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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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疑問を抱かれたらどうするんだよ


「——貴様ら! ここまで溜めに溜めた鬱憤を晴らす刻がきたぞ!」

「「「応ッ‼︎」」」

「気合いが足りん‼︎ レガリスレクス王国軍が侮られたままでよいのか! 私は我慢ならない! 貴様らもだろ!」

「「「応ッ‼︎」」」

「ならばレガリスレクス王国軍が威を示せ! 魔獣を殲滅せよ! 総員、かかれぇえええーいッ!」

「「「応ーッ‼︎」」」


 煽りすぎだペデモント将軍!

 防御施設は借りられたんだから使えばいいものを、打って出るだなんて。


「——マギアレフィカ!」

「はい。支援します」

「頼む」


 ……まったく。これは神官たちの出番が多くなりそうだ。

 ペデモント将軍は避難民を庇うカタチで軍を展開した。


 魔獣の群れに九頭竜(ヒドラ)はいないようだが、その規模はさならがら映画後半のジュラシックパーク。

 オオアナコンダも真っ青な巨大蛇——蛇竜(リンドワーム)が目立つ。

 他にも、獣の如く駆ける地竜(ドレイク)や地を泳ぐように進む水竜(ハイドラ)、その上には空飛ぶ巨大爬虫類の飛竜(ワイバーン)までいた。


 他にも総監たちに任せた防衛施設はある。

 それらを陣地に魔獣を分散させて抑える手筈だったのに、前へ前へと飛び出していったペデモント将軍の率いる軍に魔獣が集中してしまった。


「マギアレフィカ、手前側は混戦しているぞ!」

「承知しております陛下。皆さん、目標は魔獣の群れ後方です!」

「「「はい、第二王妃殿下!」」」


 マギアレフィカの指揮のもと、魔道士たちは後続を断ちにかかる。

 おそらく彼ら独自の魔法なんだろう。たとえるなら炎でも氷でもない魔力の塊。

 そんな、見たことも聞いたこともない魔法が無言で放たれ、先行してしまった軍勢の頭上を越えて魔獣の群れへ。


 さらに左右の両総監の陣営からも十字砲火。

 水と水、水と冷の属性魔法を集中的に。

 爬虫類だから冷やせば弱る。きっとこれは、彼らの経験則からの判断。

 加えて、二属性『治癒再生魔法(アクアヒール)』で傷つくそばから癒すのも狙いのはず。


 見た限り援護攻撃の効き目は悪くない。少なくとも無効化はされていないと見てよさそうだ。


 口の渇きを覚えるほどの時間が経つ。それでもペデモント将軍は持ち堪えていた。

 なにを言っているのかは喧騒に飲み込まれて聞き取れないが、将軍自ら必死にメイスを振い、兵士たちを鼓舞している。

 だが、じきに限界だろう。


「陛下、ここでは狙いが定りません。前へ出ます」


 マギアレフィカの発言は、兵士の入れ替えを見越してのもの。

 誰もが指示なく状況を見て動き出す。


 右からはリットラル総監が、左からはルアーナス総監が、それぞれに軍を率いて陣地を出た。ペデモント将軍の軍勢と交代するためだ。

 その一番脆い瞬間をフォローしようと、魔道士たちは針穴を射抜く精度で魔法を連発する。


 ペデモント将軍が叫び、麾下の兵士たちは退く。

 両総監の軍勢は左右から圧をかけて前に出た。

 その隙間を魔道士たちの魔法が埋める。

 

 ここ一年で見たダンジョンの魔獣ならとっくに片がついてそうな猛攻を仕掛けたのに、群れの勢いが衰えたように見えない。

 なにより戻ってきた盾兵たちの消耗が激しい。バンバン後方から回復魔法を浴びせられつづけたのにもかかわらずだ。

 見れば、板バネ盾もボロボロだ。なかには完全に破損しているものもあった。


「陛下……」


 ペデモント将軍が詫びてきそうな気配を見せたが、


「あとにしろ」


 止めた。

 謝るくらいなら最初からやるな、とは言わない。

 もし避難民を見殺しにしていたら、オレだっていつまで我慢できたかわからない。


「すぐ立て直しにかかってくれ。次はもう少し引き際を考えて動くように。一人の頑張りが、かえって皆の負担になることもある」

「ハッ。申し訳ありません」


 だから謝るなって。兵が見ているんだぞ、判断に疑問を抱かれたらどうするんだよ。とりあえず発破をかけて誤魔化すか。


「諸君の奮闘によりハッキリした。我らが対する魔獣——ドラゴンはけっして勝てない相手ではない! 否、劣るどころか互角以上に渡り合えている!」


 疲労困憊の兵士たちの目に精気が戻った。

 重症者は神官が治癒の魔法で癒していく。

 再び立ち向かう勢いがついたところで、


「聞け、我々はメシを食える。だが、魔獣は食っても寝ても回復しない。そして現状は互角以上。もう勝ちは決まったぞ。よって諸君らは最後まで立っていられる戦いをするように。よいか‼︎」

「「「応ッ‼︎」」」


 以降も同じ規模ならば、抑えるたびにこちらが有利になっていく。魔獣の群れはすり減る一方。

 そんな方便を兵士たちは受け入れた。

 なかにはオレの詭弁に付き合ってくれた者もいるようだが、水を差すようなことは言わず、そういう者ほど淡々と装備を整えていた。


 そう。問題は装備の維持。盾ばかり気にしていたが、武器や防具も、魔獣と同じように回復はしないんだ。

 硬い鱗を打ちつけたメイスは早くも突起が丸まりはじめていて、鋭い爪や牙の攻撃を受けた防具は裂けたまま。

 もちろん予備や補修部品は持ってきているが、戦闘の頻度によっては修理の手が追いつかなくなってしまう。


 このあたりを解決するのはオレの仕事。

 執政官と相談するか、避難民のなかから職人を見つけて依頼するか……。


 とにかくポジティブに考えよう。

 量産品でドラゴンとやり合えているのを喜ぶべきで、形あるもの皆壊れる、だ。壊れたなら直せばいい。


 勝ち筋が見えた防衛初戦。

 兵士たちが奮闘するなか、オレは交換パーツの追加発注や修理の人手確保ばかりを考えていた。その頭の片隅では国庫の心配も……。


 こりゃあ完全に麻痺してるな。

 そうならざるを得ない立場なので、ドラゴンを倒せたという歓喜や傷つく兵たちへの感傷をまとめて押し込めて、オレは王様業に専念した。

 ふと頭をよぎる『これって王様の業務なのか?』というツッコミも併せて封じて。


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