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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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司教らを捕らえよ


 怯える群衆と尻込みする軍勢、か。

 ペデモント将軍が号令をあげれば、その均衡も崩れて地獄絵図と化すのだろう。

 オレらの手を汚させるのが教会の意図かはわからない。だが少なくとも、そんなことをすればのちに響く。露骨なプロパガンダに利用されかねない。


「全員そのまま待機。……いいや、ラトロ」

「ハッ。ここに」


 忍者は、突然そこにいた。

 様式美に沿った現れ方に、本営の誰もが驚く。

 ただ、オレだけはニンマリ。


「敵軍の裏へ回り込み、司教らを捕らえよ」

「乱戦となった隙にということでしょうか?」

「たぶん争いにすらならないぞ」


 これはパーフェクトクリア条件が極々高難易度なクエストだ。

 教会に嗾けられた民衆を傷つけたくないが、手を拱いていてはつけ込まれてしまう。なので心を鬼にして戦わなくてはならない。

 そんな状況で、あの人数を相手に加減をするなど——


「簡単だ」


 オレなら可能。非殺傷であり、かつ広範囲な無力化ができる。


「陛下は闇属性魔法を使うおつもりなのですよ。それも、悪霊群体(レギオン)の指輪を用いて」


 エリテマソーラにネタバラシされてしまったが、そのとおり。


「多少の苦痛は与えるが、あっさり終わらせてやるさ」

「では、我らは事後に投降を促します」

「ああ頼む。司教らさえ押さえれば、そう難しくはないだろう」


 対処が決まればあとは早い。

 オレはエリテマソーラ配下の親衛隊に守られながら、陣地の外へ。


「あれだ! あれが人類種を裏切り、新たな魔王となった異端中の異端! 皆、彼奴を討ち滅ぼすのだ‼︎」


 言いたい放題な司教を無視して、


「〝虚無魔法《ヴォイド》〟」


 魔力を食い尽くす闇属性魔法を放つ。

 レギオンの指輪により強化されたそれは、紫混じりの黒の周りに光の輪郭を帯びた。

 おっかなびっくりな集団へ届いた虚無は——


「「「ぐわわぁああああーッ‼︎」」」


 民衆から魔力を奪い、苦痛を振り撒く。

 同じことを二度三度。

 こちらも心が痛むが、彼ら彼女らを無傷で救うにはこれしかない。悪いけど今は我慢してくれ。


 膝をつき身悶える群衆を眺めること、しばし……。


「陛下。司教らを確保しました」

「よくやってくれた」


 ラトロが任務完了を知らせに。

 それを受けてペデモント将軍が、


「敵軍を包囲ッ! のちに投降を呼びかけろ!」

「「「応ッ‼︎」」」


 迅速な対応で降伏を促す。

 顔を腫らして縛られた司教らの姿がよく効いたようで、抵抗らしい抵抗はなかった。


 初手から悪辣なマネをされてしまったが、士気に水を差されることなく、事を済ませられた。


◇

 

 捕らえた司教らはなかなか口を割らず。殺されないとわかると途端に威丈高に。ときには罵声を浴びせかけてくる始末。

 こちらとしては、一刻も早く勇者らの動向を知りたい。

 だから身の安全などを保証に触れたのだが、逆効果に終わったようだ。


「レガリスレクスの大司教たちよりは、骨があるようだな」

「フンッ。我らの信仰心を侮るでないぞ!」

「「「そうだそうだ!」」」


 ここで忍び頭のラトロが「お任せを」と尋問役に名乗り出た。

 得意そうといえば得意そうだけど……。


「ちなみにどうやるつもりだ?」

「口以外は無用ですので、まずは指を——」

「ああもういい。聞きたくない聞きたくない」


 スプラッタは大の苦手。耳にするだけでヒェッてなる。……ん! 耳にするだけで、か。よしよし。


「ペデモント将軍。保護した民衆を十名ほど連れてきてくれ」

「どうなされるおつもりで?」

「なぁに、どんな酷い目に遭ったのか語ってもらうだけだ」


 どうやらオレの意図を汲んだようで、


「その者らには、恥辱屈辱を払拭する機会を与えてやってはどうでしょうか」


 話を合わせてくれた。

 これがなにを意味するのかは、当人たちが一番よく知っているのだろう。司教らはラトロの脅しには屈しなかったのに、いまは震え上がっている。

 コイツら……、いったいどれだけめちゃくちゃやってたんだか。


 連れてこられたのは若い男女五名ずつ。

 尋問中だと事情を説明して、それから司教らの前に連れていくと、彼ら彼女らは——というか女性たちの方が怒りを露わに。

 こちらが止める間もなく、司教らの顔を引っ掻き、首を絞めるんだ。


「よせ! そこまでだ!」


 すぐに兵士たちが抑えたが。

 それでも彼女らは治らないようで、


「その棍棒を貸してちょうだい!」


 と。

 なぜかと問えば、返ってきたのはセルフレーティングな報復を、とのこと……ハァ。

 ゲスどもめ。怯えてるんじゃないよ。因果応報だろうが。

 男性らだって黙っているけど、握りしめた拳は怒りに震えている。

 このままでは凄惨なリンチになりかねないので、いったん下がらせた。


「さて、喋る気にはなったか?」

「ほ、本当に身の安全は保証してくれるのだろうな!」

「内容次第だ」

「メーリスフロンスにおいて、婚姻関係は認められていない……。よってだ……」


 そんなものが乱暴の理由になるか、ボケ。


「もう喋らなくていいや。オマエらはオレの人気取りに使わせてもらう」

「「「——ッ⁇」」」

「安心しろ。ヴィキヌスの民衆が満足するまで何度でも治癒再生魔法(アクアヒール)を浴びせかけてやるから」


 こちらにそんな暇はないのでブラフだ。しかし効果てき面だったようで、司教らの口は軽くなった。

 あれこれ必死に語っていくから取り留めがない。罪の告白なんか求めていないのに。

 そんななかに、


「勇者たちは常にダンジョンに入り浸っている」

「レガリスレクスが攻めてきた報せは届けた」

「じ、じきに魔獣の群れが襲ってくるぞ!」


 聞くべき情報が。


「ペデモント将軍」

「ハッ。ヴィキヌスの地にダンジョンは一つです」


 今回の出征に向けて、対スタンピード対策は済ませてある。


「ぜ、ぜんぶ喋ったぞ!」

「解放しろ!」


 司教らには当然の権利のように叫ぶ。まるで反省の色がない。


「おいおい、オレは言ったぞ『内容次第だ』と。まだ収容所に囚われている人々からの事情聴取が済んでいない。オマエらの処遇は、そのあとだ」


 司教らはガックリと項垂れ、頭に乗せていた豪奢な司教冠(ミトラ)が落ちた。


 ではこれより勇者たちに、いつまでもバカの一つ覚えが通用しないと教えてやろう。


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