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悪夢の夜に  作者: 赤さん
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第1節 5章 暗躍編Ⅱ

さて、暗躍編も半分くらいです。今作は久々にご褒美回のようなものでしょうか。

源二がその場からいなくなると、クリスは落ち着きを帯びた顔のまま、続きを話始める。


「それと、僅かに信じがたいことだがエイレーネが二領地攻略の際、召喚魔法が観測されたと...」


フォールンがクリスの方を見つめる


「それは本当かい?」

「ツバキからの情報だ。間違いないだろう。」

「凄いねぇ...

召喚の魔法は、特定の物、生物を呼び出し使役する魔法。

こんな魔法を使えるのは知ってのところ、君のパーティーにいる赤髪の女の子の母、セレナしか心当たりがない。

それに、セレナが君たちを呼び出した魔法はただの召喚じゃない。

大召喚という一つ上の魔法だ。

召喚は一時的に特定の物体を呼び出すのに対し、大召喚はこの世界に存在そのものを受肉させる。

君が言語を理解できるのも、こうして自由に動けるのもその魔法が行使されたからだ。

でも、一人ならまだしも。何十人も呼び出すとなると訳が違う。

僕たちはその魔法による反動を見越して、アンリ・セレナを死んだものとして扱っていたんだが、どうやら違うようだ...」


「もしかしたら、彼らが戻れる手立ても見つかるかもしれないということじゃな...」


「帰れるとは限らない。だが、これ以上エイレーネに大召喚を使う魔法使いを置いては置けない。

そこで、我々も調査に乗り出す。」


源二は実はありったけの知識と技術を振り絞り、その話の内容を盗み聞きしていた。

真っ暗な夜の時間は自分にとって最もベストな魔法を発揮できる状況で、最も隠密に剥いた無を生み出す。人の認識を搔い潜ることに特化した魔法なのだ。

少年はベッドへ寝転ぶとネガティブな感情がより流れ込んでくる。

いくら精神の消失が始まっているとはいえ、この忌まわしいネガティブな思考回路までは取り去ってくれないらしい。

むしろ、この思考から消してくれたほうが世界中から狙われる人間にとっては都合がいいのかもしれない。

今であれば、一国の中枢に匿われる形で源二ではなく、冒険者ゲンジとしての立場を得ているからこそ、闇の魔法使いの存在を隠せている。

しかし、その存在が一度知ってはならない人間にまで。エイレーネやウェインフリート以外の国に知られてしまったら。それだけで戦争が起こる引き金になり得る。

人間を一人殺したくらいでこんな状態では生き残れるはずがない。

かといってたかが一人と割り切れるはずがないのであった。


だが、それと同時に召喚魔法を使った人物を。ペトラの母の居場所を突き止めれば帰れるかもしれない。


深いため息をつきながら意識を微睡の中へ落としていく。


源二はこの世界に来てからというもの、時間という概念が存在しないということもあり深い眠りについていた。

夢さえも見ないような深い暗闇から意識を覚醒させ、視界に明るみが差し込むと同時に目の前に白い髪を後ろで二つにまとめた少女の顔が視界に広がる。

咄嗟に心臓が跳ね上がると同時に後ずさる


「ちょちょちょ...何!?何でいるの!」

「おはようございますわ。ゲンジ様、速くしないと約束に遅れてしまいますことよ。」


源二はパッと後ろを振り向く。しかし、そこには壁しかなかった。

それもそのはず、源二は前の世界での目覚まし時計が置かれていた位置を咄嗟に確認してしまったのだった。



そのことに気づき、困惑の表情をむける芽亜李を尻目に焦りを浮かべながら部屋を後にすると階段を降りながら深いため息をつく。


「何か月たったんだろ...いい加減家に帰りたい...ホームシックってこんな感じなのかな...」


いつもは貧乏くさい飯だの、美味しくない、いつも同じ味だの文句を言っていたご飯の味が酷く脳裏にこびりつく。

憂鬱な気持ちを押し込め、芽亜李と共に街へと向かうとすでにペトラとエレーナが待っていた。


「遅いわよ!全く」


源二は謝りながら駆け寄ると、目の前の馬車に目をやる


「あれ、自分たちで行くんじゃないの?」

「ん?ああ、あれはエレーナの回診用で詰め込まなきゃいけない荷物も多かったからね、旅行だけなら街への定期便を使うのよ。ほら、速く乗るわよ。」


ペトラが馬の荷台に乗ると、全員もそれに乗った。

馬車の主らしきおじいさんが乗車を確認すると、ゆっくりと動き始めた。


「それじゃあ、ノトスまで行きますよ。」


優し気な面持ちのおじいさんが源二達に言い放つ


「お願いします」


ペトラとエレーナが笑顔で答えると、馬車が城壁を抜けると、街道に沿って進み始めたのだった。



一方、鏡花達は神聖エイレーネ帝国の王宮にて、王座にいるラインハルトに対して平伏するシャルロットの姿を見ていた。

今回のパラトス包囲網を防衛した立役者であるシャルロット一行を称えるパーティーが催されていたのだった。

鏡花達は王宮に戻ってきてからというものまともに休息をすることなくパーティーに引っ張りだされたため、すぐさまパーティー会場を後にしようと疲れた様子でドアを閉じると、廊下の先に篠原の姿があった。


「先生!」


鏡花達が篠原のもとへ駆け寄ると、篠原は少し焦った様子を見せながら近くにあった部屋へと生徒たちを押し込める。


「けがは?ない?」

「はい...私たちは...なにも...」


篠原は胸をなでおろすと、一行を席に座らせ、話を続ける。


「とりあえずは良かったわ...あなた達も元気で」

「一時はどうなるかと思ったけど...」


「何があったか教えてくれる?」


篠原がそう言い放つと、これまでに起こったことを事細かに話すと、篠原は頭痛を感じたのか頭を押さえていた。


「でも、助けてくれたのは騎士団でも、シャルロットさんでもなかった...源ちゃんが助けてくれた。」


鏡花が言い放った瞬間、篠原の表情が強張る


「源二...」


篠原がそう呟くと、頭の中で自分を助けてくれた黒いローブを身にまとったフォールンやエマの存在が過っていた

しかし、そんな妄想をしている場合ではないと首を振ると再び鏡花に向き直る

「助けてくれたって...どういうこと?」


「源は、シャルロットさんと戦っていた氷の魔法を使うやつと、あいつの仲間が魔物を操ってた人を殺して...」


「殺...した?」


驚愕の表情を浮かべる篠原に一同が頷く

その光景が、言葉が篠原にとっては信じられないことだった。

源二はクラスの中でも問題を起こすような生徒ではなく、部活にも熱心で気弱な部分はあるが、当然の如く人を殺すようなことをする人間ではない。

実際に周りには伝えていないものの、篠原も実際に命を狙われたにも関わらず何もできなかった。そんな状態だったにも関わらず、この期間で一体彼の身に、心にどんな変化があったのだろうかなど考えるだけ無駄であったが、考えざるを得なかった。

そう考えるだけでも鏡花は目にうっすらと涙を浮かべていた。


「でも、源ちゃんは...私たちを守ってくれた。昔から気弱な源二が私達を助けてくれた。私たちにとってはこの世界の歴史なんてどうでもいい、今度は私たちが源ちゃんを助けたい!」


「それは...だめだ。」

「どうして!」

「お前たちを危険な目に合わせられない!いくら魔法が使えるからと言って命は一つしかない...元から訓練を積んでるこの世界の人たちとはわけが違う。」

「じゃあ先生は、源ちゃんがどうなってもいいの?」



篠原はしばらくの静寂の後口を開く


「私だって...生徒の一人も守れないなんて悔しいわよ。でも、どうしようもないじゃない...私には、源二君を護る力がない!先生という言葉だって立場をはっきりさせるだけ。別にあなた達より少し経験があるだけの同じ人間に過ぎないのよ...」




「だから...だからこそ、一緒に頑張って源ちゃんを助けてあげよ?」


鏡花は篠原の手を取り、そう言い放つが篠原が頷くことはなくただ深く項垂れていただけだった。

しかし、そんな篠原の気とは裏腹に龍弥たちは鏡花の発言に頷いていた。


一同はやがて夜を迎え、それぞれの部屋に案内された。

昼の篠原との会話の中、龍弥の頭の中にはシャルロットに言われた言葉も突き刺さっていたのだった。

クロセス・フロストとシャルロットが戦っていた時。否、魔物たちに包囲網を敷かれたときから、鏡花や龍弥、いつもはおちゃらけている正吾でさえも戦っては死んでいく兵士たちの姿、街の状態から見て見ぬふりをしていた。

薄情だと思う気も彼らの中には同じくあった。しかしそれ以上に死んでいく人間の姿を、血を流しては大気と同じ温度まで低下していく肉の塊を、生き物からモノへと変わり果てる人の姿を直視できるものなど鏡花達の中にはいなかった。

しかし、それと同時に龍弥だけは死んでいく兵士たちが紛れもない自分たちの為に命を賭して戦っているということ、その戦いに一番、目を逸らしてはならない存在であるのであるということを


シャルロットのもとへ駆けつけたのも、龍弥が説得したからに他ならない。だが、結果は彼女の言葉に一蹴されてしまった。


「勇気と無謀を履き違えるな...か。」

「なんか言った?」

外の風を浴びながら源二が暗闇に独り言を零すと、それに反応したのか、正吾が問いかけた。


「いや、ただ源二がな。」

「そやね。ゲンゲンがあんな力を...」

「いや、そうじゃない。別に俺らだって魔法は使える。属性は違うけど。」

「でも、あの強さチートだろどう考えても...」

「そうだな。でもあいつにもできるなら俺らにもできるってことだ。」

「そしたら、俺らも美女に囲まれてウハウハだな!」


龍弥は笑みを浮かべると視線を虚空へと放った


「そんな...そんな簡単なことじゃない気もする。

普段はあんな弱気な源二が、そんな簡単なことでああなるはずがない。

初めて属性が振り分けられたとき、源二は連れ去られたと思ってたけど、それならどうして源二はまた俺たちのところまで来れたんだ?

もしかして、源二の持ってる魔法は何かこの世界にとって存在してはいけないとか、そういうものなんじゃないのか?」


「なにそれ!かっこいい奴じゃん。主人公じゃん!」


「馬鹿!お前、そんなの空想の世界の話だ。仮に源二が本当にそういう立場なら文字通り世界中から狙われるんだぞ!」


「ごめん。」


「いや、でもこれも、もしもの話だ。もしも、源二が連れ去られたのではなく、助けられたら。ラインハルトさんが源二を助けようとしたのではなく、存在してはいけないから連れ去られる間に殺そうとしてたなら...」


「それって...」

「この話はやめよう。とりあえず、今の俺らは何をするにしても力不足で、情報も乏しい。スマホでなんでもわかる時代じゃないんだ。明日から頑張らないと」


龍弥は室内へと戻っていくと、そのまま横になった。


それと同じころ、篠原も同じようなことを考えていた。

源二が叛逆の首謀者、クロセス・フロストを殺して鏡花やシャルロットの治めていた領地の窮地を救った。

それだけではない、自分が何もわからぬ間に殺されそうになったあの時、全身を黒いローブで身にまとった覆面の男と源二がまだ生きているという知らせ。思えば、最初に源二を攫ったのも黒いローブを身にまとった二人組だった。

篠原自身は正直、源二はもう生きていないのではないだろうかと思っていた。

しかしそれが次現れた時には、魔法を使いこなしそれまで皇女殿下を圧倒した敵を尽く討ち取った。

源二の心と体が魔法によって大幅に改変されていることを知らない篠原たちにとっては、源二の豹変ぶりを正確に推測できるものなど召喚者の中にはいなかった。





「シャルロット、あいつはどれほどだった?」


ラインハルトは向かい側に座る娘、シャルロットに真剣な眼差しで問いかける。


「はい、お父様。ゲンジは着々と実力をつけております...私が及ばなかったクロセス・フロストを難なく...それどころか背中から刺した槍を動かしたり、それでなのか。その...笑ってたり...


あの、ローザのことは労わって頂けないのでしょうか。彼女はその身に変えてもパラトスを護りぬいたのですよ?」


しかし、ラインハルトからは冷たい視線だけが振り下ろされてくると、シャルロットは僅かながらに漏れ出た本心をしまい込みながらも俯く。


「よもや、座視してはいられない状態で御座いますな。皇帝陛下殿」


ラインハルトとシャルロットの椅子の丁度中央に座る白と赤を基調とした服を身にまとった老人が口を開いた。


「教皇殿...」

「もはや、これ以上。邪悪な存在の進行を許してはなりませぬ。」


「ですが、教皇様よろしいのでしょうか?今は召喚者たちも荒事に巻き込まれ、心身ともに厳しい状況にあります。そこでさらに元ご学友を狙って行動するなど...

まして、奪われた先がウェインフリートの第三権だとするなら戦争にも発展しかねます...」


「よせ、シャルロット。

篠原暗殺も阻止され、ついには借りを作る形でウェインフリートにしてやられた。」


シャルロットは勢いよく席を立つ


「そもそも、なぜこんなことに!なぜ、暗殺に加担していたはずの連合小王国は我が国に反旗を翻したのですか!」


ラインハルトは興奮した実娘を宥め、席へ座らせるとゆっくりと口を開いた。


「もとより、連合小王国はその多くが魔族との戦争時に没落した貴族たちが離散し、その中でも力を持っていたもの達がそれぞれに国を建て連合を結成した姿だ。

それに加え、私の父。先代の皇帝は戦争時の功績により力を得たもの達を始末しようとした。そのツケが今になって帰ってきたのだ。

我は、篠原暗殺の時。連合小王国に対し篠原の暗殺を成功させれば、何らかの褒美を与えると約束していた。

褒美は地方領地でも、召喚者の派遣でも構わなかった。だがすべて失敗に終わった...」


ラインハルトは強く握り拳を作ると、深呼吸をし気を落ち着かせる。



「教皇殿、ここは私にお任せくださいませんか?」

「シャルロット!」

「表がだめなら裏で。彼らに接触するのは私としては複雑な気も御座いますが。今は一度、目を瞑りましょう。」


「良いのですか?シャルロット様は奴隷市場、人身売買や売春を良しとしておりませんが...」

「ええ。ですから今回だけです。」


「わかりました。大いなる神もこの世界に蔓延る悪の根源を打ち払う為ならばお見逃しになることでしょう。」








シャルロットはその顔に深い影を落としながら教皇の横をすり抜けていくと、少女がいなくなった部屋では、再びラインハルトと教皇シモンド・サイファーが向かい合っていた。


「それで、ラインハルト皇帝陛下。先ほども申しました通り、これ以上闇の魔法使いを野放しにはできません。貴方が召喚した方々の存在もウェインフリートに露見してしまいました。これでは世界的な非難を浴びかねます。」


「わかっている。」


「我々教会は勇者の派遣を決定しました。」


その言葉にラインハルトの表情がぐっと曇りを増す


「勇者は戦闘経験がないのではないか?」


「先のパラトス奪還、その他2領地の奪還にも同行させました。報告によればかなりのショックがあるようですが、アトラスを持たせるには十分です。」


「だが、勇者は正式にこの国の民だ。」

「ええ、もちろんですとも。」

「そのためのシャルロットか...」


サイファーは笑みを浮かべると、席を立ち部屋を後にした。



あくる日の朝、源二達は道の凸凹に沿って揺れる荷台にボーっと座り込んでいた。


「ねえ芽亜利ちゃん、ゲンジ君ずっとあんな調子なの?」

「あんな調子?どういうことでしょうか...」

「あれよ、ゲンジ君がその...殺しちゃったから気に病んでるって...」

「そうなのでしょうか」


芽亜利は全く身に覚えのない様子で首を傾げていた。


「無駄よ。芽亜利にそんな常人の心なんてわかるはずないわ。」

「ちょっと、なんてひどいこと言うの!同じ仲間なんでしょ!」


エレーナはペトラを叱咤するとさすがに言い過ぎたと反省したのか、少ししょんぼりとした顔を浮かべていた。


「構いませんわ。この女の仰ることは正しいですもの。」


芽亜利は笑みを浮かべながら答えると流れゆく道をボーっと眺める源二に視線を移した。

源二は特別、人間を殺したことを気に病んでいたわけではなかった。すでに人を殺すことに対する感情を気に病むような良心は消失してしまった。

しかし、消失したからこそ容易に人を殺せる自分が許せない。ましてや殺した相手を弄ぶようなことをする自分が信じられなかった。


だが、そんな思考は片隅にありながらも純粋に心を休めていた。

ゆっくりと眺める時間に身を任せ、道に揺られ。風を浴びる。

思えば異世界に召喚されてこれほど落ち着いた時間は初めてだったのだ。


召喚されてからというもの、王宮ではクラスメイト達の混乱の日々、そして突然命を狙われ隣国のウェインフリートへ。

助けてくれたクリスさんたちと共にいることを決意してからは死なないことを良いことに地獄のような訓練の日々。

ペトラと初めて会ったときは、いきなり決闘をして親友のエレーナとも仲良くなった。

魔物の退治も初めてやったときは酷い気分だったが、今では慣れたもので気に病むこともない。

そして、まともに武器が戦えるようになったと思った矢先、教師の篠原綾子の暗殺の阻止。そして芽亜利との闘い。


そして、随分街にも慣れてきた中での魔物の調査。冬場のヌクヌクした酒場の感覚が今でもうずうずする程心地よかった。

酒に弱い自分の為に酒場の主人が気を利かせてくれて甘いお酒を特別に取り寄せてくれたり優しい人たちに恵まれていたと言えた。


さらにそこから、諸侯の叛逆。エマの凄まじい魔力、そしてフロストを殺し、鏡花達との再会。

嬉しい再開ではあったが今の源二では彼らの元に帰ることはできなかった。


源二はふっと笑みを浮かべると、腰を上げペトラたちの元へ歩み寄る


「やっと帰ってきた。ねえゲンジこれから遊びに行くってのに、あんたそんな腑抜けた顔浮かべてるなんて、バチが当たるわよ?これから行く街はホントに良いところなんだから。」



「ごめんごめん、それでそのノトス?だっけ?その町はどういう街なの?」


「は?ああ、そういえばアンタこの世界の人間じゃないんだった...

ノトスは海と山に面した街で大戦時代は地龍が棲んでいたところなのよ。」


「地龍?」


「地龍ってのはいわゆる属性龍の一つで、知っての通り六大属性、光、闇、火、水、地、風を司る龍でその知力と寿命の長さから信じられない強さを得ていた魔族よ。もう死んじゃったけど。」


「死んじゃったんだ」


「魔族と人間の戦いだもの。当然、龍もその一つよ。」

「でも、信じられない強さなんでしょ?」


「ええ、その信じられない力を上回ったのが剣聖と勇者の力よ。」


「剣聖と勇者?」

「勇者は今でいう神聖エイレーネ帝国の国教のカストス教のお抱えの魔法使いよ。亜人族にとっては仇みたいに思ってる人も多いけど、紛れもなく人類を勝利に導いた立役者で、初めて不滅の光龍を討伐したことで反撃の礎を築いたとんでもない魔法使いの伝承よ。

剣聖は宗教的な関わりはなかったんだけど、一説では勇者が光龍を倒したことを皮切りにその能力やら技術やらを受け継いだ事で他の属性も討伐できたっていう話があるわ。全部伝承だけどね。ただ、その存在は確かにまだあって今でも世界のどっかにいるわ」


「私を知ってたり、意外とどうでもいいことまで知ってるのねあなた。」


芽亜利は興味なさそうに鼻で笑うと、その大胆不敵な態度に源二とエレーナは苦笑いを浮かべる。

それに加え、源二は彼女が鼻で笑ったのは人によって作られた人間風情がと嘲笑の意味を込めているということも容易に想像できた。


「お客さん、見えてきましたぞ。ノトスの街が」


その声につられてペトラとエレーナが立ち上がると感嘆の声を漏らす

城壁をくぐり、街への定期便を集める場に到着すると源二たちは荷台から降りた。

全員で思いっきり伸びると、潮の匂いがかすかに鼻腔をかすめる。


街へ着くや否や、ゲンジ達の姿を見つけると格式高そうな正装に身を包んだメイドに出迎えられると一同はされるがままに荷物を持たれ案内されると、目の前に立ちはだかったのはとても四人用とは思えない大きな屋敷が聳え立っていた。

しかし、そこにはメイドたちばかりで自分を招待してくれた人間が見当たらないので感謝も述べられず、ゲンジが問いかける。


「領主様であるヴィットーリア様は皇帝陛下様がゲンジ様があまりこういった厳かな場を設けるのがお好きではないとのことでしたので...」


「ああ、なるほど...」


メイドたちはある程度の準備を完璧に整えると一礼をして部屋を後にすると、そのまま屋敷から出て行ってしまった。

源二は手直にあったソファーに腰を下ろすと、疲れがどっと押し寄せる

もともとこの世界の移動や狭い荷車に押し込まれていたことにも慣れない源二にとっては気苦労の要素しかなかった。


ペトラとエレーナは二人して部屋を後にすると、屋敷内を見て回るようでその姿を横目に、源二はふかふかのソファーに意識ごと手放した。


思ったよりご褒美じゃありませんでしたかね。個人的にはまだ物足りない感じがします。

ですが、安心してください。この小説はあんまそっち方向には進展する予定はありません。

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