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第57話 市場の歪み(前編)

 ウィンストン男爵の館の庭で、3人で能力の確認をした。

 前回の依頼から戻って、まず数字を整理する。それが習慣になっていた。

 俺の加護魔法がレベル25からレベル26に上がっていた。ポケットが26+1から27+1になった。植物知識がレベル6からレベル8へ。今回の依頼でアンセリカを探し回り、代替薬草を調べた経験が効いたのだと思う。地域知識もレベル4からレベル5になった。

 善行ポイントは8.40から10.40に増えていた。2ポイントの増加だ。

 サークの地魔法がレベル6からレベル7に。気配感知がレベル9からレベル10になった。善行ポイントが4.96から6.96へ。

 ニアは風魔法がレベル14からレベル15、気配感知がレベル12からレベル13、視認がレベル15からレベル16になっていた。善行ポイントが6.65から8.65へ。

「レベルはともかく、善行ポイントがかなり増えてますね」

 サークが言った。

「薬草を奪わなかったことと、最後まで解決したからだろう」

 俺は答えた。

 あの絶壁で、ニアが「今なら取れる」と言った。サークが規約違反だと言った。俺が止めた。その判断が、ポイントに反映されている。善行ポイントは行動の結果だけでなく、選択の質も見ている気がした。

「ええことしたってことやな」

 ニアが言った。

 単純な言い方だったが、それで合っていると思った。


 翌日、ギルドで依頼を確認していると、後ろから声をかけられた。

「こちらにいると聞いてね」

 ハミルトンだった。娘が回復してから、顔色が戻っていた。隈も薄くなっている。

「ウィンストン男爵の屋敷にいることもありますが、依頼はここで確認していますね」

「ニアが町に入れないから、か」

「そうです」

 ハミルトンが少し考えてから言った。

「実は、また頼みたいことがある」

「聞きます」


「最近、薬草の価格が異常なんだ」

 ハミルトンが言った。

 ギルドの端の席に移動して、話を聞いた。

「薬草というのは、普通の解熱薬に使うようなものも含めてか」

「そうだ。高価な希少薬草だけじゃない。どこにでもある薬草まで値段が上がっている。在庫が急に消えて、補充できない状態が続いている」

 サークが口を開いた。

「確かに採取依頼が最近急に増えていますね。掲示板を見ていて感じていました」

「あなたたちもそう思うか」

「単純に需要が増えているなら、依頼が増えるのは自然です。ただ」

「ただ?」

「依頼の内容を見ていると、現地にないケースがあるんです。採取済みの痕跡があるのに、市場には出回らない。依頼を達成できない冒険者が増えているという話も聞きました」

 俺はそれを聞いて、少し前のことを思い出した。アンセリカを探した時、先客がいた。高額の急な依頼を受けていた、と向こうが言っていた。

「ハミルトンさん、本来なら供給が増えれば価格は下がるはずですよね」

「そうだ。採取依頼が増えているということは、誰かが集めているはずだ。集まっているなら市場に出るはずだが、出てこない」

「……不自然だな」

 俺は言った。

 整理すると、こういうことになる。誰かが先に薬草を刈り取っている。採取依頼をこなしても現地に何もない状態を作り出している。市場には流さずに抱えている。結果として供給が減り、価格が上がる。

「誰かが"先に刈り取っている"」

 俺は言った。

 目的は価格操作か、あるいは別の何かか。今の時点ではわからない。ただ、意図がある動きだということは見えた。


「だから、頼みたいことがある」

 ハミルトンが続けた。

「うちで扱っている薬草を、まとまった量取ってきてほしい。通常の取引では1000個で10ゴールドだが、今回は5000個をお願いしたい。倍の報酬で100ゴールドを出す」

「5000個か」

「市場が足りていない今なら、高く売れる。供給が戻れば価格は落ち着く。市場が正常に戻ったら、さらに礼をする」

 俺はサークを見た。サークが頷いた。

「併せて、乱獲者も見つけましょう」

 サークが言った。

「供給回復と原因調査を同時にやる、ということだな」

「はい」

「わかった。受けます」


 ニアの飛行力を使って、遠方に向かった。

 町の周辺では採取できない状態になっている可能性がある。ただし、人の来ない場所まで足を伸ばせれば、話は変わる。どこにでも生えるような薬草でも、遠くまで行けば手付かずのままのはずだ。

 ニアに2人分の荷物を乗せて、通常の採取では行けない距離まで飛んだ。山の向こう、海沿いの崖下、深い森の縁。それぞれ別の日に分けて2日間かけて動いた。

 大量に見つかった。

 人の手が入っていない場所は、薬草が普通に育っていた。俺が植物知識を使いながら採取をして、サークに詰め込んでもらう。ニアには周辺で他にないか探して貰った。ニアは視認がレベル16あるので、俺には見えにくい場所でも見つけてくる。

「こんなにあったんや」

 ニアが袋を満たしながら言った。

「遠いだけで普通にある。それが今の状況の本質だ」

「近くのを先に取られとる、ってことやな」

「そういうことだ」

 2日で5000個以上を確保した。袋に詰めると、かなりの量になった。


 ハミルトンに納品した。

「これだけ……!」

 ハミルトンが量を見て目を見開いた。

「100ゴールド、確かに」

「市場への供給をお願いします」

「わかった。すぐに動く」

 ハミルトンは仕入れた薬草を高騰していた価格よりかなり低く設定した。それでも通常より上なので、十分な利益が出る。

 翌日、市場を確認すると、変化があった。

「一般薬草の価格が落ち着き始めていますね」

 サークが掲示板の依頼票を見ながら言った。昨日まで高額で出ていた薬草の採取依頼が、いくつか取り下げられていた。

「これで、乱獲者の企みが潰れるといいのですが」

「それは、今後の状況を見ないとわからないな」

 俺は言った。

 一時的な供給回復だ。ハミルトンが持ち込んだ量がはけた後、また同じことが起きる可能性がある。誰かが意図的にやっているなら、こちらが一度対処しただけでは終わらない。

 ただ、今日できることはした。

 次に同じことが起きた時、もう少し早く動けるかもしれない。そのための情報が今回で手に入った。それで十分だと思った。


メモ


タカオ

加護魔法 ランク36 レベル26

ポケット 27+1

習得魔法

 レベル1:ヒーリング・ブレス・エイド・ディテクトマジック

 レベル2:ヒーリングプラス・ストレングス・ウィーク・マジカルガード・センスエネミー

 レベル3:リジェネレーション・キュアディジーズ・ヘイスト・ディスペルマジック・キャンセレーション・エレメンタルガード・ウォーターブリーズ

 レベル4:キュアポイズン・センスライ・クリエイトスクロール・フィッシュムーブ

 レベル5:レイズデッド・トリートメント・リムーブカース・リセット

各種知識 ランク16

魔物知識 レベル7

植物知識 レベル8

地域知識 レベル5

水泳   レベル4

善行ポイント 10.40

スクロール:エイド


サーク

属性魔法(炎) ランク25 レベル18

属性魔法(地) ランク25 レベル7

属性魔法(光) ランク30 レベル19

ポケット 23+1

習得魔法

 レベル1:スリープ・ファイアボルト・サンダー・ライト・ディテクトマジック・バークスキン

 レベル2:サモンエレメンタルⅠ・ホーリーウェポン・ホーリーライト・フレイムボディー・ストーンサーバント

 レベル3:サモンエレメンタルⅡ・ライトニング・マジックファング・シャインフラッシュ・ホーリースフィア・ファイアーボール・ミラージュフレイム・シャインヒール

 レベル4:サモンエレメンタルⅢ・セーブライフ・バーニングストライク・スタンスローター

近接戦闘 ランク9 レベル5

鋭敏感覚 レベル9

気配感知 レベル10

水泳   レベル4

善行ポイント 6.96


ニア

属性魔法(風) ランク25 レベル15

属性魔法(光) ランク63 レベル9

ポケット 13

習得魔法

 レベル1:サンダー.ウィンドショット・スリープ・ライト・ディテクトマジック

 レベル2:サモンエレメンタルⅠ・インパルス・ウィンドトーク

 レベル3:スカイウイング・ガストウィンド・シャインフラッシュ・シャインヒール・マジックファング

近接戦闘 ランク45 レベル13

電撃ブレス レベル11

危険感知 レベル12

気配感知 レベル13

視認   レベル16

水泳   レベル1

善行ポイント 8.65


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