回数殺人の恐怖
今の所上手く行ってる。
マークスはパイプに火をつけた。
真っ暗な部屋の中で、ジョンはリビングの腰掛け椅子に座っている。マークスは安楽椅子に腰をかけ暖炉の火前にいる。
「身元も不明のまま死体は姿を消した…一体全体、どうなってるんだ」ジョンは少し声を荒げた。
「まぁ落ち着きたまえよ…焦ったって怒ったって、事件は動きやしないのさ…今はゆっくり、次の殺人を待とうじゃないか」マークスは炎を眺めながら言った。
「次の殺人?なんだ?また誰かが死ぬのか?」
ジョンは気にかかる
「あぁ、起こるだろう。このアパートに犯人はいる。だが、その犯人は今の所わからない。だから、また起こる」
「おいおい、君が言ってるのはまるで、挑戦みたいなものじゃないか。私が犯人なら、もうこれっきりにする。だって今の所、完全犯罪なんだ」
「それを犯人が面白がって、今声を潜めて笑っている頃だろう」マークスは冷静にパイプを吹かした。
「快楽殺人ではなくて、回数殺人だな」
「回数殺人?聞いた事ないな」
「ふん、今私が作った言葉さ」
「どういう意味か聞かせてくれ」
マークスは火の消えそうなパイプを暖炉に放り投げて言った。
「間抜けな殺人犯の事を指す。つまり調子乗って」
言葉が終わる時、アパートの中から女の悲鳴がしたのであった。
ジョンは驚いて固まって、マークスは立ち上がった。
第2章
一階の部屋からその声は聞こえた。
ジョンは懐の銃に手を入れ、いつでも撃てる態勢であった。
マークスが扉の鍵を開けている最中、ジョンは周りを警戒した。
懐中電灯を口に咥え、鍵を開けていた。
開いた感触を感じると、光をジョンに照らし、ジョンは二歩ほど下がった。
マークスは立ち上がり、拳銃を抜いた。
ドアノブに手を置き、開けては、銃を先に中に入れ、その次に顔を入れた。
ジョンが下から懐中電灯を中に入れて、玄関が光に照らされる。
誰もいないのを確認すると、マークスはジョンの靴を靴で叩いて、扉を大きく開けた。
靴は二足。女物のだ。
二人同時に入り、扉を閉めた後、靴を脱がすに玄関上がった。
右か左、ジョンは風呂場に行くと言って、右に向かった。
マークスは左に歩いた。
左はリビングであり、ガラスの扉から光が反射した。
カチと消した。リビングには電気がつけっぱなしである。
扉からリビングを見渡し、開けて中に入った。
静かに、オーブンレンジがついている。
下の方を見ると血を流さず倒れている死体があった。
マークスは銃を懐にしまい、死体に近寄る。
全裸で女が倒れている。
打撲痕もなければ、抵抗した際にできる傷もない。
爪も綺麗だ。歯も、眼は開けっ放しである。
「マークス!」
風呂場の方から大声でジョンはマークスを呼んだ。
二つの足音が荒れて、やりあっている。
マークスは急いで風呂場に向かった。
全裸の女がジョンを殺そうかと必死に包丁を振りかざしている。
「動くな」マークスは銃を女に向けた。
女は血だらけで、表情からして狂っていた。
歯を剥き出しに、息を上げて、マークスを見た。
ジョンは不意を突かれたのか、銃を手に持っていなかった。
「この女、後ろから首を絞めようとしてきた」
「大丈夫かい、ジョン」
はだけた服からして、女は一心不乱であって、今にも襲ってきそうだった。
「名は?」
名前を聞こうとした時、女は白目を向いた。
そして喉に爪を当て、かきむしりはじめた。
酷い、血が垂れ、女は苦しそうに倒れて、声も上げれずに死んだ。
ジョンとマークスは唖然としてその場にいた。
女の喉が震えて、何か、音声が流れ始めた。
「え、え、お、お、わ、わ、……」
おぼつかない声であった。
「え、え、お、お、わ、わ」
ジョンは落とした銃を拾い上げて手に持った。
「なんだこれは」とジョンは言う。
マークスは両肩を上げ落とした。
唖然として立っているとキッチンの方から音がした。
マークスはジョンをその場に残して、キッチンに向かった。
キッチンに着くと、首を掻き毟った女がいた。
テープが一個血に流されて出ている。
そしてラジオの音声もした。
「た、た、す、けて」男の声だ。
マークスは冷静にテープを拾って、紙に拭いては包んだ。
………「殺人鬼がいるアパート…素晴らしいよ本当」
マークスは二人の死体を並べた。
「何処か変な所はあったか」ジョンはトーストにバターをつけていた。
「特に。歯も抵抗した際にできる傷も引っ掻き傷も、打撲痕すらない。二人は寝ていた間に、全身麻酔をされて、喉に機械を入れられたんだろう」
「て事は犯人は医者か?」
「その可能性は大いにある」
ジョンは二つのトーストを一枚マークスにやり食べた。
「風呂場にいる女は凶暴だったな。まるでピッドブルだ。…そういや、名前はわかったか?」
「いいやわからない。そこら中探したんだが…名前すら無かった」
「…んん?…そうか。…普通、何処かにあるはずなんだかな」ジョンはコーヒーを飲んだ。
「おいおい、他人の物を勝手に使うなよ」
「いいじゃないか、腹が減ってたんだ。探偵料だよ」
「…なら僕のもコーヒー一杯頼むよ」
「あいよ」




