第69話 迎撃戦(後半)と戦後処理
「ゾマ、シェイドを頼む」
俺は言った。判断は一瞬だった。
ダリウスはバーニングストライクで魔法が封じられている。手下2が解除しようとしているが、今すぐではない。ニアがいる。サークがいる。ダリウスを落とす算段はある。
シェイドは別だ。地中から出てきて、一瞬でリアンを戦闘不能にした。あれを放置すれば、次に誰かが狙われる。
「任せて」
ゾマがクライミングミストを発動した。シェイドの足元から霧が湧いた。視界を塞ぎながら、動きを遅らせるスロー効果が入る。
シェイドが霧を突き抜けた。一瞬で突破した。しかし動きが明らかに落ちていた。スロー効果は残っている。
「ここは任せて、ダリウスの方へ行って」
ゾマが精霊を前に出してシェイドと対峙した。ゾマの気配感知がレベル9ある。シェイドの動きを読める範囲で引きつけ続ける。
俺はダリウスに向き直った。
「キャンセレーション」
俺は手下2に向けて発動した。
回復や支援の魔法が封じられる。バーニングストライクの解除を阻む。手下2が魔法を使おうとして、止まった。
「サーク、スタンスローター」
「いきます」
範囲麻痺がダリウスと手下2を包んだ。格上には完全には効かない。しかし一瞬の硬直を作ることはできた。
その一瞬で、ニアが動いた。
ストレングスで強化された体。マジックファングで強化された爪。それを全部ぶつけた。
ダリウスは魔術師だ。魔法を封じられた状態で、強化された竜の近接攻撃を回避できる体ではない。
爪が入った。連続で入った。ダリウスの体が吹き飛んだ。飛行魔法の維持ができなくなった。地面に落ちた。
音がした。
動かなかった。
「もう無理です。引きましょう」
手下2の声がした。
「ダリウスは無理だ。残りを回収するぞ」
別の方向から声がした。シェイドだ。
手下1がバルドから離れた。後退しながら距離を取った。手下3がシェイドのそばに回収された。
シェイドが地面に向かって動いた。一瞬で地中に消えた。手下2も後退しながら上空に逃げた。
静寂が戻った。
「リアン」
俺はまず確認した。ゾマがシェイドの消えた地面を警戒しながら、俺の方に来た。
「意識はある」
リアンが地面に横たわったまま答えた。声が弱かった。
「動けるか」
「少し待って」
俺はトリートメントを再度使った。範囲回復がリアンを包んだ。顔色が少し戻った。リアンが体を起こそうとして、腕を使った。ゆっくりと座り込んだ。重傷だが、回復できる範囲だ。
「バルド、怪我は」
「問題ない」
「ゾマ、地中の反応は」
「消えた。追跡できない」
ダリウスの落下地点に向かった。
倒れていた。動いていない。近づいて確認した。
死んでいた。
魔術師の体に、竜の爪の傷が複数ある。落下のダメージも加わっている。助かる状態ではなかった。
「宮廷魔術師を殺してしまったがどうする?」
バルドが言った。感情を排した、確認するだけの声だった。
「マーリンに話して正当防衛を主張する」
俺は言った。
「証拠はある。オーウェンから取った指示書がある。ダリウスが夜間に冒険者を襲った事実がある。証言できる者もいる」
「ギルドにも報告が必要ね」
リアンが座ったまま言った。
「明日の朝に動く。今夜は休む」
「装備は回収しましょう」
リアンが言った。
ダリウスの装備を確認した。魔術師の装備は高価なものが多い。杖、指輪、複数のスクロール。後で鑑定に出せばまとまった額になるはずだ。
翌朝、冒険者ギルドに報告した。
顛末を説明した。証拠の書類を提示した。ギルドの担当者が書類を確認して、しばらく考えてから言った。
「保留とさせてください」
「保留か」
「宮廷魔術師との対立は、ギルドとして正式な立場を取りにくい。ただし、証拠と状況証拠が揃っているため、冒険者への制裁は行わない方向で対応します」
実質的には問題にしないということだ。それで十分だった。
マーリンに接触した。
ダリウスが夜間に冒険者を襲撃して撃破されたという事実を報告した。正当防衛の援護を依頼した。
「無理のない範囲で対応する」
マーリンが言った。
「ダリウスはオーウェン・クレストに圧力をかけて政策を誘導していた。その証拠を掴んだ冒険者を抹殺しようとして、返り討ちにあった、という形で処理する。内部不正の粛清を試みて失敗した、という見解でいい」
「助かります」
「こちらとしても、ダリウスの失脚は望ましい結果だ。話は合う」
政治的な決着がついた。
郊外に戻って、全員のステータスを確認した。
数字を見て、俺は少し驚いた。
俺の加護魔法がレベル29からレベル36に上がっていた。ポケットが30+1から37+1になった。地域知識がレベル5からレベル12へ大幅に上昇していた。善行ポイントが15.90から30.90になっていた。15ポイントの増加だ。
「今までで最大の成長だな」
サークも確認していた。
「炎魔法がレベル27からレベル36になりました。地魔法がレベル7からレベル9、光魔法がレベル19からレベル20へ。ポケットが28+1から34+1です。善行ポイントが5.66から20.66になっています」
「ニアはどうだ」
「風魔法がレベル15からレベル19、光魔法がレベル9からレベル12になったで。近接戦闘がレベル13からレベル22に跳ね上がった。善行ポイントが9.15から24.15になっとる」
「ニアの近接戦闘が大きいな」
「ダリウスを仕留めたからやろ」
ニアが言った。誇らしそうではなく、ただ事実として言った。それがかえって良かった。
「問題がある」
俺は言った。
「何ですか」
「俺の加護魔法レベルとサークの炎魔法レベルが、上限に達した。ランクの上限を超えた経験はカットされていた可能性がある」
「どういうことですか」
「ランクが才能の上限を決める。レベルがそこに達すると、それ以上は上がらない。もっと経験値が入っていたはずなのに、上限で止まっていたかもしれない」
「ランクを上げないといけない、ということですね」
「そうだ。今すぐやる」
善行ポイントを使った。
加護魔法のランクを上げた。36から40レベルまで、1.6ポイント×4で6.4ポイント。40から49レベルまで、2.5ポイント×9で22.5ポイント。合計28.9ポイントで、7レベル魔法の解禁ラインである49レベルまで上げた。
善行ポイントが30.90から2.00になった。ほぼ使い切った。
「サーク、お前も上げろ」
「炎魔法を上げます。36から40まで、0.8ポイント×4で3.2ポイント。40から49まで、1.2ポイント×9で10.8ポイント。合計14ポイントです」
「属性魔法はコスパがいいな」
「加護魔法の半分のポイントで同じランクまで上げられます。2系統を同時に上げれば、総コストは変わりませんが」
サークが善行ポイントを使った。20.66から14ポイントを引いて、6.66が残った。
「炎魔法のランクが49になりました」
「俺も同じラインに届いた。これで7レベル魔法が見えてくる」
「最大の敵の一角は倒した」
俺は言った。
「しかしシェイドは逃げた」
バルドが言った。
「次に来る時、シェイドは単独で来るかもしれない。ダリウスがいなくなった分、別の手を使ってくる可能性がある」
「今日は休む。全員疲弊している。明日から次の手を考える」
ニアが大きく欠伸をした。サークが地面に座った。リアンがまだ体に痛みがあるようで、ゆっくりと横になった。
王都の輪郭が、昼の光の中に見えていた。
メモ
タカオ
加護魔法 ランク49 レベル36
ポケット 37+1
習得魔法
レベル1:ヒーリング・ブレス・エイド・ディテクトマジック
レベル2:ヒーリングプラス・ストレングス・ウィーク・マジカルガード・センスエネミー
レベル3:リジェネレーション・キュアディジーズ・ヘイスト・ディスペルマジック・キャンセレーション・エレメンタルガード・ウォーターブリーズ
レベル4:キュアポイズン・センスライ・クリエイトスクロール・フィッシュムーブ
レベル5:レイズデッド・トリートメント・リムーブカース・リセット
各種知識 ランク16
魔物知識 レベル7
植物知識 レベル8
地域知識 レベル12
水泳 レベル4
善行ポイント 2.00
スクロール:エイド
サーク
属性魔法(炎) ランク49 レベル36
属性魔法(地) ランク25 レベル9
属性魔法(光) ランク30 レベル20
ポケット 34+1
習得魔法
レベル1:スリープ・ファイアボルト・サンダー・ライト・ディテクトマジック・バークスキン
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・ホーリーウェポン・ホーリーライト・フレイムボディー・ストーンサーバント
レベル3:サモンエレメンタルⅡ・ライトニング・マジックファング・シャインフラッシュ・ホーリースフィア・ファイアーボール・ミラージュフレイム・シャインヒール
レベル4:サモンエレメンタルⅢ・セーブライフ・バーニングストライク・スタンスローター
レベル5:サモンエレメンタルⅣ・ファイアイミュニティー・サプレスエレメンタル・フレアボム・コータリゼイション
近接戦闘 ランク9 レベル7
鋭敏感覚 レベル14
気配感知 レベル10
水泳 レベル4
善行ポイント 6.66
ニア
属性魔法(風) ランク25 レベル19
属性魔法(光) ランク63 レベル12
ポケット 16
習得魔法
レベル1:サンダー.ウィンドショット・スリープ・ライト・ディテクトマジック
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・インパルス・ウィンドトーク
レベル3:スカイウイング・ガストウィンド・シャインフラッシュ・シャインヒール・マジックファング
近接戦闘 ランク45 レベル22
電撃ブレス レベル11
危険感知 レベル12
気配感知 レベル13
視認 レベル16
水泳 レベル1
善行ポイント 24.15




