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悪夢の夜に  作者: 赤さん
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第2節 2章復権編Ⅰ

さて、今回からは復権編をお届けします。

白い狼煙なのか、人の気配を遠くに望む二つの影が小高い丘の上に望む


「ここが奴隷都市...」


「そうだ。意外と広いだろ。老若男女に亜人族、拷問器具に呪物。なんでも揃ってる...」


「酷い街ね...」


「綺麗な部分があれば汚い部分はある。」


ゲンジはおもむろに振り返ると、その背を見つめるように一人の男が立っていた


「お待ちしてました、ゲンジさん。」


「わざわざ迎えに来てもらって悪いな、ウェルマー。」


「そんな気を使わんでください。わいは下っ端ですし、ゲンジさんは位が高いんですから、邪険に扱ったら殺されますよ。」


「俺にそういう口を聞くのも、お前だけだろ。変な口調はお前もやめろ、言ったろ、こういうの苦手なんだよ。」


「へい。」


ウェルマーは引き連れてきた馬車の荷台に二人を乗せると、一匹は虚空に消え、もう一匹の手綱を片手に馬車を動かす


「どうして、街の中に入っちゃいけないのかしら。」

エレーナが不思議そうに問いかけるとウェルマーが振り返る


「今この街はかなり荒れてるんですよ。前から酷え街でしたけど、最近は奴隷のやり取りなんて全くやっちゃいない。」


「どういうこと?」


「前はその...主な太客がシザーベントだったらしいんや。もちろん、人員不足の連合小王国、その名前を使った奴隷を趣向品として扱ってる地方貴族とかがたまに買ってたり、わいらみたいな奴らが買って働かせてたんやけど、教会が崩壊して以降、みるみるうちにエイレーネとウェインフリートの手がかかり始めたんや。

兵は送られてきてないんやけど、エイレーネは税金やら食糧やら交通の弁がとにかく悪くなったらしいし、ウェインフリートはその、ツバキ様がおるやろ。あの人が掌握しようとしてるんですわ。」


「じゃあこの戦いを起こしてるのはツバキさんって事?」


「まぁ言ってしまえばそうや。」


「何それ...私たちを騙したの?」


怪訝な視線がゲンジに注がれるものの、それを知っていたかのように首を横に振る


「今回ツバキさんが荒事を起こしてるのは、この街に蔓延るシザーベント、カストス教、一部内通していたその他の国の大本を絶とうとしてる。」


「本当なの?」


「壊すのは簡単でも、修復するのには時間がかかる。

ツバキさんがそうよく言ってた...おかしなことかもしれないけど、俺にはこの戦いがそう見えるんだよ。」


「数年前のあなたが聞いたら否が応でも止めようとするわね。」


「やりたい奴なんていませんよ。人を殺したいなんて。

でも、これは俺の戦いです。

殺しは陰鬱です。殺せば殺すほど、自分が嫌いになる。特に、自分になんの関係もない人を殺すのが1番辛い...」



「じゃあなんでこんなこと...はぁ、なんでどの子も...」


「別に、ペトラを守りたいからというのは嘘じゃない。できれば巻き込みたくもない。

でも、できればエレーナさんも巻き込みたくはなかった。この街には、来てほしくなかった。


この街じゃ、命なんてゴミみたいに捨てられる。」


「でも、私じゃなきゃできないこともある。そうなんでしょ?」


「エレーナさんは、ウェルマーと一緒に負傷者の手当てをして欲しい。そうだろ、ウェルマー」


ウェルマーはだんだんと近づく街に視線を向けながら頷く素振りを見せる


「ゲンジさん、あんた。一体どんだけの力を持っとるんですかい。ピラーってのはみんなあんなんになっちまうんですかい?」



源二は怪訝な表情を浮かべていると、ウェルマーが続け様に口を開く


「敵の勢力は多くはないんや。むしろわいらの方が少し多いくらいなのにピラー、紅蓮の少女って言われとる小さい女の子一人が戦況を一変しちまうんや。」



「ピラーは、いわば諸刃の剣...俺みたいに移植された魔物に勝てば、自分の力を呼び覚まして、ある程度の制御のもとに使うことができる。

でも、もし負ければ本当の自分は死ぬ。本来は使えないはずの魔法を使わされたり、反動など考えないリミッターのない魔法がありったけ使われる。

戦況が一変する理由もわかる...」


「聞けば聞くほど酷い魔法ね...」


「だから、止めなきゃいけないんだよ。」


エレーナは源二の手にそっと寄り添うものの、軽くそれを解かれる


「無理してない?」


「してない。」



ウェルマーが一つの建物の前に止まると、源二は迷うことなく降りていってしまう。


その建物はどこか平穏としながらも僅かな殺気のようなものが漏れ出ていた。


「ウェルマーさん、大丈夫かしら...」


「ゲンジさんですか?」


頷く


「大丈夫ですよ。あの人はやってくれます。あの人がいてくれたから、今のわいがあるんです。信じますよ。」


ウェルマーは二人の持ってきた荷物を持つと、荷台を離れ建物の中へ入っていく。



それに続き、ドアを潜るとエレーナはハッと目を見開く

大きな屋敷の中には僅かな炭のような焼けた肉の匂いや煙の匂いが充満していた。



「これは...」


「ここは特に症状が酷い患者が運ばれてくるんやけど、ここまで進行してると素人じゃ対応できないんや。

奴隷都市の医者もおるんやが、私闘には介入せんし、ピラーの件以降、値段が跳ね上がったり、いなくなったりすることも多いんや。」



「なるほどね...」


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