第弐話 楽園への行き方
前回のつづきです。楽しんでもらえると幸いです。
「教えてあげよう」
「なにを?」
「魔術師の定義について」
「魔術師の定義?」そんなの聞いたことがない
「ああ、魔術師にはしっかりとした定義がある」
「どんな?」
「逆に聞こう、どんな定義だと思う?」
いわれてみれば考えたことがなかった。なにが定義なんだ?
「えーと、魔法が使えて、頭が良くて、杖で遠距離から攻撃する人とか?」
考えてもわからなかったから、漫画や小説で聞く定番の要素を挙げた。
「ありきたりだな」男は呆れた顔をして言った
「どうやら人間界ではタロットカードなどを使って奇妙なことをする奇術師や、マジシャンがもとになっているらしいな」
はへーそうなんだ、初耳だ。調べたことがなかった
「魔術師とは神に抵抗する者たちだ」
「神に…抵抗?」
どういう意味なんだ?
「意味が分からないだろ?」
「うん」
「世界には神が作った摂理というものがある」
「摂理?」
「例えば、肉や人間の死体は放っておいたら腐る、物は重力で床に落ちる、もっと極端にいうなら、人間が死ぬということもだ」
「範囲がひろい.…」
「ああ、でも、今言ったことのどれにも、意味は分からないだろ?」
たしかに、死体が腐ることも、物が落ちるのも、人が死ぬのにも、原理はわかるが事象としての意味はわからない。
「意味が分からないことに意義を唱え、抵抗しようとする者たち。それことが、魔術師の定義だ」
「でも、それなら僕たちの社会にもいるにはいるぞ」
今言ったことが定義ならば、不老不死を求めた社会の偉い人達や寿命を延ばそうとする研究家たちも魔術師になる。
「はぁ~、まだ話は終わってないぞ」
男は呆れた顔で話をつづけた。
「実は魔術師の定義はさっき言ったことがすべてではないんだよ」
「魔術師とは神に抵抗する者たちであり、抵抗する手段として『罪力』による『魔法』を使うものたちだ」
やっぱり魔法は使うんだ…でも魔力ではなく
「罪力?」
「ああ」
「罪力ってなんだよ」
罪という感じがついている時点であまりいい気がしない。
「『罪力』それは神に抗う力だ」
「さっきから『神に抗う』『神に抗う』ってどういう意味だよ」
話が長くてイライラしてきた
「神に抗うとは、神が作った摂理を壊すということさ。そして、罪力とは神に疑いをかけることによって溜まる力だよ」
「それなら、さっき言った人間界の人たちも罪力を持っていることになるぞ」
「ふふっそこだよ」
男は目を細くして笑った
「ふつう人間界に暮らす者たちは罪力を溜める器を持たない、故に溜まった罪力を使う方法もない」
「じゃあ俺は…魔術師にはなれ…ないのか」
「いやなれる」
曇った心が晴れた
「なぜかはわからないが君の中には器がある」
「器って罪力を溜める?」
「ああ、それもとても大きい、単なるサイズでいうならばこの僕と同等だ。それに、君の場合『俺は魔術師だ』と神に抗う発言をし続けたことによる罪力が溜まっている」
「じゃあ俺は魔術師になれるのか?」
「だから、そうだと言っているだろう」
嬉しかった。でも、この時はなぜ嬉しかったのかはわからなかった
「さぁ、話は終わりだ。行こうか」
「どこに?」
「魔術師だけが住む世界、魔法界だよ」
どうだったでしょうか。不評も好評も大歓迎です。




