第87話 強化と備え――来るべき竜王戦へ
野営地に火を起こして、全員が地面に座った。
誰も最初は喋らなかった。戦闘の疲労が体に残っている。ウィンディーを倒した直後の、あの静寂がまだ続いている気がした。
勝った。
でも、安心はなかった。
ウィンディーは1体だった。ウインザーの眷属の、1体だ。
火の明かりで、俺は能力の変化を確認した。
数字を見た瞬間、思わず目を細めた。
加護魔法のレベルが44から51に上がっていた。ポケットも大幅に増えている。善行ポイントも目に見えて増加していた。
「サーク、お前は?」
「炎が46から54になりました」
サークが落ち着いた声で答えた。
「ランクが足りなくなりますね」
「強化するか」
「はい。善行ポイントを使います」
サークはランクが64まで引き上げた。善行ポイントが9.6消費された。ポケットも増えている。炎魔法の7レベル帯が解禁された。
「ニアはどうだ」
「近接が35から44になったで」
ニアが数字を見ながら言った。
「一気に上がったなぁ」
「ドラゴンは別格ですね」
サークが静かに言った。
俺は数字を眺めながら考えた。
たった1体のドラゴンとの戦いで、これだけ上がる。ドラゴンという存在の重さが、そのまま成長幅になって現れている。
翌朝、ウィンディオがそっと近づいてきた。
「よくやったな」
静かな声だった。褒めているのか、労っているのか、判別しにくい。
ドラスが続けた。
「だが、ウインザーは黙っていない」
それだけで、場の空気が締まった。
全員わかっていた。ウィンディーを倒したことは、ウインザーへの挑戦と同義だ。向こうが動くとすれば、時間の問題だ。
加護魔法の7レベル帯が解禁された。
俺は候補を確認した。
レスキュー。全員を強制的に安全な場所へ離脱させる魔法だ。俺が選んだ場所ではなく、「安全な場所」に自動的に移動する。敵の追跡からは逃れられる。
これは確定だ。
「敗北しても終わらない」保険として、絶対に必要になる。ウインザーと戦う以上、最悪の場合に備えなければならない。
次はリグロースパーツ。欠損した部位を回復する魔法だ。ドラゴン戦では手足の欠損が起きうる。今まではなかった選択肢だが、今後は必要になる。
クリアランス。状態異常を完全に回復する。リセットより上位だ。
エンチャントウェポンとエンチャントアーマー。武器と防具に永続的な強化を付与する。バルドの装備を底上げできる。
「……削れるものがない」
俺は口に出した。
スペルターニング。ドラゴンは攻撃魔法をほぼ使ってこない。これだけ除外した。
選択ではなく、生存のために必須だ。残りは全て取る。費用は640ゴールドが5枠で3200ゴールドになる。
サークの炎魔法7レベル帯について、2人で話し合った。
「サモンエレメンタルⅥは確定だ。半額で取れる」
「はい。エレメンタルの規模がまた上がります」
「フレイムジャベリンはどうだ」
サークが少し間を置いた。
「……刺さる、と思います」
俺も同じ考えだった。フレイムジャベリンは炎の槍を射出する魔法で、貫通力が高い。傷口への1点集中攻撃と完全に噛み合う。ウィンディー戦でやった戦術を、さらに磨ける。
「スペルエンハンスは?」
「魔法威力が2倍になります。ただし消費も上がる」
「ウインザーに削りが届くかどうかの問題か」
「上限を超えるための手段ですね」
スペルエンハンスを取ることにした。現状では火力が足りない場面が来る可能性が高い。
「インフェルノは?」
「範囲が広すぎて、味方を巻き込む可能性があります。今のパーティ構成では扱いにくい」
「却下だな」
炎7レベルの取得は3つ。サモンエレメンタルⅥ、フレイムジャベリン、スペルエンハンス。費用は640ゴールドが2枠と320ゴールドで合計1600ゴールドだ。
今回の魔法習得と雑費を合わせると、所持金が13966ゴールドから9802ゴールドに減った。
習得の段階になって、初めて壁にぶつかった。
冒険者ギルドで講師を探した。今まで習得の際に技術指導を受けられる者を探してきたが、今回は違った。
「……教えられる者がいない」
ギルドの受付担当者が、申し訳なさそうに言った。
「このレベルの魔法になると、使い手自体が非常に少ないので」
俺は少し黙ってから言った。
「書物でやるしかないか」
今まで誰かに教わることができていた。でも、ここから先は自分で到達するしかない領域になってきた。それが今の段階なのだと、俺は静かに受け入れた。
1週間かかった。
俺は加護魔法の7レベルを習得した。サークは炎魔法の7レベルを習得した。書物と実践を繰り返して、少しずつ感覚を掴んでいく地味な作業だった。
費用もかかった。参考書の購入、実践のための消耗品。積み上げると安くはない数字になった。
安くはないな……だが、これを惜しんでいる場合ではない。
そう思った。
習得が終わってから2日後、バルドの装備にエンチャントウェポンとエンチャントアーマーをかけた。
バルドが剣を握り直した。
「……軽いな」
「性能は上がってるわよ」
リアンが言った。バルドが何度か剣を振って、感触を確かめた。満足そうな顔だった。
その夜、俺は戦力を整理した。
ニアが主軸だ。前線でドラゴンを削り続ける。バルドが突破役で、傷口を深く抉る。サークが火力を担い、フレイムジャベリンとスペルエンハンスで削り切れない場面を補う。俺は支援と継戦管理、そして最悪の場合のレスキューで離脱を確保する。
役割が明確だった。
全員がウインザーを倒すために、それぞれの位置で機能している。
深夜、俺は外に出て空を見上げた。
ウィンディーは倒した。
でも、次は違う。
ウィンディーは眷属になったドラゴンだった。それでもあれだけの戦いになった。ウインザーは、そのウィンディーを従えていた存在だ。
遠くから、ドラスの声が届いた。
「来るぞ」
俺は空から目を離せなかった。
風が、少し強くなった気がした。
ウインザーが来ても、おかしくない――。
タカオ:回復・支援の中核
【加護魔法】 ランク55 レベル51
【ポケット】 52+1
【習得魔法】
レベル1:ヒーリング.ブレス.エイド.ディテクトマジック
レベル2:ヒーリングプラス.ストレングス.ウィーク.センスエネミー.マジカルガード
レベル3:リジェネレーション.キュアディジーズ.ディスペルマジック.キャンセレーション.ヘイスト.エレメンタルガード.ウォーターブリーズ
レベル4:キュアポイズン.フィッシュムーブ.センスライ.クリエイトスクロール
レベル5:レイズデッド.トリートメント.リムーブカース.リセット
レベル6:リフレッシュ.グレーターディスペルマジック.アナライズマジック
レベル7:レスキュー・リグロースパーツ・エンチャントウェポン・エンチャントアーマー・クリアランス
【スクロール】
レベル1 エイド×1
レベル2 センスエネミー×1
レベル3 キュアディジーズ×1
レベル4 キュアポイズン×1 センスライ×1
レベル5 リセット×5 レイズデッド×1 リムーブカース×1
レベル6 アナライズマジック×1
【知識系】
各種知識 ランク16
魔物知識 レベル7
植物知識 レベル8
地域知識 レベル12
【水泳】 レベル4
サーク:後衛火力・対ボス対応
【属性魔法(炎)】 ランク64 レベル54
【属性魔法(地)】 ランク25 レベル10
【属性魔法(光)】 ランク30 レベル21
【ポケット】 45+1
【習得魔法】
レベル1:スリープ.ファイアボルト.サンダー.ライト.ディテクトマジック.バークスキン
レベル2:サモンエレメンタルⅠ.ホーリーライト.ホーリーウェポン.フレイムボディー.ストーンサーバント
レベル3:サモンエレメンタルⅡ.ライトニング.マジックファング.シャインフラッシュ.ホーリースフィア.ファイアーボール.ミラージュフレイム.シャインヒール.アースシーイング
レベル4:サモンエレメンタルⅢ.セーブライフ.バーニングストライク.スタンスローター
レベル5:サモンエレメンタルⅣ.ファイアイミュニティー.サプレスエレメンタル.フレアボム.コータリゼイション
レベル6:サモンエレメンタルⅤ.バーンアウト.フェニックスライフ
レベル7:サモンエレメンタルⅥ・フレイムジャベリン・スペルエンハンス
【近接戦闘】 ランク9 レベル7
【鋭敏感覚】 レベル14
【気配感知】 レベル10
【水泳】 レベル4
ニア:遊撃・索敵
【属性魔法(風)】 ランク25 レベル22
【属性魔法(光)】 ランク63 レベル14
【ポケット】 19
【習得魔法】
レベル1:サンダー.ウィンドショット.スリープ.ライト.ディテクトマジック
レベル2:サモンエレメンタルⅠ.スピード.インパルス.ウィンドトーク
レベル3:サモンエレメンタルⅡ.スカイウィング.ガストウィンド.シャインフラッシュ.シャインヒール.マジックファング
レベル4:サモンエレメンタルⅢ.トルネード.ミサイルプロテクション
【近接戦闘】 ランク50 レベル44
【電撃ブレス】 レベル12
【危険感知】 レベル16
【気配感知】 レベル16
【視認】 レベル18
【水泳】 レベル1




