第2節 5章 争乱の序編Ⅲ
一方、パラトスの王宮では龍弥、正吾、和が連日魔法の修行に明け暮れていた。
「違うって、だからもっとガーーー!ドン!!ってでかい雷が走る感じ!!」
「うるせぇな、やってるわ!!」
「龍弥くん、雷は霰と霰がぶつかりあうことで空気中に電荷が発生するんだ。君の通る道にそれを置くイメージだよ。」
「んなこと言ったって、実際に見たわけじゃねぇんだからよ...」
龍弥は再び鞘の中に剣を収めると、低い姿勢になって構える
空気中にある固体と固体がぶつかり合って発生する現象、電子。これを縫うようにして一閃するイメージを浮かべる。
目の前に広がるだだっ広い草原の中に雷上に浮かび上がる道筋を見出すのにはまだ数秒もかかっていた。
一閃、凄まじい雷鳴を奏で、目にも止まらぬ速さで剣と共に身体を高速で移動させるものの、龍弥はすぐに草の上に倒れる
息はみるみるうちに上がり、視界がぼんやりとぼやける。
魔力切れが近い証拠だった。
「あー!いや、かっこいいけどもっといけるってもっと!!」
「うーん、やっぱり考え方を変えたほうがいいのかな...」
「そうかもなー、最初は出だし良かったんだけどな、ここ何日かずっとこの調子だし、」
「おい、何で、何もやってねぇお前が、そんな決めてんだよ。」
どんどん会話が進んでいく和と正吾の会話に息も絶え絶えに応える龍弥
「ねぇ、もしかしたらってので一個あるんだけど、最後だしそれも試してみない?」
「お、面白そうなのきたー!」
「面白いかどうかは別として、僕が勝手にこの世界に関する様々な不可解なことを勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。」
「不可解?」
「そう、だって思わないかい?この世界は異世界なのに僕達でいう中世みたいな時代構成をしている。
他の国の流通品も主食の小麦や米、野菜とか畜産の形もほとんどが似通ってて、その産地の地域性までほとんど同じ、米は高温多雨の地域とかね。」
「たしかに、割と同じ世界みたいに見えるよな。時代が違うだけで。
アニメでもそんなの多かったしな。」
「そういうのは、人類がある意味一つの種として確立してるから同じ文化を形成しやすいって考え方があるから一概におかしいとも言えないんだけど、流通品の中には日本らしきものも何個か混じってる。
僕はこの世界の中にもしかしたら日本っぽいところもあるんじゃないかって思ってるんだよね。」
「もうロマンじゃん!東方なんちゃらみたいな!」
「東方見聞録だろ。ほんとお前馬鹿だよな。」
「とにかく、そういうちょっとおかしなものの中に、属性の定義ってのがあるんだよ。
例えば光と闇、この二つが全ての魔法を使うことができる理由、それはこの世界では光と闇釜この世界を創造したからって言われてるけど、僕らの世界じゃそんなこと言う人はまず煙たがられるだろ。
だから考えてみたんだ。」
「おー!それでそれで??」
「僕なりには、光と闇はある対象物を見るときに認識として互いを目視できているからってことなんじゃないかなって。」
「なるほど...」
「え?どゆこと?」
「つまり、この世界の中で魔法っていうものが僕らが見た現象を再び再現するものなのだとすれば、光と闇はその現象の素に当たるってこと。
僕らはものを見るとき、太陽の光が反射したものを見てるっていうだろ?
何を見るにしてもその光と闇のコントラストって言う現象が付き纏ってるから光と闇は全てに通じるってことなんじゃないかなって。」
「たしかに...すげぇ...すげぇじゃん!和!!やっぱお前天才だよ!」
和は苦笑いを浮かべながらも説明を続ける
「それで、光と闇がそう言った理由でできるなら、属性という捉え方より例えば雷という現象を起点とすれば他の属性とされているものを作れれんじゃないかってこと。」
「その話、きっと他の奴が聞いたら...」
「うん、間違いなくこの世界の常識が崩れるかもしれない。」
「スゲェ...やってみる価値ありありじゃん。早速やろうよ!」
「龍弥くん、雷はもともと大気中にできた雹と雹がぶつかり合って電子ができるって話したよね。」
「ああ」
「雹ができるまでの過程は雷の魔法には直接関係ないけど、物質と物質が衝突して電子が生まれる過程は雷が発生する過程に入ると思うんだ。
だから、そのイメージを強く持って。
それともう一つ、これが本題だ。
雷は光と音で距離を測ったりしたことあるだろ。」
「ああ、よくあるやつか。」
「うん、光と音の速さは全くと言っていいほど違う。
もしかしたらラインハルト皇帝の目にも止まらぬ一閃っていうのはいわば光と雷が交差する点、雷光がそれに当たるんじゃないかなって思う。」
「雷光...たしかに、雷って漠然としたイメージよりかはだいぶ近づいたけど、そんなの使えたらほとんど光の魔法使えるのとなんら変わりが...」
「だから、この世界の常識を揺るがすっていってるじゃないか。龍弥くん、歴史を変える準備はいいかい。」
龍弥は浅い呼吸の中、首を縦に頷く
一際大きく息を吸い込むと、それを身体中に満たすように押し込む。
空気が繊維の端にまで染み込みわたると、再び大きく腰を落とし、構える
すると、今まで鮮明に見えた世界の端が線を引いたように歪んでいく。
魚眼のように端は線に、表面は鮮明に映り出す不可思議な光景にも関わらず、龍弥は正面だけを見つめ続けていた。
「いくぞ、ライコウ!!!」
自分さえ気づかないような激しい雷紋の軌跡、目を開く頃には正吾も和は遥か後ろに立っていた。
しかし、龍弥はそのまま地面に倒れ込んでしまった。
「すげぇ、すげぇよ....」
その言葉を最後に龍弥は微睡の中へ落ちていった。
黒い、黒い、何も反射も照らされることもない黒の世界。
源二はただ、その黒い虚空の中に座っていた。
椅子のようなものに腰をかける源二。
「随分殺したようだな、ゲンジ。」
突然、目の前に現れた黒の騎士が現れると、向かいには突然椅子が浮かび上がり座り込む
「サフィール・ペーネロペー。」
「なんだ、会いたかったんじゃないのか。」
「じゃあここは...」
「残念ながらここはお前のガーデンじゃない。ただの幻想の中だ。わざわざ会いにきてやったぞ。」
「お前は、一体何者なんだ...」
「私か?狂戦士、そう呼ばれた女だ。」
「お前は俺に全てを与えたはずだ。違うか。」
「私は与えたさ。サフィール・ペーネロペーはお前を許し、全てを託した。」
源二は突如目の前に現れた女に奇怪な感覚を覚える
「お前、誰だ。」
そう問いかけると、女は不気味に嗤い始める
「流石に分かってしまうか、ゲンジ。
面白い男だ。中身はボロボロなのに侵攻もできん。」
「お前、ペーネロペーではないな。」
「我はその女の中に巣食う魔物だよ。
ゲンジ、あの女はお前に全てを許した。だから覚悟しておけ、次はお前の番だぞ。」
咄嗟に剣を引き抜いて斬りかかる
虚空の中でさえ、ゲンジの戦いの本能を逆撫でるものはなかった。
「いい度胸だ、魔物風情が。」
「その言葉、そのまま返すぞ人間風情が。お前たちが呼ぶ魔族の前に平伏すがいい。」
「魔族だと。」
「そうだ。忌まわしき、我らを討つものを剣聖と呼ぶその代償、思い知らせてくれる。」
「剣聖だと。」
鍔迫り合いが解かれ、源二は振り解かれた剣を黒い騎士めがけて一気に振り抜いた。




