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第68話 迎撃戦(前半)

 夜が来た。

 焚き火を小さくして、全員が警戒状態で待っていた。ニアが上空を旋回しながら周囲を確認していた。ゾマが地面に伏せて気配を探っていた。

「来たで。今度は4人や」

 ニアの声が降りてきた。

「空からか」

「そうや。ダリウスと手下が3人。昨日より多い」

「予定通り準備を」

 バルドが言った。

 動き出した。


 俺はマジカルガードを全員に順番にかけた。ニア、サーク、バルド、リアン、ゾマ、自分の順番で6回。魔法ダメージが軽減される状態を全員に展開した。

 ニアがマジックファングを自分にかけた。爪と牙が淡く光った。戦闘前に自分でかけておける強化魔法だ。

 サークがフレイムボディーをバルドにかけた。バルドの体に炎が纏わりついた。接触した相手に継続ダメージを与える。

 ゾマがスカイウィングをバルドにかけた。バルドが地面を離れて浮いた。

 俺がストレングスをニアにかけた。ニアの体が一回り大きく見えた。力が増している。

「ゾマ、地中の確認を」

「する」

 ゾマがディテクトマジックを発動した。地面に向けて魔力を広げた。

「地中に反応なし……」

 少しして、ゾマが首を傾けた。

「ただ、変な反応がある」

「何が」

「タカオ達4人に、強い魔力の反応がある。僕とニアにはない」

「今は無視しろ。敵が来る」

 俺は言った。気になったが、今は目の前のことが先だ。


 敵が降下してきた。

 ダリウスが中央に着地した。昨日と同じ顔で、感情を見せない。左右と後ろに手下が3人散開した。昨日より1人多い。

「始めるぞ」

 俺は言った。

「サンダー」

 ニアが弱い雷魔法を放った。ダリウスに向かって飛んだ。光が弾かれた。反射された。

「サンダー」

 リアンが続けて撃った。同じく反射された。

「ウィンドショット」

 ゾマが風の刃を放った。

 今度は反射されなかった。ダリウスの体に当たった。

「反射されなかったよ」

 ゾマが言った。

「スペルターニングが切れた。本命を入れろ」

 サークが炎の精霊を召喚した。手下3人の方向に走らせた。


 手下1と手下2が前進してきた。近接の間合いを作ろうとしている。手下3が後退しながら俺にライトニングを放ってきた。

 体に当たった。マジカルガードが魔法ダメージを吸収した。通常より遥かに軽い。

「マジカルガードで耐えられる」

 俺は言いながら体勢を立て直した。

 バルドが手下1に突撃した。剣と斧がぶつかった。フレイムボディーが手下1に触れるたびに炎ダメージが入っていた。


「パワーワードスタン」

 ダリウスが俺を見て言った。

 体が止まった。昨日と同じ感覚だ。動けない。

「コータリゼイション」

 サークがすかさず使った。

 体が動いた。

 今回は止まっていたのが数秒だった。前回とは違う。対策が機能した。

「効いた」

 俺は立ち直りながら言った。

 リアンがバーニングストライクをダリウスに向けて放った。炎がダリウスに命中した。

「効いたわ」

 リアンが言った。

 ダリウスが魔法を使おうとして、止まった。継続炎ダメージが入りながら、魔力魔法の使用が封じられている。ダリウスの表情が初めて崩れた。


 手下3がミラーイメージを発動した。その場に分身が複数現れた。

「ゾマ」

「わかった。トルネード」

 ゾマの風の竜巻が分身群に向かった。複数の像が1気に消えた。本体にもダメージが入った。

 バルドと手下1の斬り合いが続いていた。互角だったが、フレイムボディーの継続ダメージが蓄積していた。手下1の動きが少し鈍くなっていた。

 手下2がバルドに向かってディスペルマジックを使った。バルドのフレイムボディーが解除された。炎が消えた。

「俺が返す」

 俺は手下2にディスペルマジックをかけた。何かが剥がれた感触があった。バフが削れた可能性がある。確認はできないが、無駄ではないはずだ。

 ニアがダリウスに向かって接近した。ストレングスで強化された体が、地面を蹴った。


「早く解除してくれ」

 ダリウスが手下2に向かって言った。

 バーニングストライクの効果が続いている。魔法が使えない状態で、ニアが迫ってきている。ダリウスが動いた。ニアの突進を横に避けようとした。

 完全には避けきれなかった。ニアの爪がダリウスの体をかすった。マジックファングで強化された爪だ。大きなダメージが入った。

 サークが手下3にバーニングストライクを放った。命中した。手下3も魔法が使えない状態になった。炎の精霊が手下3を一方的に攻撃し続けた。

「勝ち筋が見えてきた」

 俺は言いかけた。


 リアンが悲鳴を上げた。

 後ろから何かが飛んできた。リアンの体を貫いた。血が出た。リアンが前につんのめって、膝をついた。

 俺は振り返った。

 いた。

 人影が1つ、後方に立っていた。昨日の夜に現れなかった存在だ。地面から出てきたのか、気配がなかった。医師を殺したのと同じ動き方だった。影のような奴(シェイド)だ。

「リアン!」

 ゾマが即座に動いた。風の精霊を召喚して、その人影の前に出た。シェイドの動きを抑えるために立ちふさがった。

 俺はトリートメントをリアンに向けて発動した。範囲回復が届いた。リアンの顔色が少し戻った。体を起こそうとしていたが、立てる状態ではなかった。

「意識はあるか」

「……ある。でも動けない」


 戦場が分断されていた。

 バルドが手下1と斬り合いを続けていた。ニアがダリウスと手下2に挟まれる形になっていた。手下3は無力化状態が続いていた。シェイドがゾマと対峙していた。

 稼働できるのは俺、サーク、ゾマだ。

 状況を整理した。

 ダリウスはバーニングストライクで魔法が封じられているが、手下2が解除しようとしている。解除されれば、またメテオストライクが来る。シェイドはゾマが抑えているが、精霊1体で止め続けられるかわからない。

「ダリウスを落とすか、シェイドを止めるか」

 俺は言った。

 どちらかを選ばなければいけない。両方を同時に対処するには手が足りない。

 サークが俺を見た。ゾマが精霊でシェイドを押さえながら、こちらを見た。

 答えを出さなければいけない。時間がなかった。


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