第2節 3章復権編Ⅱ‐Ⅰ
さて、今回から復権編Ⅱをお送りします。少しタイトルが面倒ですがご容赦ください。
明るさの広がる青々とした草原の中、ウェルマーは二台の前に位置する馬を撫でる
「また助かりましたわ、源二さん!」
源二は軽く頷く
「酷い有様やけど、この街も大事な商人の街。一から頑張りますわ。」
「悪いな。」
「何言ってるんですかい!みんなも感謝してるんや、源二さん。アンタに。」
「何言ってんだよ。俺はただ人を殺すことしかできない。それが人助けなんて、感謝が聞いて呆れるよ。」
「源二さんはそれでいい。でもワイらは本当に感謝してるんや。アンタが居てくれてるから、お館様を始めワイらは今日も安全に商売ができてる。
ほんま、気ぃつけてな。
次、シザーベントに行くんやろ?」
「一旦ウェインフリートに帰って、そしたらシザーベントだね。」
「ほんま気ぃつけぇな。シザーベントは飯は美味いけどほんまに寒いし、そのせいかあそこらの連中はみんな柄が悪い。商人たちの間じゃ山賊やら反対勢力が多くて入ったら根こそぎ奪われるなんて言われとるんや。」
「気をつけるよ。」
源二は手綱を叩くと、馬がゆっくり歩き始める。
「きぃつけてなー!」
ウェルマーは大きく手を挙げ、両手で二人を送り出す。
源二はわずかに後ろに目を向けると、エレーナが手を振りかえしていた。
源二の視線に気づいたのか、エレーナが満面の笑みをゲンジに送ると、思わず目を逸らす。
木の軋む音が聞こえ、源二は大きく息を吸って吐いた
「ねぇ、どうしたの?体の具合でも悪い?」
「悪くなりたくても悪くなりませんよ。」
「なんでそんな言い方するのかしら。初めてだーって言ってたから気を遣ってあげたのに。」
源二はエレーナから逃げるように視線を外す。
「ごめんね、あんなことして。」
源二は突然の空気の変わり方に困惑しながらも、自分と同じ気持ちを抱いていたことに安堵する
「俺も悪いです。」
「悪くないわ。私がそうさせたようなものだし。」
「その....なんで、あんなことを...」
「わからないわ。」
源二はただ淡々と先だけを見つめていた。
白を基調とした宮殿の中ノトスでは、暗い顔の少女がベットに座り込んでいた。
外では商人たちの話し声、閉ざされたカーテンの内側では、茶色い髪の少女が俯く
その数部屋横では、美しいブロンドの髪を下ろした女性と、色を抜いた奇抜な髪の少女が向かい合っていた。
「聞きたいのはそれだけですか?」
「それだけ?何その言い方!アンタたちが勝手にゲンジ君を殺しておいて、それだけって何よ!」
「で、殿下。お、落ち着いて、ください。喧嘩はダメですヨォ...」
ヒューノがぎこちなく二人の間に割って入る
「アンタは、私たちを呼び出しておいて、勝手に因縁をつけて私たちの友達を殺したの!私たちも働かされるばかりで、何様のつもり!?」
グッと歯を噛み締める音が制作の中に僅かなノイズを奏でる
「ですから、闇の魔法使いはこの世界には置いてはおけない。貴方がなんと言おうと、もう志乃源二は戻らない。」
「じゃあせめて、なんで殺さなきゃいけなかったのか、説明しなさいよ。この世界に闇の魔法だけが存在しちゃいけない理由を!」
「説明できない。」
「だからどうして!!」
「貴方たちに力がないからよ!!」
「これを知れば、私の手に余る。私の力だけでは、貴方達を守りきれませんの!」
「守ってもらう必要...」
「では、お父様と戦いになられますか?覇者の閃光。究極の一閃を退く覚悟があるのなら、お教えします。
私でも抗えない大陸の覇者に、立ち向かうというのなら。召喚者、各地に散らばった20人を全てを纏め、1人も欠けることなく守り抜けるのならば。全てをお教えしますわ。」
「そんなこと...」
「貴方は聡明で、頭がいい。下手なことは言いません。ここで、留めていただけませんか?
召喚者様。エイレーネ帝国皇帝の娘、シャルロットではなく。一人の女として貴方にお願いしますわ。ここで、留めてくださいませんか。でなければ私は今貴方達を守っている警護のものに密告しなくてはならない。
「「新たな闇の魔法使い、片翼のヴァンシーについて嗅ぎ回っていると。」」
「殿下...」
「話は以上です、佐伯凛。貴方と向かい合って話せてよかったですわ。
私達はお父様の名でシザーベントに向かいます。
もし何かあったらミーシャに。彼女を置いておきます。
それと、彼女はまだ病み上がり。申し訳ないのですが、龍弥様と正吾様に稽古の方は控えるようにと。」
佐伯は頷くと、シャルロットとヒューノは部屋を後にしてしていった。
凛は少しして部屋を立つと、扉の前には一人の少女が立っていた。
「鏡花...」
「全部、聞こえてた。」
凛は言葉を紡ごうとするも鏡花に制される
「源二君は生きてる。片翼のヴァンシー。シャルロットちゃんはそう言ってた。
シャルロットちゃんが裏切るわけないよ。裏切るわけ...ないよ。」
「そうね...とりあえず、みんなが心配してるから。行こ?」
凛は優しく鏡花に手を差し伸べると鏡花はその柔らかで、綺麗に伸びきりそ揃えられた爪が並ぶ指を握った。
紅い絨毯の上を颯爽と歩くブロンドの女性はただ後ろを見ることなく颯爽と進んでいく。
その後ろには足元のおぼつかない女性、ヒューノが控えていた。
「よ、よかったんですか?あんなこと言って...片翼のヴァンシーって、ゲンジさんの名誉叙勲された二つ名じゃ...」
「彼女達は、良くも悪くも外へ出れませんわ。この国の中から出られない以上、片翼のヴァンシー。闇の魔法使いゲンジに辿り着くことはないわ。」
「じゃああんなこと....」
「私も甘いですわね。まだまだ王女として...
情けをかけてしまった。
剣聖。火の剣聖だけじゃない。
水、地、風。四大剣聖と光の剣聖。勇者の末裔ルカが一つの場所にあつめられていますわ。」
「それって...」
「エイレーネ帝国王都、エイレーネ。お父様が、ゲンジを探している。」
「えええええ!!??やば、やばいじゃないですか!私たち犯罪者ですよ犯罪者!黙ってゲンジさんに会いに行くなんて知れ渡ったら...でもなんかそういうラブストーリみたいなのありそう...」
シャルロットは大きくため息をつくと初めて振り返る
「いいですか?第一、彼と私たちはそういう仲じゃありません。それに、お父様がゲンジ様を探しているからこそ、ウェインフリートはゲンジ様をシザーベントへ向かわせるのですわ。」
「どういう...こと?」
「ウェインフリートに密偵を放つか、剣聖という存在を使って偵察、戦わせることが目的だと思いますわ。
おそらく、ただの密偵を紛れ込ませるだけでは、闇夜の女王ツバキに殺される。
彼女の勢力は今やウェインフリートと一部エイレーネの内通者以外だけでなく、共生自治区にまで手が及んでいると言われていますわ。
一説では、ゲンジが第三権に奪われたのもツバキによる仕業だとか。」
「ツバキって人、すごい...怖そう...」
「怖いも何も、数少ない大戦の生き残りよ。わかっているのは大戦時代、今私たちが受け継いでる植物魔法の伝承。あらゆる人に恵みを与え、施しを与える魔法。そう言わしめたのは、彼女だということ。」
「ええ!?そんなに!?」
「皮肉なものよ。人に施すだけでは人は救われない。
そんなのただの怠慢だもの...」




