↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/107

第21話 成長の実感と新たな目的地

 宿に戻って、本を開いた。

 数字が変わっていた。

 加護魔法のレベルが11になっていた。前が9だったから、2段階上がっている。ポケットも10から12に増えた。魔力容量増加Ⅰで増やした1つと合わせて、合計13になっている。魔物知識もレベル4に上がっていた。

「思ったより上がったな」

 サークが本に触れた。少し間があってから言った。

「炎がレベル8になっています」

「3段階か」

「洞窟で炎の精霊を使ったのが効いたと思います。リアンさんに教わった通りでした」サークが続けた。「光はレベル10です。ポケットが10に増えました。近接戦闘がレベル5、鋭敏感覚がレベル7、気配感知がレベル5になっています」

 全体的に大きく上がっていた。

「格上の敵と戦うと、経験の質が違うな」

「術者に逃げられたとはいえ、あれだけの敵と連続して対峙しました。経験としては十分だったということだと思います」

 逃がした悔しさはある。でも成長として返ってきたことは事実だ。結果として無駄ではなかった。


 善行ポイントも確認した。

 俺:12.65。前が10.55だったから、2.1増えている。

「サークは?」

「7.38です。前が5.28でした」サークが言った。

 2.1の増加、同じ量だった。行方不明者の真相解明という成果が、大きく反映されたのだろう。

 報酬の分配も計算した。75ゴールドが入って、前の所持金と合わせると175ゴールドになっていた。

「少し余裕が出てきたな」

「次の習得に使えます」


 翌朝、ギルドへ向かった。

 今回の反省は明確だった。洞窟で術者が消えた時、透明化なのか転移なのか、俺自身で判断する手段がなかった。リアンがいたから確認できたが、それがなければ何もわからないままだった。

 ディテクトマジックを習得した。1レベル魔法なので費用は10ゴールドだ。

 それからサークにも聞いた。

「お前も習得するか」

「はい。俺の属性魔法でも取得できます」

 サークも加護魔法版ではなく、属性魔法共通版のディテクトマジックを習得した。

 習得しながら、1つ確認したことがあった。

 リアンから魔法を教わった時に気になっていた点だ。同じ名前の魔法でも、系統が違えば構造が違う。加護魔法のディテクトマジックと、属性魔法のディテクトマジックは別物だ。だから互いに教え合えない。

 ただし、属性魔法の中では「共通魔法」という概念がある。ディテクトマジックやサモンエレメンタルがそれに該当する。全属性で共通の構造を持つ魔法で、炎使いが光使いに教えることができる。

「整理できてよかった」俺は言った。「今後また誰かと組む時に使える知識だ」

 2人分の習得費用で20ゴールド。所持金が175から155ゴールドになった。


 それから数日が経った。

 山岳周辺での異変が、目に見えて減った。

 ゴブリンの出現数が落ちていた。依頼掲示板でも討伐報告が少なくなっていた。グルックからも「最近は街道が静かになった」という話を聞いた。

 ギルドの職員に確認すると、1つの見解を示してくれた。

「ゴブリンの増加は、アンデッドの影響で生息域が乱れていたためだと考えています。術者が撤退したことで、アンデッドの発生が止まり、ゴブリンも落ち着いてきたようです」

「敵が撤退した、ということか」

「可能性が高いと見ています。洞窟の件が発覚したことで、この地域での活動を一時中断した可能性があります」

 つまり、術者は逃げただけでなく、この地域から手を引いた。

 事件は沈静化した。でも解決したわけじゃない。黒幕には届いていない。目的もわからない。

 俺の中でくすぶるものがあったが、今すぐどうにかできる手段もなかった。


 バルドとリアンに声をかけられたのは、事件が落ち着いてから3日後だった。

 食堂で4人が向かい合って座った。

「提案がある」バルドが言った。

「なんでしょうか」

「王都に行かないか」

 俺は少し間を置いた。

「王都というのは、バークホルムのことか」

「そうだ」バルドが続けた。「この地域での事件は収束した。敵も撤退している。ここで待ち続けても、次の手がかりは出てこない可能性が高いと思う」

「大きな仕事や情報を求めるなら、場所を変える必要があります」リアンが補足した。「王都は情報が集まる場所ですし、今は特に人が集まる時期です」

「特別な時期というのは?」

「守護竜の選定が行われます」リアンが言った。

 守護竜、という言葉を初めて聞いた。


 リアンが説明してくれた。

 バークホルム王国には、建国王の相棒だったドラゴンが守護竜として代々存在してきた。単なる象徴ではなく、王国を実際に守護する役割を担ってきた存在だ。

 現在は2代目の守護竜がその役を担っているが、高齢になったため3代目を決める儀式が行われる。その選定の大会が500年ぶりに王都で開催される予定だという。

「500年ぶりか」俺は言った。

「王都には各地から人が集まる。情報も、仕事も、普段より密度が高くなる。それを利用しない手はないと思った」バルドが言った。

「守護竜を直接見られる機会でもあります」リアンが少し目を輝かせた。「魔法的な観点からも、非常に興味深い」

 サークが静かに俺を見た。


 俺は少し考えた。

 この地域での目的は、一旦達成した。山岳の行方不明者の件は解決扱いになった。術者は逃げたが、手がかりがこの地域に残っている保証もない。

 次の手がかりを求めるなら、情報が集まる場所に行くのが合理的だ。

 守護竜という存在に、率直に興味があった。この世界に来てから、ドラゴンとは出会っていない。ギルドで一度、小型のドラゴンを連れた冒険者を見かけたくらいだ。守護竜が何なのか、どんな存在なのか、自分の目で見てみたかった。

 サークに向いた。

「どう思う」

「行くべきだと思います」サークが言った。「術者の話が王都と繋がっているかどうかわかりませんけど、情報を集めるなら人の多い場所の方がいいと思います。」サークが少し間を置いた。「それに、俺も守護竜というものが、気になります」

「お前が気になるのか」

「はい。ドラゴンがどういう存在なのか、俺も知りたいです」

 珍しく素直な好奇心だった。俺は少し笑って、バルドとリアンを見た。

「王都に行こう」

 バルドが頷いた。リアンが嬉しそうに言った。

「よかった。一緒に行きましょう」


 翌日から準備を始めた。

 グルックに話した。

「王都に行くことにした」

「そうですか」グルックが少し寂しそうな顔をしてから、すぐに笑顔になった。「でも、そのくらいのレベルなら当然の選択ですよ。王都ならもっと大きな仕事があります」

「護衛を頼めなくなるが」

「大丈夫です。他に頼める人間を見つけます」グルックが言った。「ただ、またどこかで会うことがあれば、ぜひ声をかけてください」

「もちろんだ」

 グルックと握手をした。最初に出会った街道の場面を思い出した。あの時はまだサークとの距離感もぎこちなくて、剣の持ち方も不安定だった。ずいぶん遠くまで来た気がした。


 出発の前日の夜、俺は本を開いてステータスを確認した。

タカオ

加護魔法 ランク28 レベル11

ポケット 12+1

習得魔法

 レベル1:ヒーリング・ブレス・エイド・ディテクトマジック

 レベル2:ストレングス・ウィーク

 レベル3:リジェネレーション・ディスペルマジック・エレメンタルガード

各種知識 ランク16

魔物知識 レベル4

善行ポイント 12.65


サーク

属性魔法(炎) ランク19 レベル8

属性魔法(光) ランク25 レベル10

ポケット 10+1

習得魔法

 レベル1:スリープ・ファイアボルト・サンダー・ライト・ディテクトマジック

 レベル2:サモンエレメンタルⅠ・ホーリーウェポン・フレイムボディー

 レベル3:サモンエレメンタルⅡ・ライトニング・マジックファング・シャインフラッシュ・(ファイアーボール)

近接戦闘 ランク9 レベル5

鋭敏感覚 レベル7

気配感知 レベル5

善行ポイント 7.38


 出会った時、サークを選んだ時のことを思い出した。

 檻の中で縋るような目をしていたロックと重なって、放っておけなかった。

 今のサークは、あの時とは違う。体格も戦力も上がって、判断も速くなった。それでも根本は変わっていない。

 必死で、誠実で、正直だ。

 俺も変わっていた。棍棒一発で膝をついた頃から、リジェネレーションとディスペルマジックとエレメンタルガードを持つ後衛になった。

「サーク」

「はい」

「王都、どんな場所だと思う」

 サークが少し考えた。

「ハイルセンよりさらに大きいと聞いています。人も情報も、今まで見たことのない密度で集まっている場所でしょう」

「守護竜もいる」

「はい」サークが静かに言った。「ドラゴンです。どんな存在なのか、俺には想像がつきません」

「俺もだ」

 窓の外でアールストンの夜が静まっていた。

 ここに来たのは最初の夜だった。グルックの家に泊めてもらって、翌朝ハイルセンに向かった。遠い昔のような気がする。

 明日、この町を出る。

 バルドとリアン、サーク、それから俺。4人で王都を目指す。守護竜の選定が行われている王都で、散らばった点が線になるかもしれない。ならないかもしれない。

 でも行かない理由はなかった。

 俺は本を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。