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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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対策くらい済ませてあるんだよ


 年長の勇者は、敵勇者のなかでも最弱はず。

 魔王領と接する本拠地のメーリスフロンスではなく、版図の果てであるヴィキヌスに置かれたという時点で、主力とはされていない。

 さらにはアイツは、その十六名のなかでもさらに末席。

 となると、光の勇者ユエニスの資金石としてはもってこいだ。

 逆に、それさえあっさり倒せないのであれば、敵勇者への切り札とはならない。


「へへぇえ……。なんだい、その装備。他の連中と変わらないじゃないか」


 大剣だけは専用に用意したが、防具に関しては王国兵と同じ。

 だが、アフトギウム改をそこらの鋼鉄と同列にされては困るな。

 混合比の見直しからはじまり精錬純度の向上、鍛造方法の工夫、いろいろやったんだ。

 なにより——


「僕といっしょに成長した剣を、バカにするな!」


 ユエニスが叫ぶと同時に剣身は八色の光を帯びた。

 火、熱、水、冷、風、雷、木、土、本来なら打ち消し合うはずの四大主属性が、相反せず。

 彼の言ったとおり、ダンジョンにおいて常に彼の手にあり、破損のたび何度も何度も打ち直した大剣。世界に一本だけの量産品(・・・)だ。


「な、なんだよそれ! レガリスレクスの田舎者のくせに!」

「……君は口喧嘩をしたいの? その方が僕は平和でいいと思うけど」


 光の勇者ユエニスの無自覚煽り。

 年長勇者に会心の一撃。ぐぬぬッと唸る。

 さらに追撃。背後から、


「なにチンタラやってんだ!」

「ビビってるんじゃね」

「ザコが勿体つけるなよ」

「なっ。くたばるならさっさとくたばっちまえ」

「次、誰がいくか決めようぜ」


 敵勇者らの罵声が浴びせられた。


「待てって。こ、こんなヤツ余裕だっつうの! あんまり俺をみくびるなよ!」

「ァア?」

「……ご、ごめん。その、俺、頑張るから」


 年長勇者は仲間に強く言い返すも、一睨みで黙らされた。

 本当にトホホなシーンを見せられたわけだが、こんなのでも激戦地リーメスフロンスを生き抜いた勇者だ。侮れない。


「——お前のせいでぇえええッ‼︎」


 逆ギレからの長剣大振り。しかし遠目でも追えない速さで、瞬き一つのあいだに何度も。

 それらを光の勇者ユエニスは微動だにせず、切先のみで捌く。


「なっ⁉︎」


 年長勇者は往なされたことに驚いたのではない。


「風の魔剣ティルウィングが‼︎」


 ご大層な武器のようだが、一度の攻防でボロボロと刃こぼれ。これに目を剥いた。


「もうやめておこう。投降してくれたら、たぶん陛下も無体はしないよ。なんだったら僕からも口添えを——」

「ふ、ふふふ、ふっざけるなぁあああーッ‼︎ 〝消失光魔法(フォトンイレイザー)〟」


 光線が放たれた。おそらく、光と光の二属性。勇者のみが扱える魔法の最高位。

 それをユエニスは、


「ッ⁉︎ 魔法を弾いた、だと⁉︎」


 大剣を傾けて空へと逸らした。

 そして、瞬く間に駆け寄り——オレの目では瞬間移動——ひと声。


「君なら耐えられるよね」


 ナチュラル煽りな気遣いを告げ、ユエニスは掌底を腹に打ちつけた。

 息の漏れる音だけ残し、年長勇者はダンジョン入り口付近、大樹にめり込んだのだ。


 ……ヤバ。うちの勇者、強すぎッ!


「チッ。この役立たずが!」

「おい!」

「ああ。もう順番もクソもないな」

「全員でやるぞ」


 残る十五名の敵勇者は頭を切り替えた。光の勇者ユエニスを格下から格上へと。


「ユエニス、引け!」

「はい!」


 全員でくるのならこちらも全員でだ。


「——逃すかよ!」


 飛び出た敵勇者に、後衛からの魔法が殺到。


「クッソ!」

「バァカ、見とけ! ザコはこうやって一掃するだよ。〝消失光魔法(フォトンイレイザー)〟」


 再び光魔法が。こんどはオレらの陣へ向けて。

 だが——


「なんだと⁉︎」


 鋼鉄兵団の構える鏡の如く磨きあげられた盾が、光線を彼方へと逸らす。

 本来、非常に小さいはずの光圧が、物理法則のバグったこの世界では激しい。しかしそれさえ強化板バネ構造が吸収。ノックバックのみで済む。

 ふっふっふっ。こちらにも勇者がいる以上、光魔法の対策くらい済ませてあるんだよ。


「直接ブッた斬ればいいんだ!」

「そうだ。固まるな! 散れ!」


 ここまで予定どおりだと、カンニングしたみたいな後ろめたさがあるな。

 敵勇者はそれぞれが距離を取り、連携の心配がなくなる。そもそも不仲な連中にそんなものがあるのかも怪しいが。


 どちらにせよ、バラけてくれたらこっちのもの。


「光の戦士団、敵勇者を各個撃破! その他は光の戦士団を援護、ならびに敵勇者の足止めッ‼︎」

「「「応ッ‼︎」」」


 ペデモント将軍の指揮に呼応して、ユエニスを含む光の戦士団を全軍が補完する。

 鋼鉄兵団とドワーフ兵団が立ち位置を変え、行手を塞ぎ、傷つく光の戦士には神官団とローエルフ巫女が即座に治癒再生魔法を。

 分断した敵勇者の足は、


「「「迅雷魔法(サンダー)」」」


 単体攻撃に特化した魔法によって止める。

 雷と雷の二属性『大電撃魔法《ライトニングボルト》』を浴びせまくることで、痺れを与え、その場に留めた。

 さらにそこへ、魔法戦士団に内包されるグラベル兵団が石礫魔法で嫌がらせ。


 こうして敵勇者らは人によって築かれた袋小路に捕えられた。罠だらけ障害だらけ、まさに動く人間ダンジョンだ。


 そして——


「光の勇者ユエニスが、敵勇者の一人を討ち取ったぞ‼︎」


 残り十四名。


「クッソクソクソうざってぇ!」

「おい、ダンジョンに潜るぞ!」

「ァア‼︎ 逃げんのか!」

「じゃあ勝手に死ねば」

「チッ。わかったよ」

「こんどはこっちがバラバラにしてやる!」


 劣勢となるや、敵勇者たちはダンジョンにオレらを誘き寄せようとした。

 狭い空間ならば囲まれないと判断したのだろう。それぞれに攻撃を振り切り、大木の樹洞へと逃げていく。


 こうして盤上は次の局面へ。


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