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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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もっと早く聞いておけばよかったよ


 魔獣が回復しないのは何度も言及したとおりで、これに変わりはない。だが同時に、疲れもしない。魔力の限り暴れつづけるんだ。

 かつて上位九頭竜粘土像《エルダーヒドラテラコッタ》との持久戦を経験していなければ、兵士たちは萎えていただろう。


 結局、いったんは庇った避難民を見捨てることもできず、レガリスレクス王国軍は陣地を捨てて前へ。三交代制で魔獣の群れを抑えることとなる。

 交戦ラインを下げるコストを払うより現状維持の方がマシという判断から、そうした。


 いっそのこと防衛施設の後ろまで避難民を移動させてしまうかという誘惑に駆られたが、それはダメだ。ここはレス・プブリカ共和国の領土。執政官の許可もなくそんなことをしてしまえば、いらない外交問題を抱えてしまう。

 というか助けに入ってしまった以上、一部の者だけを保護、というわけにもいかなくなった。そういう意味でもペデモント将軍はやらかしてくれたわけだけど……。


「さぁあとひと息だ! 我らレガリスレクス王国軍が、ドラゴンの群れであっても追い払えるところを諸国の民らにみせてやれ!」

「「「応ッ‼︎」」」


 必死に戦うさまをみていたら文句を言う気も失せた。


 部下が頑張りすぎたときにフォローするのは、上司の務めだ。

 せめて魔獣が押し寄せるあいだだけでも防衛施設の後ろにやれないか、執政官に掛け合ってみよう。

 となるといい勝ち方をして、本音を言えば、交渉のカードを増やしたいところ……。

 いや、あまり欲をかかない方がいいな。皆、よくやってくれている。


 盾兵たちは懸命に魔獣の攻撃を抑え、兵士たちは肉薄してメイスで打ちつけ、魔法兵たちは魔力のつづく限り援護をしている。


 ときおり発動する水と冷の二属性『大氷河魔法(アイシクル)』により、魔獣を地面に縫いつけた。

 また、かなりの高確率で水と水の二属性『治癒再生魔法(アクアヒール)』が発動して、魔獣と対峙する兵士たちは傷つくなり癒されていく。

 そして地味だが見事なのは、前面に出す兵士の入れ替えがとてもスムーズなのだ。


 頑張ってくれているのは王国兵に限らず、魔道士や神官たちも。


 魔道士たちは派遣された当初から、マギアレフィカに従っていた。

 元主席導師の肩書きと王妃の身分もあってだろう。しかし、それよりも研究機関が関係性を築くのに一役買ったようで、今回の王国軍への同行もほとんどが志願者だったそうだ。このことからも、慕われぶりがよくわかる。


 神官たちの役割も重要だ。兵士たちの治癒再生魔法(アクアヒール)では間に合わない重症者が運ばれてくるたび、魔法と医療を合わせたような妙技で、その生命を繋ぐ。

 たいていの兵士がピンピンに元気になって復帰するのだから、こんなにありがたいことはない。

 

 綻びのない戦いとまでは言わないが、互いに助け合い、補い合い、着実に魔獣の数を減らしていく。

 すでに地上に残る蛇竜(リンドワーム)は残り僅か。あとは大物の地竜(ドレイク)や水竜(ハイドラ)が少々。

 だが、空には厄介な魔獣がまだ残っている。飛竜(ワイバーン)だ。

 火を吹いたり、急降下で引っ掻いてきたり噛みついてきたりと目障りだったが、ここまで手をつけらずにいた強敵。


「陛下、そろそろ援護の手をあちらへ差し向けてもよろしいでしょうか?」

「魔法で撃ち落とすのか」

「それしか対処の方法はないかと」

「魔道士たちの魔力は?」

「保たせます」


 つまりガス欠寸前ってことか。その前に、あれだけは叩いておくべきというマギアレフィカからの進言。


 俊敏に飛びまわる敵に地上からの魔法攻撃……か。

 んん〜。どうだろうな。あっさり避けられそうな気がする。

 というか、ずっと気になっていたんだけど、ワイバーンの飛び方って不思議なんだよな。巨体の割には翼が小さいし。


「ワイバーンは魔力で飛んでいるのか?」

「ええそうですが……。あっ、もしかして陛下⁉︎」

「だったらオレの出番だろ」

「たしかに。有効そうですね」


 なんだよ、もっと早く聞いておけばよかったよ。

 これはいい。諦めていた勝利のインパクトも手に入って一挙両得を狙えそうだ。


「ここからじゃあ遠い。前に出るぞ」


 マギアレフィカからの返事は短いため息が一つ。

 すぐに身の回りを固める護衛の魔道士を編成してくれたので、将軍たちのもとへ伝令を走らせ、オレらもそのあとにつづく。

 

 交戦地に近づくと、より戦いの激しさが伝わってきた。

 兵士たちには疲労や装備の破損も目立つ。だが士気は高い。


「ペデモント将軍。いまからワイバーンを落とす。手の届くうちに翼だけでもへし折ってやれ」

「ハッ!」


 段取りは済ませたので、オレは空を見上げた。


「デカいのが三体に、小さいのが十体前後か」


 しかもけっこう高くを飛んでいる。

 命中させなくても、闇属性『虚無魔法(ヴォイド)はあたりの魔力を食い尽くす。

 ただし今回は、三次元的に位置を替えられる空中での使用。もし明後日の方へばかり放ってしまえば、こっちの魔力は足りなくなる。

 やはり当てるつもりで、集中しないと……よし。


 目標、大型のワイバーン。


「〝虚無魔法(ヴォイド)〟」


 第一射めは空へと昇り、ワイバーンに届いた。がしかし——あっさりと躱された。

 グラリと飛行に揺らぎはあったけど、それだけ。


「あ、あれぇ……」


 だがこのあと、思ってもみない展開となる。

 はじめての露骨な攻撃に怒ったのか、ワイバーン数体はギャーギャー鳴き合った、直後——


「お、降りてきたぞ!」

「陛下、お下がりください!」


 そうしたいのは山々だが、これはチャンスだ。


「ギリギリまで引きつける」


 それで当たるはず。

 急降下中に制御を失えば落下は免れまい。


「盾兵! 陛下のそばに!」


 ペデモント将軍が気を利かしてくれた。


「迎撃に備えてください!」


 マギアレフィカが失敗したときの保険もかけてくれた。

 あとはオレが上手くやるだけ。

 どんどんワイバーンの姿はデカくなり思わず腰が引けたが、耐えて堪えて、今だというタイミングに——


「〝虚無魔法(ヴォイド)〟」


 放った途端に襲いくる倦怠感。

 それが、すぐ薄れるなり次を放つ。


「〝虚無魔法(ヴォイド)〟」


 命中を確かめる前に、辺りの魔力を食い尽くす魔法を連射。


「当りました! ワイバーン、落下します!」


 回避するのすら煩わしいと思ったのか、ブレスで消し飛ばそうとでもしたのだろう。

 その炎を掻き消して大口開けたなかへ。

 また、群れたところへの闇魔法だったので、範囲攻撃のように魔力を奪えたのも効果的だったようだ。


 オレは次々と魔法を放つ。

 つづけること立ち眩みを覚えるまで……。

 それを、すぐ近くで起こった——ガツンッという衝撃音が醒ました。

 意識がハッキリした拍子にフラリとよろけてしまう。


「お見事です陛下。すべてのワイバーン、落下しました」


 報告と共に、そっとマギアレフィカが支えてくれた。

 見れば、こっちに突っ込んできた小型のワイバーンを盾兵たちが受け止めてくれてもいた。


「陛下がくださった勝機を逃すな! かかれーッ!」

「「「応ッ‼︎」」」


 メイスをかざした王国兵たちは、地面に叩きつけられたワイバーンに群がった。めっためたに打ち据える。

 地上は虚無魔法の影響が少ないが、大きい図体が災いして落下のダメージはかなり深刻な模様。


「皆さん、飛び立とうとしてる個体がいます。食い止めてください!」


 しかし小型のワイバーンは比較的軽く済んだようで、ダウンから復帰が早い。空へ逃げようとした。そこを、


「「「棘荊魔法《ブライア》」」」


 魔道士たちが無数の荊で地面に縫いつける。

 可動する翼は折りづらそうだ。それでも兵士たちは着実に打撃を重ねて弱らせていく。

 盾兵はカバーに入りつつ、脚を盾の角で突いて初動を妨害する。


 喚くこともできず、苦し紛れに身体を丸めるワイバーン。その側頭部へ——


「ぬっうぉおおおおおおーッ‼︎」


 ペデモント将軍が渾身の一撃を見舞った。

 そして殴られた勢いのまま倒れ伏し、ワイバーンは動かなかなくなる。やがて巨大な輪郭がじわじわ崩れ、サラサラと砂になり消えた。


「おお‼︎ 将軍がワイバーンを倒したぞ!」

「自分らもつづくぞーッ‼︎」

「「「応ッ!」」」


 強敵を倒したことで士気は爆上がり。

 なんとその日のうちに、王国兵はドラゴンの群れの撃退に成功したのだった。


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