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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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臨時徴用せよ


「——待ってください! 保護するのは、一部の関係者のみと聞きました」


 話を持っていくなり執政官は目の色を変え、こちらの説明の変遷を突いてきた。

 これが自国民を憂いての発言だというのは、グッと握りしめた拳からも伝わってくる。彼だって本心では、避難民を見捨てたりしたくないんだ。


「またいつ魔獣が押し寄せるかわからない。ここは結論以外を互いに口外しないと約束のうえで、腹を割って話そう」

「……ハァ。では恥知らずを承知で申しますが、避難民が生き残っては困ります」

「見殺しにしたからか?」

「ええそうです。囮扱いもしました。魔獣に喰い殺される避難民を目の前に、我らは勝機まで動かなかった。仰るとおり見殺しですよ。それしか自国を守るすべがなかった!」


 マギアレフィカの予想は半分当たりだった。

 この場合の半分は正答率ではなく、視点の違いにより見解は異なるという意味で。


「各地から逃げてきた民だ。騒動が落ち着いたあとが心配なのはわかる」

「ここで生き残ったとしても、レス・プブリカ共和国は方々から責められるでしょうね。ですが心配ご無用。我が国は共和国ですので、誰かが私を断罪すればよい。他国にはそれで説明がつきます」


 のちのバッシングを一人で受け、後任から責任を取らされる形で生贄になる、……か。


「ではオレの提案は責任の上乗せする形になるな」

「提案、ですか?」

「提案だが」

「ご冗談を。ドラゴンの群れを相手に勝ちきったレガリスレクス王国軍がいて、提案などと。腹を割って話すのではなかったのですか」


 たしかに軍事力を背景に、執政官を頷かせることもできるな。

 でも、それはオレの望むところではない。

 これは倫理観や道徳観の話ではなくて、王国軍にとって理想の落とし所へ持っていくのに、恫喝は邪魔にしかならないからだ。


「どうやら執政官殿は勘違いをしているらしい。オレは避難民の保護など求めていないぞ」

「はあ?」

「臨時徴用するが、と言っている」

「詭弁です!」

「ああ詭弁だが。この際だ、ついでに要求を重ねておこう。そちらの指揮権もこちらへ寄越せ」

「…………。……正気で仰っていますか?」

「正気だ。先より魔獣の勢いが増す可能性だってある」

「——あれより⁉︎」


 執政官は絶句した。

 聞けば、これまで襲来した群れは、ドラゴンよりも弱い魔獣だったそうだ。

 当地のダンジョンで第六層くらいの脅威度とのこと。

 あとでマギアレフィカに確認しないと単純比較はできないが、かき集めた戦力で対象できていたことからも、王国のダンジョンと大差ないと見てよさそうだ。


「……ッ。失礼」


 胃を撫で、口元を抑える執政官。

 えずきは堪えるも、瞳の潤みは増していく。


「私たちはいつから脅威は魔王だけと決めつけていたのか……っ、っっ……」


 両手で顔を覆い、必死に嗚咽を噛み殺している。


「諸国と手を取り合い、国家として対処するべきだった……」


 レス・プブリカ共和国は少なくない国土が荒廃した。多くの担い手を失った。それでもまだ保てている。

 勇者に頼れず、総力を挙げて対応したからだ。もちろんスタンピードの発生地からの距離もあってだが。

 その代償は大きい。

 徹底した防衛策により、いくつもの国から逃れてきた民から恨みを買ったことは、今後、共和国を祟るだろう。


「だというのに、だというのに……」


 オレの思考と執政官の内心が被った。

 ならば今が最も誘導しやすいタイミング。辛い状況に鞭打つようで気は引けるが、やらせてもらう。


「悪いが買い叩くぞ。対価は未来だけだ」

「……未来?」

「ああ。明日明後日より先、この騒動を落ちたかせたあと。そのために『この場はレガリスレクス王国に預けろ』というムチャな要求をした」


 お手紙程度で大した交流もなかった国に言われてもって気持ちはわかる。が、それでも飲まざるを得ないのをわかっていて言った。

 理由は単純。オレらは、いますぐ避難民だけ連れて帰ることもできるからだ。

 そんなことをしたら魔獣の襲来はレガリスレクス王国の間近まで寄ってくるので絶対にしないが、あちらからすれば、そういう読み取りもできるという話。


「魔獣の件が落ち着き次第、避難民はレガリスレクスに連れていく。これは受け入れの条件とする」


 大臣が聞いたら目を回しそうな条件だが、ここに置いておけば、もっと深刻な事態になる。残された者には失地回復やら先日の恨みがあり、争いの口実は尽きないからだ。

 おそらくその余波はレガリスレクスまで届く。


 むしろレス・プブリカ共和国がスタンピードの際でよかった……。こんなことを口にはできないが、事実としてそうだ。

 もし、ここまでに通ってきた教会の権威が強い国々だったら保っていなかっただろう。執政官が交渉相手でなければ、こうやって話もできていない。そういう意味で。


「さて、異論はないようなので具体的な内容に移ろうか」

「……はい」


 のちの災いの種をこちらで引き受けると聞いて、執政官の聞く姿勢が変わった。


 さっきは指揮権をと言ったが、オレが執政官に求めたのはローテーションの一つに加わること。

 避難民を防衛施設の後ろに置いてしまえば、防柵がある状況で戦える。なので、火力の強弱を変えて魔獣のヘイトコントロールに協調してほしいと要望したんだ。


「当初の予定と変わらないのでは?」

「ただバラけさせるだけではないぞ。魔獣を群れごと動かすんだ。だから、誘き寄せるためには派手に攻める必要がある」

「場合によっては防柵の外で戦わなくてはなりませんな」

「その負担より、休みなく戦闘がつづく方が兵には重い」

「なるほど。少しだけ、レガリスレクス王国軍の強さの秘密がわかった気がします」


 このあとペデモント将軍も呼び、より細かいところまで作戦を詰めていく。

 結果としての形式は、オレが最高指揮権を持った連合軍となった。

 仮にも国家元首より上位に指揮権があるように映るのはよくないので、これはあくまで建前で、実際にはペデモント将軍が全体を回すこととした。


 ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。

 とうとうストックが尽きました。

 ただいま続きを執筆中です。


 少しでも「つづきが気になる」「おもしろい」など興味をもっていただけたのなら、ぜひとも【★★★★★】【レビュー】で応援してくださいませ。

 執筆の励みにもなりますので、なにとぞよろしくお願いします。


             枝垂みかん

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