↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
83/85

レベル差が序列なのかよ


 巨木の樹洞ダンジョン——

 その名のとおり、樹齢が想像つかないほど育った幹にポッカリと空いた洞(うろ)から奥深くへとつづくダンジョンだ。

 獣人系の魔獣が現れるのは、撤退戦のおり確認している。


 その入り口付近に十六名の敵勇者が屯ろしており、賢者とおぼしき亜人ハーフは見当たらない。

 見るに、連中は対等な関係ではないようだ。

 一番の年長が、他の少年たちの言いつけに右往左往。平たく言ってしまうとパシリをさせられていた。


「レベル差が序列なのかよ」

「おそらくは」


 これらは手を双眼鏡に、遠目にした印象。

 それに忍者軍団の頭領ラトロが答えた。


 敵勇者たちがダンジョンに入り浸っているのも、経験値を稼ぐためだろう。

 強さがそのまま立場となる社会に属していれば、そうなるのも当然か。

 ……結局、彼らはまだまだ少年なんだ。狭い世界でしか生きてきていない。


「賢者らは?」

「我が軍出陣の報を受けた敵勇者らに命令され、全員ダンジョンの奥へ向かいました」

「何名かが街まで使い走りに行っている可能性はないか?」

「ありません。確認済みです」


 たしかに、ダンジョンの入り口付近には食料などの物資が山積みだ。

 辺りは、荒んだ生活を送っているのが見てとれる散らかりっぷり。


「陛下。情けは無用ですよ」

「わかっている」


 エリテマソーラが図星を突いてきた。

 彼女は、オレのなかで未消化のまま残る『敵勇者——少年たちに軍事力を差し向けて本当によいのか』という葛藤を見抜いたらしい。


「人としての善悪、その分別はつく年齢です」

「だな」


 敵勇者は単なる不良少年などではないのだ。一個で軍に匹敵する戦力を持つ。手心を加える余裕などない。

 それに、連中の手は既に汚れきっている。凶悪なテロリスト集団として扱うべきだ。再びヴィキヌス全土を巻き込むスタンピードを起こすことさえ、躊躇いなくやってのけるのだから。

 

「将軍、包囲からあとの段取りは問題ないな」

「ハッ。我らが一番はじめに行った作戦ですので」

「そうだったな」


 王様の命令第一弾『ダンジョンを封鎖せよ』でやった、囲んでタコ殴り、それを再現するだけ。

 かつてと比べると、対象の強さもこちらの規模も桁違いだが、


「やれるか」

「お任せを!」


 ペデモント将軍は胸を張った。


◇


 全軍は息を潜め、敵に気づかれない位置まで距離を詰めたところで——


「攻撃、開始ッ‼︎」


 ペデモント将軍が叫んだ。

 号令を受けた全軍が有機的に動き出す。

 真っ先に鋼鉄兵団とドワーフ兵団が前へ。読んで字の如く鉄壁、盾の壁を作った。

 そのフォローには魔法戦士団と神官団ならびにローエルフ巫女がつく、さらに後ろではノーム兵団とホビット兵団が陣地を築く。

 これらと同時並行で、各魔法兵団による一斉射。真っ先に物資を焼いたのだ。これによって敵勇者らの反応は遅れた。

 

「魔法兵団、作戦、サウナ責めッ!」


 ダメージ確認など不要と、ペデモント将軍は次の策を走らせる。


「「「〝荊棘魔法(ブライア)〟」」」


 地魔法兵団が木属性魔法を連発。

 それらは掛け合わさり、木と木の二属性『異常繁殖魔法(オーバーグロウズ)』へと昇格。敵勇者らを囲う密林の檻となった。

 間をおかず、


「「「〝火球魔法(ファイア)〟」」」

「「「〝着火魔法(イグニス)〟」」」


 火魔法兵団による、二属性『火球連射魔法(ラピッドファイア)』『大炎上魔法(ヘルブレイズ)』の発動。

 囲いは燃える檻と化す。

 さらに、


「「「〝疾風魔法(ウィンド)〟」」」


 風と風の二属性『魔力渦魔法(メイルストーム)』が、


「「「〝水弾魔法(ワーラー)〟」」」


 水弾を粒にして、湿り気を帯びた空気を巻き込む。

 対象の加熱と蒸発を急加速させた。

 完璧な連携によって、ダンジョン入り口は即席サウナに。


 事態の把握と対応までのタイムラグ、その間に少しでも体力を削っておく。

 僅かな消耗でも上出来。このまま倒し切れるとは思っていない——ほらきた!


「暑いんだよ、クソがッ‼︎」


 轟音と共に木っ端微塵となる炎の檻。

 舞い散る火の粉をものともせず、敵勇者たちは姿を現した。

 だが驚愕はしない。こちらはすでに、次の手どころかアイツらの詰みまで読み切っているんだ。


 ノーム兵団による土と木の二属性と『荊棘陣魔法(スパイクトラップ)』で後衛の安全を確保。

 さらに土と土の二属性『魔力補給(アースリカバリ)』が魔法を放つたびに魔力をフル充電。

 生じた解(ほつ)れはホビット兵団が補い、全軍は敵前の陣地へ飛び込む。

 そして鋼鉄兵団とドワーフ兵団へは、神官団とローエルフ巫女が『治癒再生魔法(アクアヒール)』を浴びせまくる。

 常に回復する盾の完成、反撃への備えは完璧。


 とはいえ一方的、とは言えない。

 オレらの猛攻を受けるなかでも敵勇者たちは、


「チクチクうざったいな!」

「蹴散らすぞ」

「ァア! 偉っそうに」

「おいザコ、お前が一人で片付けてこいよ!」


 年長の下っ端を前に蹴り出す余裕すらあった。


 アイツらのタフさをたとえるなら、昔の高難易度RPGでしばしばあったターンごとに自動回復していくボスキャラ。

 もしくは全回復魔法を使うラスボス。ああいう手応えの無さ。

 こちらはそれを上回るダメージを与えられていないんだ。


 しぶしぶといった様子で、年長の敵勇者はこちらへ向かってくる。

 だが、その行手を光の戦士団が阻む。

 先頭に立つのは光の勇者ユエニス。


「もう僕は、誰にも負けない!」

「へへぇぇ……、メーリスフロントを知らない勇者かぁ。そうかそうかぁ」


 真っ直ぐに育ったユエニスに対して、年長の敵勇者は嗜虐的な笑みを浮かべた。

 自分より弱い者を見つけた。そんな鬱屈した心根の現れか、頬を裂くように口の端は吊り上がっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。