第55話 解禁と再分配
荒野からハイルセンへ戻ったのは夕方だった。
被害はなかった。サークが炎魔法を中心に使い、俺とニアがそれを支えた。群れを相手にした駆除依頼として、これ以上ない形で終わったと思う。
ギルドで報告を終えると、報酬が出た。
「100ゴールドか」
受け取りながら言った。所持金が1286ゴールドから1386ゴールドになった。
「……いい稼ぎだな」
被害なし、消耗最小限、報酬100ゴールド。文句のない結果だった。
宿に戻って、成長の確認をした。
まず自分から見た。
加護魔法がレベル24からレベル25に上がっていた。ポケットが25+1から26+1になった。魔物知識がレベル6からレベル7、地域知識がレベル3からレベル4になっていた。
善行ポイントが8.35から8.40に増えていた。わずかだが、確実に入っていた。
数を倒せば、それなりに経験は入る。善行ポイントもしっかり入っている。
そしてレベル25。これで5レベルの魔法が使えるようになった。
「サーク、確認してくれ」
「はい」
サークがステータスを確認した。しばらくして顔を上げた。
「……炎が、レベル18になっています」
俺は少し驚いた。
「一気に上がったな」
「ファイアーボールを連発しましたからね。連続使用で経験値の積み上がりが早かったのだと思います」
炎がレベル13からレベル18へ。5レベル一度に上がった。地魔法もレベル5からレベル6に伸びていた。光はレベル19のまま変化なし。ポケットが20+1から23+1に増えていた。
「善行ポイントはどうだ」
「4.86から4.96になっています」
「サークの方が上がっているな」
俺のポイントは0.05の増加だったが、サークは0.10の増加だ。
「今回は活躍させていただきましたので、その影響ではないでしょうか」
サークが静かに言った。
なるほど、と思った。善行ポイントの動きは行動の内容に連動している部分がある。サークが主体的に戦闘を担って、群れを処理したことが評価されたのかもしれない。
「ニアはどうだ」
「見てええか」
ニアが自分で確認した。
「光がレベル8から9になっとる。近接がレベル10から13になった。視認もレベル14から15や」
「光が3レベルに届いたな」
「ほんまや」
「……じゃあ順番に、新魔法を検討するぞ」
俺は3人を見渡して言った。
全員がレベルアップで新しい魔法の解禁ラインに到達していた。ここで方針を決めておかないと、いざという時に手が足りなくなる。
まず俺の加護魔法5レベルから始めた。
「レイズデッド」
俺は最初に言った。
「……これは必須だ」
24時間以内なら死者を蘇生できる。時間が経つほど成功率が下がる。ニアとバルドが死んだ時に、スクロールに頼らざるを得なかった。あの状況を繰り返さないために、自分で使えるようになる意味がある。即決だった。
「トリートメントも取る」
「どんな魔法ですか」
「範囲回復だ。味方全員に同時にかけられる。回復量はヒーリングの約4倍になる」
「乱戦で全員が傷ついている状況に対応できますね」
「そうだ。今まで1人ずつかけていたのが、1回で済む。大きな違いだ」
リムーブカースも取ることにした。呪いや強制効果を解除する魔法だ。常にポケットに入れておくのは圧迫になるが、スクロールにしておけば持ち歩ける。使わないで済めばそれでいい。保険として持っておく価値がある。
「リセットも取る」
「なんや、それは」
ニアが聞いた。
「ポケットに入れている未使用魔法を全部入れ替える魔法だ。戦闘前の準備を間違えた時に、一度リセットしてやり直せる」
「それはありがたいですね」
サークが言った。
「状況ミスのリカバリーができるのは大きい。こちらもスクロール前提だ」
「他にも候補はあるが、今回はこの4つに絞る」
支援と保険に特化した構成だ。戦闘での直接的な火力はサークとリアンに任せる。俺はパーティーが動き続けられる状態を維持することに集中する。
「サーク、炎4レベルだな」
「はい。選んでいました」
サークが答えた。
「まずバーニングストライク」
「どんな効果だ」
「炎ダメージを継続して与えます。加えて、効果中は対象の魔力魔法の使用を封じます」
「対魔法使いに刺さるな」
「格上の相手にも通る可能性があります。相手のレベルが高くても、魔法封じ自体は有効なので」
条件付きで強力な魔法だ。直接ダメージより、封じることで戦況を変える使い方ができる。
「スタンスローターも取りたいです」
「範囲麻痺か」
「はい。数が多い相手に対して有効です。今回みたいな群れの駆除でも使えましたし、雑魚戦の安定化に使えます」
「採用だ。どちらも取れ」
2つとも、リアンから習得できるとわかっていた。リアンは自分では使わなくても、魔法の知識として持っている場合がある。
「リアン、使わなくても知ってるのか」
俺は後で確認することを考えながら言った。
「収集癖ですから」
サークが静かに言った。
確かにそうだ。魔法収集が趣味だと最初に自己紹介していた。知識として持っているなら、伝授費用を払えば習得できる。
「ニア、光3レベルだ」
「何を取ればええんや」
「サークから全部教えてもらう。シャインフラッシュ、シャインヒール、マジックファングの3つだ」
「全部サークはんのやつやん」
ニアが言った。確かにサークが現在使っている魔法と重なる。
「サークは炎メインになる。光はニアが引き継ぐ形で使っていく」
「そやから、わいが覚えるんか」
「最終的に光はニアが伸ばせ。光属性の才能ランクは63ある。時間をかければ、いずれサークやリアンを超える」
ニアが少し黙った。
「……わかったで」
いつもより真剣な声だった。
「コストを確認する」
俺は計算した。レイズデッド160ゴールド、トリートメント160ゴールド、リムーブカース160ゴールド、リセット160ゴールドで合計640ゴールド。サークの2つがリアン経由でそれぞれ40ゴールド、合計80ゴールド。
「合計730ゴールドか」
「……1気に減ったな」
1386ゴールドから730ゴールドを引いて、656ゴールドになった。先日からの大きな投資が続いて、所持金がかなり減っていた。
「また稼がなあかんな」
ニアが言った。
「ですが、その分戦力は上がりました」
サークが言った。
その通りだ。金は使えば減るが、能力は残る。今回の投資が次の戦闘で活きるかどうかは、使ってみないとわからない部分もある。ただ、準備をしておかないよりは確実にいい。
「……次は、もう少し難易度を上げてもいいな」
俺は言った。
加護魔法が5レベルに届いた。サークの炎が大幅に伸びた。ニアの光が3レベルに入った。それぞれが次の段階に進んでいる。
今の状態で、これまでの依頼をこなし続けるのはもったいない。もう少し難しい案件に挑んで、実践での確認をした方がいい。
窓の外が暗くなっていた。ハイルセンの灯りが、通りに点り始めている。
明日、掲示板を確認しよう。今の戦力で挑める依頼が、どこかにあるはずだ。
メモ
タカオ
加護魔法 ランク36 レベル25
ポケット 26+1
習得魔法
レベル1:ヒーリング・ブレス・エイド・ディテクトマジック
レベル2:ヒーリングプラス・ストレングス・ウィーク・マジカルガード・センスエネミー
レベル3:リジェネレーション・キュアディジーズ・ヘイスト・ディスペルマジック・キャンセレーション・エレメンタルガード・ウォーターブリーズ
レベル4:キュアポイズン・センスライ・クリエイトスクロール・フィッシュムーブ
レベル5:レイズデッド・トリートメント・リムーブカース・リセット
各種知識 ランク16
魔物知識 レベル7
植物知識 レベル6
地域知識 レベル4
水泳 レベル4
善行ポイント 8.40
スクロール:エイド
サーク
属性魔法(炎) ランク25 レベル18
属性魔法(地) ランク25 レベル6
属性魔法(光) ランク30 レベル19
ポケット 23+1
習得魔法
レベル1:スリープ・ファイアボルト・サンダー・ライト・ディテクトマジック・バークスキン
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・ホーリーウェポン・ホーリーライト・フレイムボディー・ストーンサーバント
レベル3:サモンエレメンタルⅡ・ライトニング・マジックファング・シャインフラッシュ・ホーリースフィア・ファイアーボール・ミラージュフレイム・シャインヒール
レベル4:サモンエレメンタルⅢ・セーブライフ・バーニングストライク・スタンスローター
近接戦闘 ランク9 レベル5
鋭敏感覚 レベル9
気配感知 レベル9
水泳 レベル4
善行ポイント 4.96
ニア
属性魔法(風) ランク25 レベル14
属性魔法(光) ランク63 レベル9
ポケット 12
習得魔法
レベル1:サンダー.ウィンドショット・スリープ・ライト・ディテクトマジック
レベル2:サモンエレメンタルⅠ・インパルス・ウィンドトーク
レベル3:スカイウイング・ガストウィンド・シャインフラッシュ・シャインヒール・マジックファング
近接戦闘 ランク45 レベル13
電撃ブレス レベル11
危険感知 レベル12
気配感知 レベル12
視認 レベル14
水泳 レベル1
善行ポイント 6.60




