第1節 8章 解放編Ⅳ
いよいよ解放編も終わりです。毎回毎回1万文字を目安に更新するのは読むほうも大変かなと思っているので、二節からは5000文字くらいに切ろうかなと思ってます。取り合えず一節は10000文字区切り来で行きます。
ゲンジが目を覚ますころには辺りはすっかり暗くなっていた。黒い光が目に差し込んでくる中、ゆっくりと目を開けると目前にはまだツバキがいた。
「よく眠れましたでしょう。」
「久々に寝ました...」
「そうだと思ったわ。ずっと眠ってない状態でいたら簡単なことも難しく感じるものですよ。」
そういうと、ツバキは水の入ったグラスを手渡す
ゲンジはそれを飲み干すと、グラスを浮遊させプレートの上に乗せる
いつになく快眠だったゲンジの目は視界が歪むことなく端に据わる桜色の女を確実に捉えていた。
「とても、シザーベントを陥落させた狂戦士とは思えない穏やかな寝顔でした。」
「ずっと見てたんですか?」
「いいえ、もうすぐかなと思いまして。それに、ここへ来るのはすぐですから。」
「ツバキさん、ピラーの件。誰が首謀者なんですか?」
ツバキはベッドに深く腰掛けると、そこに座る源二の顎下へ手を伸ばす
「戦うのですか?」
「今はまだわかりません。でも、俺が勇者に負けた時もう二度と他人任せにはしたくないって。そう思ったんです。」
「わかりました...まだ、確かではないですがピラー開発の大本はカストス教の教皇シモンド・サイファー
エイレーネ領と隣り合わせになっている教皇領と呼ばれる宗教都市におります。
神聖エイレーネ帝国は元が宗教国家ですが、大戦時代に塵散りになった人類を再びまとめるため誕生した国で実質最高権力者が二人います。それが、皇帝と教皇。それ故にエイレーネは宮中にでさえ皇帝派と教会派に分かれ、厳しく管理されていますわ。
今回の件、シザーベントの一件は元をたどれば篠原暗殺の失敗で皇帝派の暴走によって教会派の派閥に傷が生じました。
ですからシザーベントは重点的に皇帝派の領地であるシャルロットが治めるパラトスを攻めたと考えられますわ。」
「じゃあ、全部あの国の自作自演だったってことですか」
「まあ、あの国は最初から一つが二つに分かたれているようなものですが表ではそういうことですわ。
それで、今回のシザーベントの蜂起はシザーベントの雹王が居なくなったことでエイレーネとの関係を知る者が事実上いなくなったことで生じたもの。
そしてそれを治めに動いたのは、エイレーネの中でも教会派。ということはピラーを率先して開発しているのは教会派とみて間違いないですわ。」
「でも、俺たちはピラーになったセレナさんから召喚されたんじゃ...」
「ピラーはあくまで金の為の奴隷ですわ。権力や争いに勝ちたいものが金さえあれば容易に手にできる人柱ですもの。
ですが...それに亀裂が生じた。それが狂戦士の存在ですわ。」
「俺?」
「ええ、狂戦士はその特性上、元人間であるが故により強力な個体を贄として必要とします。
魔物一口に呼んでも、魔法が使える者に等しく存在する保有された属性力というものが付きまといますわ。
つまり、闇の魔法使いに適合するのは闇の魔法使い。
そしてその狂戦士はエイレーネ皇帝、ラインハルトと並々ならぬ関係がありますわ。
教会によって未だ残るピラーの技術。それが自分と深い関係にあった因縁の相手を呼び覚ましたとすれば、私とて憤怒に身を焦がしてしまいますわ。
それに、貴方を殺した勇者。あれは教会から生み出された存在。そしてゲンジ様がシザーベントを陥落させたのではなく、狂戦士がシザーベントを陥落させたとなれば、皇帝派は一体何を思うのでしょうか。」
「一体、誰がこんなことを...」
「ゲンジ様」
ツバキはグッと距離を縮めると源二に覆いかぶさり倒れていく
ベッドのばねに体が軽く浮き上がると白い腕が顔の裏にまで流れ込み桜色の髪に視界が包まれる
「それは、貴方のずっと近くにおります。もしかしたら、私が貴方欲しさにやってしまったのかもしれませんわ。」
「やめてください。」
「あら、どうしてですか?良いではないですか、このままで。それとも、あの赤髪の子が気になりますか?それとも黒髪の子?あるいはメアリーだなんておっしゃいませんよね?」
「ツバキさんがそこまでする理由なんてないじゃないですか。」
「理由?ありますよ。だって闇の魔法が欲しい人なんて星の数ほどおりますもの。」
「いや、俺自身に興味がない時点でやっぱりツバキさんがやったわけじゃない。」
ツバキは妖しい笑みを浮かべると顔を離す。
髪をかき上げると桜色が闇夜に踊る
ツバキはゲンジの顔を長い裾で覆い隠すと、頬の辺りを、鼻腔を強い妖艶な香りが突き抜ける。
そういいながらベッドから降りると部屋の外に向かい歩き出す
「流石ですわ、ゲンジさん。ですが今のでいよいよ私は貴方を無視できなくなってしまいそうですよ。
忘れないでくださいませ。私はあなたのいかなる苦悩も受け入れますわ。あなたがいくら非情になろうとも。」
「それともし、この屋敷でわからないことがあったら教えてくださいな。」
「そういえば、あの魔法。なんですか?転移か何かですか?」
「転移、と言えば転移ですけど。あれは限られた特定の場所しか行けない魔法で。
魔法陣をちゃんとした物体で大きく描いておく必要があるので、実用的とかそういうレベルの代物じゃありませんよ?」
「え、でも俺らが転移してきた場所ってなにもなかったですよ?」
「地面の下の根っこがそうなってるんです。あとで、お教えて差し上げますわ。」
源二は微かに笑みを浮かべながら起き上がろうとすると、ツバキがそれを支える。
足が床につくと同時に闇の衣を纏うようにライトアーマーが現れた。
再びベッドに腰掛けるとツバキは闇の中で妖艶に笑みを浮かべ、源二の様子を見つめていた。
「住む気になっていただけましたか?」
「どちらにしても、僕はここにいなきゃいけないんでしょ?」
「そうですわね。私もすぐにこれはしますが、基本的にはここへは来ませんので...」
「でも、思い出したんだ。俺はみんなと元の世界に帰りたいって。」
「でしたらそのようにすればよろしいですわ。」
「ありがとう」
「ツバキさん」
ツバキはそう言うとそのまま部屋を後にしようと歩き始めるのを源二が呼び止めるとツバキが振り返る
「ここに、俺以外も住んで良いのかな」
「ええ、構いませんよ。ですが、私としては恋敵を増やしたくはありませんわ。」
「ツバキさんだったら俺が寝てる間にやることやっちゃうでしょ?」
「そんな不摂生な女になった覚えはありませんが、そうですね。少しでも元気になったようで、嬉しい限りですわ。」
そう言うとドアの扉が閉まる。
源二は窓の外に広がる庭を見ながら黄昏る月の明りが心地よく、
「あ、教えてもらうの忘れた。」
すぐさま駆け出し、ツバキの後を追うと転移の魔法やこの屋敷についても教えてもらうことができた。
この屋敷があるのは帝都のはずれで、ツバキの言うには人が近づかないようになっているらしい。
でも一度この中へ入った人間は別で、少し遠いが馬でも徒歩でも来ることができる。
どうやらこの転移は特定の魔法陣を実線で描き、それが崩れないよう補完し続けなければならない。転移自体も相当な魔力を検知させることから隠密性には乏しく、難易度だけ高い微妙な技術だという。
ツバキはその弧を植物の根に置き換えていたのだった。
源二は庭や畑を歩くと、まるで植物がペットのように可愛らしく流動的な動きをしていることにくぎ付けになる。
これをすべて操作しているのだから、ツバキさんはとんでもない人なんだと再認識させられる。
純粋な暴力や力の強さではない、匠な魔法というものが今源二の目の前には広がっていた。
冬を超え、僅かに温かくなってきたこの地で少しづつ大きく実をつけ始める野菜。むしろ今だからこそ自分の存在を主張している華やそれを追い求めてやってきた虫たちが行きかっていた。
庭を巡れば水路に流れる心地よい音。匂いが源二を包む
畑を歩けば青く生い茂りながらも整備されつくした列に、土の香りが溶け込む
屋敷の中は明かりを付けなくとも自然光だけで十分に明るいようなデザインが施されていた。
心なしか源二の中に笑みが生まれる。
何で笑っているかは自分にもわからない。ただの男子高校生がこれだけのことで笑みを浮かべるほど奇妙なこともないだろうが、源二の心の中は驚くほど落ち着きを取り戻していた。
だが、落ち着けば再び考え事ということはやってくる。
源二は庭のベンチに座り込むと思考の世界へ意識を落とす。
何故、ペトラは自分に起こっているんだろう。なぜ彼女に嫌われてしまったんだろう。
やはり、何も言わずに出て行ってしまったのがいけなかったのか。それほど自分のことを想ってくれていたのだろうか。
でも、自分のことが好きだったとしてなぜ彼女は「二度と顔を見せるな」なんて言ってきたのだろうか。
まだ、何も答えを出していないのに...
もしかしてもう、嫌いになっちゃったんだろうか。
というよりなんで俺はこんなことで落ち込んでるんだ?もっとやらなければならないことは多いのに。
でも、多いとは言うけれど何をしたらいいんだろう。何を探せばいいんだろう。
「あー!わかんない!
てかなんで!俺はあんなに人殺したのに女のことなんか考えてるんだ!」
何で俺はペトラのことでこんなに考えてるんだ!
ピラーの一件、クリスさんたちに聞かれたことを踏まえればピラーの生み出していた機関は自分の殺した女と、シャジールがシザーベントを制圧したことで壊滅状態でほぼ間違いないらしい。
これは、奴隷街にまで足を延ばしたツバキも言っていたことだから信頼できる。
だが、シャジール自身は決してトップというわけではないのは明白だった。
シザーベントや奴隷街、そしてウェインフリートや他国の諜報を担うツバキさんでさえ知り得なかった情報。これだけですでに大きな権力、組織が渦巻いていることは想像に容易い。
そう例えば、神聖エイレーネ帝国皇帝。ラインハルト。
あるいはそれとは違うまた別の機関か...
勇者は何を掴んでいるのだろうか
そんな微睡みの思考と導かれない考察を続けていると不意に虚を突くような透き通った声に身を震わせる。
「芽亜利...」
「帰ってからというもの、あの女と床を共にするなどいい心掛けで感心しますわ。」
「いや、そういうわけじゃ...」
「私とて、帰らぬ殿方の身を案じぬわけではありません事よ?」
「ごめん...」
「ゲンジ様?本当にあの女と何をしていたのですか?」
「え?いや、俺はただ寝かされただけで...」
芽亜利は突然源二の目前へ迫ると首元の辺りを嗅ぐ素振りを見せる
突然のことに源二が引き下がるものの、彼女はツバキの残り香を感じ取ったのかその表情に影が落ち、あからさまに嫌そうな顔を浮かべていた。
「あの女狐...」
「どうしたの?」
「ゲンジ様の中に巣食っていた狂戦士の力が抑え込まれておりますわ。」
「え?それはどういう...」
「恐らく、まだ狂戦士を制御しきれていない状況下で暴れまわったことでゲンジ様の中にいる狂戦士の力が暴れまわっていたのでしょう。」
「え、でも俺はそんな感じは...」
「ですがシザーベントにいた時のゲンジ様とは確実に違っております。なにか、戦うときに何かを感じたり。妙に興奮したり、しませんでしたか?」
源二は思い返すと、その答えは容易に導き出すことができた。
「そういえば、声?なのかなんか聞こえた気がした。」
「本当にしゃべっているわけではないですわ。ピラーはいわば先人の魔法の機関をそのまま移植し、結合する魔法。
魔法は純粋な知識ではなくて、知識、記憶や想念、時として憎しみや苦しみ。柔軟な思考、思いの丈が支配する精神の発露ですから。記憶もまた一部ではありますが統合される。
最も、かの狂戦士が逸話の通りであれば統合される記憶は魔法の酷使により消失していて継承されるものがなく、強い想念だけがあなた様を突き動かそうとしていた。といったところでしょうか...」
「逸話?」
「人を捨ててまで人の為に戦った影の英雄。闇の剣聖とも呼ばれておりますわ。」
「剣聖?」
「大戦時代、並みの人間では討伐できぬ魔族を滅ぼした者達。その中でも、特に強力な属性龍を葬った者たちがそう呼ばれますわ。」
「かっこいい...」
「あなた様の天敵ですよ?
なにせ、闇の剣聖が死した理由は今の神聖エイレーネ皇帝ラインハルトがまだ幼いころに先代の剣聖達が追い詰め、ラインハルトがトドメを差したことで彼は最年少にして皇帝の座に就くことができたのですから。」
「そんなことが...」
「で、話をもどしますが。ゲンジ様?今夜は私とお休み致しましょう。長いことお休みでないと聞き及んでおります。お身体を壊されてはいけませんわ。」
源二は芽亜利に半ば強引に屋敷の中にある浴場へと連行されると、無理やり服を脱がされ風呂場へと押し込まれる。
いくらツバキやペトラ、エレーナと馴れようともこうした親密すぎる付き合いに馴れていない少年の目は泳ぐに泳ぎ少女はそれを知ってか深い笑みを浮かべながらさらに少年を煽っていく。
「いや、あの芽亜利?芽亜利さん?
ちょっと!出してよ!」
「そんなに、私との戯れがお嫌いですか?」
「だっていきなりこんなことするなんてどうしちゃったの?」
少女は湯の中に源二を攫うと、向かい合うようにして源二の膝上に少女が座り込む。
滑らかな白髪は水に触れ、肌へぴったりと張り付くと男の視線の先には僅かに膨らんだ双丘が目に飛び込んでくる。
しかし、両手で頬を掴まれ無理やり目を合わせるようにして芽亜利が覗き込む
「大嘘付きのゲンジ様にお教えいたしますわ。あのメスが貴方にしたのは吸精。量は闇の魔法の総量を考えれば微々たるものですが、一時的にゲンジ様の魔法量を激減させることで、暴走を止めたんですわ。」
すると、源二の顔が少し崩れる
「吸精って...俺、どうなっちゃったの!」
「ですから、早くその手を退けなさいな!」
芽亜利は無理やり源二の腕を引きはがすと、源二の傷だらけの身体が少女の目に飛び込んでくる。
「この傷...」
源二は自分の身体に視線を落とすと、源二の目も見開かれる
「これって...」
「やめました。」
「え?」
「今回は私の負けですわ。」
女はそっと手を離し、湯船へと体を落とすと源二も体を浸からせる
「今のって...」
「聖刻は闇の魔法使いを殺す為に生み出された魔法。その者が死ぬか、術者が死ぬまでこれが消えることはありません。
ですが、それは治癒ができないということ。
そこから痛みを与えることも、新たに傷を深く刻み込むことができるのが聖刻の真の強さ...
ですが」
芽亜利は源二の元へ近寄ると、体を密着させ枝垂れかかる。
「ちょっと...」
「ですがこうして傷口を焼けば聖刻そのものは消えなくとも、傷口は塞がる...」
「じゃあツバキさんは...」
「恐らく、ゲンジ様を眠らせたと見せかけ聖刻を焼いて傷を塞ぎ、魔法を吸ったのだろう。」
「す、吸うって...」
「方法はいくらでもありますわ。魔法を介してでも、体を重ねてでもできます。」
「え、じゃあ俺は...」
「ゲンジ様から、耐えずあの女の匂いがしますわ。」
源二は湯の中に顔を入れると、顔が赤く染まる
「ゲンジ様...もしかして、初めて...でしたか?」
「通りで私をいつまでも抱いてくださらない訳ですわね。」
「いや、だってそういうことは...」
「私はゲンジ様がよろしければいつでもよろしいですよ?」
「え...」
芽亜利が源二の顔を覗き込むと、源二の身体が硬直する
一瞬あられもない想像が脳裏を過るが、少女が妖艶な笑みを浮かべ人差し指を源二の口元へ当てる
「でも、今はお預けと致しましょう。」
「え?」
「どうせなら私も、しっかりとゲンジ様の意思で抱かれたいですもの。いくらあの小娘とはいえ、ずっと脳裏にちらつかれてはあまりいい気分ではありません事よ?」
「ペトラの、こと?」
「ええ。」
「なんで、怒ってるんだろ...」
「わかりませんわ。でも、案外言った本人が一番傷ついてたりして。」
「芽亜利、ほんと変わったね...」
「そうですか?」
「うん。最初はもっと、怖い感じがしたけど。今ではペトラやエレーナのことも気にかけてるし、ペトラに魔法とか戦い方も教えてるんでしょ?俺にも教えてくれたし。」
少女はクスッと笑みを零すと、立ち上がる
水が身体を滴り、再び白い髪が身体のボディーラインを強調するように張り付いていた。
そして、少女が源二に手を伸ばすと源二がその手をとり立ち上がる
「でしたら、それは貴方のせいですわ。」
「俺?」
「ええ。だって私はいつだって貴方と共にありますもの。
他の者に私を変えることなどできませんわ。」
「そっか...」
「それでは、お身体もお拭きいたします。」
「いや、いいから!」
「ですがその腕で、しかもずっと鎧を纏われては不便でしょ?」
源二は図星を突かれすこし顔を歪ませると、手を引かれ風呂場を後にした
久々に動きやすい薄手の部屋着を着ると、共にベッドの中へと入る。中にはいると、芽亜利の表情にますます影が落ちイライラしているのか多少声に怒気が籠っていたような気がしたが、一緒に寝ることで何とか気が治まったようだった。
元から、あまりよくしゃべる子ではなかったためこれと言ってわざわざ会話をすることはない。
だが、二人の距離はほぼ0といってよかった。
容姿端麗な少女のすこし冷たい体温に源二の体温が奪われる感覚
仰向けに寝る源二の横で規則正しい寝息を立てる少女は源二の服を掴んで離すことはなかった
こうしてみるとなんと可愛らしい寝姿をしているのだろうか。この姿だけをみれば誰も彼女が鮮血の処刑人という二つ名を持っているなんて思わないだろう。
それに、彼女が自分についてきてくれる理由も普通じゃない。すでに自分も普通の人間ではないだろうし、すでに心の中で何かが壊れ始めている自分はもう驚くことはない。
今もこうして人をたくさん殺したというのに、当たり前のようにものを食べ。寝ようとしている。
38人。雹王、シャジール、そして宮廷魔法士と自分を追ってきた暗殺部隊、拷問官の女。
全ての殺しも覚えているが、どれも何も思わない。
だが、殺すたびに自分が自分では無いような。自分を嫌っていく自分がいる。
そして、宮廷魔法士を殺すときに聞こえたような、聞こえなかったような狂戦士の嘶き
一体、大戦時代。彼女は何のために戦ったんだろう。
何のためにああなったんだろう。
ラインハルト、あの男と何の関係があるんだろうか。
でも自分とていい加減帰る手立てを追わなければならない。
唯一の手段は、セレナの辿った痕跡を追うこと...それと勇者。そしてアトラスの力を暴くこと...
だがもう自分は闇の魔法を満足に使えない。それはわかる。今自分は瀬戸際に立たされている。
使えば死ぬわけではない。これ以上強力な闇の魔法を使えば自分の中で大事にしていた何かがいよいよ決壊する。これは間違いない。
大事にしていたもの...俺が持っていたもの...今は記憶として自分の中にあるが、ついこの間まで当たり前のようにあった日常。ただの当然で、必然な理だった。
「そう殺気立っては眠れませんわ。」
「ごめん...」
芽亜利はふたたび源二の胸元に顔を埋めると、源二は無理やりにでも目を瞑った
このままでは、持ちそうにありませんわね...
解放編もありがとうございました。次回からは9章、再臨編をお送りします。皆さんが日々読んでくれていて感謝です。たのしー。




