――そして、うさぎ男が爆誕した。(1)
弟の冬崎来人が家を出てから、約1ヶ月。
久しぶりにひとりになった深月は、どこか手持ち無沙汰だった。
「……ちょっと寂しいかもな」
ぽつりと呟きながら、
彼は自宅ラボの机に頬杖をついていた。
そんなある日。
ピンポーン。
鳴り響くインターホンに、深月は嬉しそうに立ち上がった。
「おー、おつかれさん、ミツ!」
玄関に立っていたのは、
白いシャツにジーンズ姿、気さくな笑顔の男――白沢大知だった。
八重歯がちらりとのぞくその笑顔は、学生時代から変わらない。
「久しぶりやなぁ。……相変わらず、部屋、カオスやけど」
「黙れ。俺にとってはこの雑多さがベストコンディションなんだよ」
深月は笑いながら白沢を引き入れると、さっそくダイニングテーブルに座らせた。
積もる話もそこそこに、深月の視線がふと、隅に置かれた例の合体装置に向いた。
(……そろそろ、新しい実験台が欲しかったところだしな)
悪い笑みが、深月の口元に広がった。
「なぁ、大知。ちょっと面白いもん見せてやるわ」
「は? 何や、またヤバイもん開発しとるん?」
「まあまあ、細けぇことは気にすんなって!」
ほとんど無理やりに白沢を装置の前に立たせ、深月はにやりと笑う。
手には、1匹の白うさぎ。
「ちょっとそこで待っていてくれたまえ」
そして――
バチッ!!
「――っ、ちょ、待っ……!」
光と音が炸裂した次の瞬間。
そこに立っていたのは、頭の上からふわふわの白いうさ耳をぴょこんと生やした白沢だった。
「……は?」
固まる白沢。
そして、深月は腹を抱えて笑い転げる。
「ぷ、ははっ、似合いすぎっ! やっべ、想像以上!」
「な、な、なにしてくれてんねん、ミツ!!」
白沢は半泣きで耳を押さえる。
「ちょ、これ、取れへんの!? なんやこれ、何したん!?」
「安心しろ、大したことはない。説明しよう!その耳は、興奮したり寂しくなると出るだけだ」
「だけって!!」
白沢は耳をパタパタと動かしながら叫ぶ。
「ええ加減にせぇよ!? 医者として働いとんねんぞ、おれ!」
「大丈夫大丈夫、帽子でもかぶっときゃバレねぇよ。あ、それと……」
深月は、にやっと悪戯っぽく笑った。
「今更だけど、戻す方法はまだないから。ま、よろしくな、同居人」
「はぁぁ!? 聞いてへんわそんなん!」
白沢はぐいっと深月の胸ぐらを掴む――が、うさ耳がぴょこぴょこと揺れる様子に、深月はますます爆笑するばかりだった。
こうして、来人が去ったあとの冬崎家には、新たな“実験被害者”が住み着くことになったのだった。




