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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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例の黒髪幼女エルフかよっ


 ネヴィアが、亡命中の王女の身体を乗っ取ったことまでは聞いている。

 それから間もなく大聖女を名乗り、勇者たちやそのパーティーの冒険者たちを引き連れてリーメスフロンスに入ったことも……。

 それがどうして建国なんて話につながる?


「情報を三段飛ばしで聞かされた気分だ」

「事の経緯を説明します」


 と、ラトロが語ってくれたところによると、一連のスタンピードははじまり。

 周辺国の統治を揺るがすのが第一段階。

 第二段階は、混乱に乗じて為政者らの排除。

 第三段階は、その後の鎮圧。


「そしてネヴィアは勇者たちを手駒に魔獣を鎮圧して、まんまと統治者として居座ったと」

「はい。教会の権威を背景にした支配体制については、のちほど逃げてきた者から説明させます」

「どうせ選民思想に染まりきってるんだろ?」

「いえ、大聖女は『平等』を掲げております」


 平等……、か。公平ではないんだな。

 なんとなく既視感のある主張だが、それはあとあと詳しく聞くとして、大枠の把握が先だ。


「どこまでを領有している?」

「大聖女は大陸すべてを聖リーメスフロンスとし、教会によって導くと説いていました」

「直に演説を聞いたのか!」


 接近しすぎだろ。何年も追っているのだから、逆に目をつけられていてもおかしくはないだろうに。


「はい。その後、オブルスと合流したところを狙われまして……」

「オブルスは⁉︎」

「分かれて逃げたので、いまどうなっているかは……。申し訳ありません」

「いや、責めてはいない。そういう危険も込みの任務だ。というか、ネヴィアのせいで最前線の視察どころではなかったろうに」

「陛下、オブルスからこれを預かりました」


 渡されたのは手紙ではなく、メモ。

 質素な紙に走り書きしたのか、ところどころがペン先で裂けている。だが、そこにはびっしりと騒動前のリーメスフロンスのことが書かれていた。


「おそらく、慌てて写しを用意したんだな」

「はい。分かれる間際『同じ物を持っているから念のため』と預けられました」

「そうか」


 貴重な資料だ。必ず役立てよう。


「とにもかくにも、これで魔獣被害は収まると見て

いいのだな?」


 スタンピードは終息へ向かう。因果が因果だけに手放しでは喜べないが。

 聖リーメスフロンスは今後厄介極まりない相手となるだろう。だが、その統治が魔獣鎮圧の功績を拠り所にしているのなら、しばらく身動きは取れないはず。


「これから周辺は、荒らされた領土に居座る者と、取り返そう奪い取ろうとする者との争いで、乱れるのであろうな。復興すらままならないまま」


 しかしよくもまぁ半年に満たない期間で建国宣言までこぎつけたものだ。

 教会という地盤組織とスタンピード、そこへ同時多発的なクーデターを仕掛けて成功させたわけだ。


 さて、魔王はどうするのだろう?

 あちらもかなりの被害が出ているに違いない。

 このまま争いがなくなればいいのだが、これはさすがにお花畑すぎるな。


「ラトロ。話を聞きたいので、連れてきた者の代表を案内してくれ」

「連れてきたというより、彼女らから『レス・プブリカ共和国までレガリスレクス王国軍がきている』と耳にして、身分を話したうえで同行を願ったのです」


 なるほど、そういう経緯だったのか。


「ドワーフやホビットが多いように見受けたが」

「エルフが最も多いかと」


 オレのエルフ像がエリテマソーラだからか? いまいちピンとこない。


「ローエルフです」

「——例の黒髪幼女エルフかよっ」

「黒か……。たしかに背も低くあどけない容姿かもしれませんね」


 なんだか胡乱な目を向けられている気がする。

 違うから、そういうんじゃないから。ただなんとなく興味あるだけだから。



 というわけで、かれこれ三年近く前に聞いたっきりのローエルフとご対面。

 代表としてやってきた彼女の名はフミリス。予想を超える愛らしさだったが、とてもじゃないけど、お菓子をあげてご機嫌を取るような雰囲気ではない。


「……それほどか」

「うん。大聖女にとって民は家畜も同然だよ」


 敬語を知らないようなので気にしないで喋ってもらっているが、そんなことより問題となるのは内容のエグさだ。


「婚姻の禁止、だったな?」

「親によって人生が決まるのはおかしいって理由で、結婚しちゃダメにしたみたい」


 めちゃくちゃだ。

 いや、財産や地位などの世襲を否定したいのは理解できる。だとしてもやり方が性急どころの話ではない。


「あいつら、子供はみんな聖リーメスフロンスの子って言ってた」

「ひどい矛盾だな。生まれで人生が決まるという理屈なら、聖リーメスフロンスの子として生まれた時点で将来は決まっているじゃないか」

「……ホントだ。王様もしかして頭いい?」


 淡々と辛い経験を語ることからも、おそらく見た目どおりの年齢じゃない。だけども黒髪幼女エルフに頭の出来云々を言われるのは複雑な気分にさせられる。

 だから「まぁな」と微妙な見栄をはって返事を済ませた。


「で、キミたちはそれが嫌で逃げてきたのだな。エリテマソーラを頼って」

「うん。だって森で暮らしちゃダメって言うんだもん。おうちも燃やされちゃったし……。あと、男を連れてこうとしたとき『交配材料にする』とかも言ってたかな?」

「——な⁉︎」


 たしかに寿命が長く魔力も多いエルフ種の血を入れたら、潜在能力の高いハーフが生まれるだろう。だからって……、チッ。やっぱり魔女は魔女だ。

 いまの話で避難できたのがローエルフばかりなのにも合点がいった。

 他のエルフ種は仲間を逃すために、文字どおり死力を尽くして争ったのだろう。捕まるくらいならばと。


 ここまで聞いた時点で、聖リーメスフロンスを放っておくわけにはいかなくなった。

 当然、酷い行いに義憤を覚えたのも理由だ。

 だがもっと深刻なのは、もしネヴィアの治世での第一世代が成人してしまえば取り返しがつなかない。

 とてもじゃないが容認できない倫理観、そんななかで育った者らが増えていく。これ以上ない悪夢だ。


 しかし疲弊した王国軍でいますぐにネヴィア——大聖女の首を取るなんてできるわけもなく、魔獣とは別の原因で増えるであろう避難民のことも考えなくてはならない。

 あちらに取り込まれたぶんだけ、聖リーメスフロンスの思想が拡大するのだ。これまでみたいに保護するかしないかを悩んでなどいられないだろう。


 大丈夫。いったん国に戻って立て直す時間はとれる。

 ただ、決着までのリミットは最長でも五年くらいか。


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