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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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前に聞いたよ


 王様二年目は魔王の電撃お忍び訪問にはじまり、各国神父団の一時的な保護と、ゴタゴタの気配は絶えない年だった……。


 そんななかでも、前進したことだって多々ある。

 ダンジョン管理局は機能して、国民の基礎的な健康度合いは増した。これによって生産力アップも如実に現れている。


 他にも、税制改革と、それに伴う新貨幣『白銅貨』の発行。

 物納をやめて超過累進課税とする徴税ルールの改訂だが、施行初年度は周知にとどまる。

 来年度の徴税から前年度の所得をもとに算出されるので、いま税務に携わる役人たちは、他所から応援を求めるほどのてんてこ舞いぶり。

 それより一足先に、白銅貨を公共事業における支払いとして流通させはじめた。


「街でも白銅貨は普通に使えているか?」

「はい陛下。新規貨幣の信用は『魔法による樹木資源産出事業』の支払いという形をとったことにより、レガリスレクス王国の公式通貨として扱われています。加えて、商工連盟総裁の働きかけも大きいのかと」


 木と木の二属性『異常繁殖魔法(オーバーグロウズ)』による、挿し木の異常生育を利用した樹木の生産——長ったらしいので、正式名を魔法による樹木資源産出事業とした。

 これでもまだ長いから、魔樹産と略すときもある。

 なんだか新たな魔物を産み出すみたいで不穏な響きではあるが。まぁいい。言いやすさ優先だ。


「最近では、魔樹産の現場へ商人が屋台を引いて出向いているそうですよ」

「あれだろ。どうせ、白銅貨一枚か二枚で買える弁当やら酒やらを売ってるんだろ」

「よくわかりましたね」


 稼いだそばから使わせようとするあたり、儲けよりも金を使う体験をさせる意図が強く感じられる。

 おそらく総裁の差し金だな。こんど会ったら礼を言おう。


「つづいて、新装備ですが——」

「前に聞いたよ。王国兵の六割に配備済み、で、今年度中に交換を済ませる、だよな」

「はい。では、ユエニスの成長経過についてですが——」

「それも聞いた。廃墟の地下ダンジョンに移ってから成長が著しいんだろ。というか経験値稼ぎの場所を変えるように提案したのは他でもないオレだぞ」

「でしたな。現在、第六層を攻略中とのことです」

「それはすごい。で? 他には?」

「ええとぉ……」


 オレも人のことは言えないけどさ、へベス大臣、ソワソワしすぎだ。一刻も早く政務を済ませたいあまり報告が重複してるじゃないか。


「もう漏れはないよな、なっ、なっ」

「陛下! 我が子の顔を見たいからと、そのように政務を疎かにしてはなりません」

「そうは言うが大臣だって、さっきから孫の顔見たさに報告がおかしくなってるぞ」


 互いに見合うとこ、しばし……。

 執務室には沈黙が流れる。

 そこへ、


「まぁたヘーカとパパ見つめ合ってる〜。それ、変な噂が長ちゃうからやめたほうがいいってー。ねー、オクリアーレぇ?」

「……ぁあぅ? ぁぶぁ……」

 

 首が座りはじめた娘——オクリアーレを抱いたプエルラーレがやってきた。


「こ、これ、プエルラーレ。このような場所に赤子を連れてくるなどと」

「このような場所って……、ここ執務室じゃーん」


 へべス大臣は文句を言いつつも席を立ち、娘と孫の近くへ。赤ちゃん言葉でオクリアーレとコミュニケーションを取ろうとしている。

 気持ちはわかる。お目目くりっくりな可愛い孫が、あうあうと言葉を返してくれるのだ。オレだってそうしたい。

 しかし仕事とプライベートは分けるもので、でもでも……。

 このような葛藤が行きつくのは、しょうもない悪ふざけをしてみたい衝動。

 いかんいかんとわかりつつも、そのとき我が子はどんなリアクションをするのか見てみたくなる。

 結局、オレは誘惑に負けた。

 サッと立ちあがるなりオクリアーレの前に跪き、


「これはこれは女王陛下。ささ、こちらへ」

 

 つい、赤ん坊に傅く遊びをしてしまったのだ。


「——陛下、なんてことを!」

「ちょ、パパ! 急におっきな声出したらオクリアーレ泣いちゃうってば!」

「——ハッ‼︎」


 オレに諫言しようするなりプエルラーレに怒られ、へべス大臣はあわあわと。

 だがオクリアーレは泣かず。


「ぁあ〜い。……きひっ。きゃはは!」


 キャッキャとオレの頭をペシペシペシペシで、満面の笑み。


「もー、オクリアーレもメッてしてるじゃーん。変な遊びしないでよ。執務室だからってヘーカ油断しすぎー」

「……すまん」

「女王さまごっこのつづきはあたしの部屋で、ねっ」


 王冠に触ったりオレの髪を引っ張りだしたオクリアーレをあやしながら、プエルラーレはパチリとウインク。


「また来るから。それまでパパもヘーカも、お仕事頑張って〜」


 どうやらオレらのそわそわっぷりはお見通しだったらしい。

 


 こんなふうに王様三年生の日々は過ぎていく。

 だが、いつまでも穏やかな風が吹くばかりではなかった。


 魔女ネヴィア追跡の任に就く元盗賊ギルドギルド長のラトロより、急報が届く。

 それは、定期的な人員入れ替え時の報告とは違い、魔王との最前線——リメースフロンスからの報せも携えてだった。

 国王暗殺未遂の罰として最前線視察に向かわせたオブルスが、ラトロ伝いに届けたのは、


『リメースフロンスのダンジョンにて、大規模なスタンピードが発生。現在、勇者と魔王の陣営を巻き込んで危機は拡大中』


 王国へと向かう嵐の前触れだった。


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