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悪夢の夜に  作者: 赤さん
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第2節 6章 争乱編Ⅲ

「あの人、殺気も何も悟らせずに俺のこと...

もしかして、芽亜利もグル?

まぁいい、とにかく肉体は乖離したから、精神も一緒に飛んで行きやすくなった。」


ゲンジは体から一気に力を抜くと、今までにない浮遊感が体を包み込む。

妙な温もりと、足のつかない好奇心に狩りたたれ、ここが自分の、自分だけの世界だと思うと、思わず笑みが溢れだす。


その刹那、体を覆う浮遊感からいっぺん、全身が、足が、首が、腹が口の中にまで何かに掴まれる。


目の端に恐る恐るその存在を目に収める


「ニガサナイ。」


足下に広がっていたのは、二度とみたくもなかったあの肉ダルマだった。


「離せ!!」


「オマエモコッチニコイ!!」


浮遊感からいっぺん、素早く肉の丘に引き摺り込まれると、全身がどんどん奥底へと沈んでいく。

もがいてももがいても、力を入れようとする部分を新たな手や足に掴まれ、バランスを崩すほどに山の中に埋もれて行く。


怖い、怖い、怖い、怖い。



荒くなる呼吸


高鳴る心臓


耳を打つ緊張の張り


息遣いが耳を圧迫し、心臓の鼓動を早くする。





「やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!」



「アンタなんて

ゲンジ君なんて

ゲンジ様なんて

       ゴミ同然よ...」


それぞれの声色で、嘲笑うかのように心の中にその言葉が染み渡ると


深く、暗い、蠢く肉の中で少年は咆哮するだけだった。






意識が一気に浮上すると共に視界には光が飛び込んでくる。


ゲンジは叫び声を上げながら、ベッドから飛び起きたのだった。



「ゲンジ様!ゲンジ様!」


駆け寄り、ゲンジの背中を押さえながら声色を覗き込む芽亜利は、その声の裏側にとてつもない怒気を忍ばせていた。



「お前!ゲンジ様に何をした!!」


その視線の先にはエマが座っており、どうも浮かない顔でゲンジを見ていた。


「辿り着けなかったようじゃな。」


「貴様、ゲンジ様に今度手を出したら、私がお前を殺す!」


怒りに満ち溢れる芽亜利は過呼吸になるゲンジを胸の中に沈める。


荒い息が柔らかな世界の中で、規則正しい心音と共にゆっくりと鎮静して行く。


「芽亜利...」


「ええ、貴方の芽亜利ですよ。」


ゲンジに話しかけるときはこれ以上ない心地の良い声で話しかけるその姿は男であればこれ以上ないことだが、今のゲンジにはその気遣いは届かなかった。」



「いいんだ、芽亜利。いいから、エマさんを許してあげて。」


「しかし!」


「わかったんだ。俺がガーデンにたどり着けない理由が。」


「ほう、なんじゃ?」


「俺が、何かを恐れているからだ。

心を失いかけた今でも、恐れてるものがある。それは、殺すことなのか、死者への恐怖なのか、自分の死への恐怖なのかもわからない。

ただ恐ろしかった...今わかるのは、それだけ...」


「随分と、衰弱しきっているようじゃな。

いつもの覇気がないぞ。」



エマは立ち上がると、テントの幕を開ける


「じゃが、これで問題は見つかったな、それを退けたとき、お主はあの女の手を借りずにガーデンへと至れる。」




幕が下された後、数秒もしないうちに、ペトラが飛び込んでくる。


「なんかすごい声したけど、大丈夫なの!?

ちょっと芽亜利、アンタはなれなさいよ!」


「お断りします。これはゲンジ様が私を求めたから私はこうしてるだけですもの。」


「ちょっとどういうこと!」


ゲンジは歪みゆく世界の中で、芽亜利の甘く、柔らかい体に身を委ね、再びベットへと落ちて行く。


お互いの体は腕に拘束され、これ以上ない密着感がゲンジに安らぎを与えていた。



「ちょ、ちょ、ちょっと!!」


「ペトラも。来て。」


「え?え、え....しょ、しょうがないわね!いいわ!」


ペトラは反対側に回ると、少しずつ規則正しい寝息を上げ始める源二の腕の力が自然に抜ける。


「ちょっといつまでも抱きついてんじゃないわよ、女狐!」


「あらヤキモチ?見苦しいですわ。殿方一人まともに満足もさせられないなんて。」


「いつも寝てるし!」


「それはもう随分前の話ではなくて?」

「前の家の話よ!」


「それを前の話って言うんですのよ。」


「どきなさいよ!!」


ペトラは芽亜利から無理やりゲンジを剥がすと、右の腕を抱え込むなようにしてベットに寝転ぶ。


「あら、そんなに抱え込んではしたないですわ。一体ゲンジ様の指で何するつもりなんでしょう、この淫乱は。」


ペトラは改めて自分の体勢と、ゲンジの腕の位置を見直した途端、沸騰したように顔が赤くなり、やがて意識を手放してしまった。


「あら、うぶなのね。」


芽亜利は妖艶な笑みを浮かべると、手を伸ばし、ゲンジの首元に巻きつくようにして腕で拘束すると、ゆっくりと瞼を閉じた。


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