第66話 夜襲と格上の証明
「全員起きろ」
俺の声で、全員が動いた。
バルドが即座に立ち上がった。リアンが魔力を確認するように手を開いた。サークが4本足で立って、東の方向を向いた。
「どこだ、ニア」
「東から来とる。速い。空や」
空から来る。俺は上を見た。夜空に、何かが動いていた。
3つの影が降下してきた。
中央の1人が着地した瞬間、俺は理解した。
ダリウス・ヴェルナーだった。
全員が魔術師の装いだ。ダリウスは俺たちを見て、特に感情を見せなかった。
格が違う、と直感した。
先手はダリウス側だった。
左の手下が腕を上げた。ライトニングが飛んできた。俺に向かって直線で来た。避ける間がなかった。
直撃した。
かなり痛いが、俺も成長している。まだまだ行ける。
その直後、ダリウスが短く何かを言った。
「パワーワードスタン」
体が止まった。完全に止まった。立ち上がろうとしても、体が言うことを聞かない。頭は動いている。ただし体が動かない。
「タカオ様!」
サークの声が聞こえた。俺は何も答えられなかった。
サークがバーニングストライクを放った。炎がダリウスに向かった。
反射された。
炎がそのままサークに返ってきた。サークが炎に包まれた。
「スペルターニング……魔法を反射する7レベル魔法だわ」
リアンが叫んだ。
ニアが電撃ブレスをダリウスに向けて放った。
効かなかった。ダリウスの体を電撃が包んで、そのまま消えた。
「雷の耐性を持っている」
リアンが言った。
光の精霊を召喚した。右の手下に向けて走らせた。ゾマがスカイウィングを使ってバルドを飛ばした。バルドがダリウスに向かって空中を移動し始めた。
左の手下がファイアーボールを撃った。着地点が悪かった。全員に範囲ダメージが入った。俺は動けないまま、炎の余波を受けた。
お互い初手が終わった。俺はまだ動けない。状況を見守る事しかできない。押されていた。
ダリウスがディスペルマジックを使った。
バルドに向けてだった。スカイウィングの効果が消えた。バルドが落下した。
「バルド!」
ゾマが急降下して、バルドを掴んで引き上げた。地面スレスレで止めた。
サークが炎の精霊を召喚した。左の手下に向けて飛んで行った。手下がアイスストームで迎撃した。精霊と氷がぶつかって、互いに消えた。右の手下がダークブラストを使った。リアンの光の精霊が消えた。
精霊同士の削り合いが続いていた。
ニアがダリウスに突撃した。巨体で直接当たりに行く形だ。ダリウスが横に動いた。ニアの突進がかすった。
リアンがバーニングストライクを右の手下に向けて放った。継続炎ダメージが入って、魔法の使用が封じられた。手下が苦悶の声を上げた。
まだ互角に届いていない。俺はまだ動けなかった。
ダリウスが何かを発動した。
その瞬間、ダリウスの姿が増えた。同じ姿をした像が複数、その場に並んで立った。ミラーイメージだ。どれが本物かわからない。
ニアが1体に突撃した。その像が消えた。分身だった。
「本物はどれや」
ニアが上から確認しようとしたが、夜で判断しにくい。リアンがファイアーボールを右の手下に向けて続けた。削り続けている。バルドが左の手下に接近を始めた。サークがファイアーボールを左の手下に向けて放った。
ゾマがダリウスの分身群に向かって動いた。
俺の麻痺がわずかに薄れてきた。指先が動いた。
ダリウスが腕を上げた。
上空に光が集まった。複数の光点が収束して、巨大な塊になった。
メテオストライク。
それが落ちてきた。
俺の周辺に直撃した。意識が飛ぶ前の一瞬、周囲が白くなるのが見えた。
気がついた時、俺は地面に横たわっていた。
リアンのシャインヒールで気が付いたようだ。
体が重い。全身に痛みが走っていた。頭の中で音が鳴っている。
サークも倒れていた。全員に大きなダメージが入っていた。
バルドに聞くと、ダリウスは撤退したようだ。
「死者はいないか」
俺は体を起こしながら言った。
「全員生きてる」
バルドが確認した。
「回復できる範囲だ」
リアンだけでは全快まで行かない。今度は俺が全員に回復魔法をかけていった。
「町に入ればいつでも襲われる」
俺は言った。
「昼間の町中では難しいのでは」
リアンが言った。
「人目がある。証人がいる状況ではさすがに動けない」
「だが、次は戦力を増やしてくる」
バルドが言った。
「そうだな。今夜は想定以上に粘られたから退いた。次は本気で潰しに来る」
全員が黙った。それが全員の認識だった。
夜明け前に、全員のステータスを確認した。
格上との戦闘で、経験値の入り方が普段と違った。倒していなくても、各自のスキルが上がっていた。
サークの炎魔法がレベル27になっていた。
「5レベル魔法が使えるようになりましたね」
「ああ。予定通りの魔法を取るぞ」
昼間、冒険者ギルドで動いた。ギルドの中なら、さすがにダリウスも手出しできない。リアンと折半で360ゴールドを使った。
サークがサモンエレメンタルⅣ、ファイアイミュニティー、サプレスエレメンタル、フレアボム、コータリゼイションを習得した。
対策会議を開いた。
ダリウスの手段を全員で整理した。
「スペルターニングは1回か2回しか反射できないはずよ。弱い魔法を先にぶつけて消費させれば、その後に本命を通せる」
リアンが言った。
「パワーワードスタンは確定で拘束してくるようだ。コータリゼイションで回復できるようになった。次は即座に対処できる」
サークが言った。
「メテオストライクは範囲攻撃だ。マジカルガードで軽減しながら、全員が密集しないように分散する」
俺は言った。
「ミラーイメージは範囲攻撃で分身をまとめて消すしかないわ。どれが本物かを探す必要がなくなる。ファイアーボールのような範囲の広い攻撃魔法で対処するのがいいわ」
リアンが言った。
「49レベル以上の魔術師は確実だな」
バルドが言った。
「格が違うのは事実だ。ただし、今夜の戦いで対策が立てられた。正面からぶつかっても消耗するだけだ。別の方法を考える必要がある」
「別の敵も来る可能性がある」
バルドが言った。
「そうだな」
「シルバムの北の森で医師を始末した者がいる。地中を移動して、奇襲をかけてきた。今回のダリウスとは別に、そういう手段を持つ者がいる可能性がある。夜間の地中奇襲にも警戒が必要だ」
「同時に来たら」
「最悪の想定だ。ただし備えておくしかない」
夜が明けていた。王都の輪郭が、朝の光の中に浮かんでいた。
複合戦になる可能性がある。空からのダリウスと、地中からの別の何かが同時に動いてくれば、対処しなければならない方向が増える。
俺は頭の中で次の手を考え始めた。まだ答えは出ていなかった。
メモ(本文に記載分のみ反映)
タカオ
加護魔法 ランク36 レベル28
ポケット 29+1
習得魔法
レベル1:ヒーリング・ブレス・エイド・ディテクトマジック
レベル2:ヒーリングプラス・ストレングス・ウィーク・マジカルガード・センスエネミー
レベル3:リジェネレーション・キュアディジーズ・ヘイスト・ディスペルマジック・キャンセレーション・エレメンタルガード・ウォーターブリーズ
レベル4:キュアポイズン・センスライ・クリエイトスクロール・フィッシュムーブ
レベル5:レイズデッド・トリートメント・リムーブカース・リセット
各種知識 ランク16
魔物知識 レベル7
植物知識 レベル8
地域知識 レベル5
水泳 レベル4
善行ポイント 15.90
スクロール:エイド
サーク
属性魔法(炎) ランク36 レベル27
属性魔法(地) ランク25 レベル7
属性魔法(光) ランク30 レベル19
ポケット 28+1
習得魔法
レベル1:スリープ・ファイアボルト・サンダー・ライト・ディテクトマジック・バークスキン
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・ホーリーウェポン・ホーリーライト・フレイムボディー・ストーンサーバント
レベル3:サモンエレメンタルⅡ・ライトニング・マジックファング・シャインフラッシュ・ホーリースフィア・ファイアーボール・ミラージュフレイム・シャインヒール
レベル4:サモンエレメンタルⅢ・セーブライフ・バーニングストライク・スタンスローター
レベル5:サモンエレメンタルⅣ・ファイアイミュニティー・サプレスエレメンタル・フレアボム・コータリゼイション
近接戦闘 ランク9 レベル7
鋭敏感覚 レベル14
気配感知 レベル10
水泳 レベル4
善行ポイント 5.66
ニア
属性魔法(風) ランク25 レベル15
属性魔法(光) ランク63 レベル9
ポケット 13
習得魔法
レベル1:サンダー.ウィンドショット・スリープ・ライト・ディテクトマジック
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・インパルス・ウィンドトーク
レベル3:スカイウイング・ガストウィンド・シャインフラッシュ・シャインヒール・マジックファング
近接戦闘 ランク45 レベル13
電撃ブレス レベル11
危険感知 レベル12
気配感知 レベル13
視認 レベル16
水泳 レベル1
善行ポイント 9.15




