく思えてきていた。
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「……なぁ、ミツ」
ある夜、ソファでごろ寝しながら、白沢がぽつりと呟いた。
「なんだよ」
「最初はムカついたけどな。お前のせいでこんな体になったこと……」
深月はビールを口に運びながら、白沢の言葉を待つ。
「でも、今は……まぁ、これも悪ないなって、思ってる」
白沢は、わざとそっぽを向いて言った。
「……ちょっとだけな」
うさ耳が、ぽそっと、嬉しそうに揺れた。
「そっか」
深月は、心臓が跳ねるのを誤魔化しながら、そっけなく返した。
それ以上、何も言わなかった。
けど――
(……俺もだよ、バーカ)
心の中では、誰よりも強く、そう思っていた。
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次の日。
朝起きたら、白沢が深月のベッドに潜り込んでいた。
しかも、耳ぴこぴこ、甘えモード全開で。
「……おい。どこで寝てんだ」
「さみしかったんや。……責任取れ」
「取るか、アホ!」
ベッドの上で、じゃれあうように揉み合いながら、ふたりの距離はまた、ちょっとだけ縮まった。




