頷いてるんじゃないよ
木と木の二属性魔法の成功により、燃料問題は解決した。
しかも新造した白銅貨も広められて一石二鳥。
いや、雇用対策や生活支援という観点を含めたら、一石四鳥五鳥にもなる公共事業だ。
今回ばかりは自画自賛してもいいんじゃないだろうか。
そして燃料に心配がなくなり、アフトギウムの量産も順調。
徐々にだが、新装備も整いつつあった。
先行導入したのは、ペデモント将軍が担当する海岸の塔ダンジョンの兵士たち。
今日はその視察に来ていた。
さっそく案内されたのは、第四層の階層主の間。
ここでボスキャラとして現れたのは、鋼鉄巨兵という巨大ブリキロボみたいな魔獣だ。
以前、兵士たちは苦戦していた相手……。果たして、新装備の威力やいかに。
魔法兵の隊長が号令をかけ、火と熱の魔法がメタルフレームに殺到。先手をとる。
つづけて、主に元盗賊らで編成された兵士たちがメイス片手に前へ。メタルフレームの反撃を掻い潜り、熱せられた脚を打ちつけて外骨格をベコベコに。
ここまでは以前とほぼ同じ。
若干レベルアップしたぶんの差はあれど、展開は大きく変わらず。
しかしここからだ。
前回は、盾兵がカバーに入った際に吹き飛ばされたり怪我を負っていたが——
メタルフレームの巨大な拳を盾の流曲線が受け流した。往なし切れずに残った衝撃も、内蔵された板バネ構造が打ち消す。
ギリギリまで肉薄した盾兵のなかには、尖った角をメタルフレームのつま先へ突き立てた者もいた。
そうやって魔法攻撃再開の準備までの間を稼ぎきったのだ。
こうなると以降は必勝パターン。
魔法、打撃、防御、この繰り返しで削り切る。
なかには広範囲の薙ぎ払いに巻き込まれた者もいた。激しい攻防に完璧など求められるわけがない。
だがだ、アフトギウムの防御プレート、それと革とメッシュの複合構造の防具が彼らの生命を繋ぐ。
鋲留めされたプレートは爆ぜ飛ぶも、本人の負傷は自力で立ち上がれる程度。
「あと一息だ!」
「「「応ッ‼︎」」」
ペデモント将軍の励ましを受け、兵士たちはやりきった。
第四層の階層主を王国兵のみで撃破したのだ。
「陛下、ご覧のとおりです。継戦能力が大幅に向上しました」
「長く元気でいられるぶんだけ、魔獣撃破の効率も上がるな」
「はい。防具類の負傷緩和もさることながら、動きやすさが利いているのかと。なにより盾兵です!」
ここを強調して、ペデモント将軍は嬉しそうに語る。
「魔法兵も棍兵も休めば動けますが、負傷した盾兵は復帰にも時間がかかります。場合によっては……」
「水と水の二属性魔法でも治癒できないこともあるか」
これは、間に合わない事態を指してだけではない。治癒魔法までの時間をあけたぶんだけ、その効き目が悪くなるという魔法の特性もあって。
褒めてくれるのは正直嬉しい。喜んでくれるのも。でも、
「結果は地味——」
「いえ、非常に大きな成果です」
キッパリ言うようになったな。
とはいえ実際、攻撃力が増したわけではない。そこは兵士諸君によりいっそうの努力を期待するしかないか。
「戦いつづけられるのならば、我らは成長できますので」
「そのとおりだな。つまらない謙遜をした」
「とんでもありません。兵士らへのお心遣いは防具の造りから伝わってきます」
そういうの居心地悪くなるからやめて。
こらこら、オマエらも聞き耳立てて頷いてるんじゃないよ。まったく。
「破損箇所、負傷箇所、あとは兵士らの要望もまとめておくように。悪かったところだけでなく、以前の装備と比較して良かったところを心掛けて報告してくれ」
「……良かったところを、ですか?」
どうやら忖度しろと聞こえてしまったようだ。
「良いところを伸ばしたい。というか、ヒトでもモノでも褒めるのって意外と難しいんだ。批判の方が考える労力が少ないし、良い指摘より悪く言う動機の方が大きいからな」
それを愚かとは言わない。そういうもんなのだ。
えてして、こういう調査ではネガティブな意見が集まりがち。
するとどうなるか。マイナス点の解決に改良のリソースが裂かれて、結果として良さを潰してしまうなんてことも起こり得る。
「受け取る側にしても批判は目立つうえ、対処しやすいから優先してしまいかねない」
「そういうものなのですか?」
「ああ。良いところを伸ばすより、悪いところを削ったり変えたりする方が楽だろ」
これのぜんぶがいけないとは言わない。
でもオレが多く見かけたのは、
『ユーザーのご意見を取り入れて、さらに使いやすくなりました』
というサービスや商品が、たいていダメになっているパターンだ。
アプリなんかがいい例か。なんで変えたんだよって思うことは多々あった。
「もちろん職人たちは取捨選択をする。でも、なるべくなら自分が使うものが良くなった方がいいだろう。だからこそ心掛けてほしい、ペデモント将軍が意見を調整しろって意味じゃなくな」
「はい。兵士らに心掛けるよう伝えます」
生命を守る道具だ。下手にいじって性能低下なんてしたら目も当てられない。だから、これくらい慎重でいいとオレは思う。
なんにせよ、新装備はまずまずの出来なようで安心した。
おっと、いかんいかん。さっそくオレが『まずまず』とか評価を下げてはダメじゃないか。
想定した性能は充分に発揮されて、結果にも現れた。盾兵の負傷が減ったという点は非常に喜ばしいこと。
あと、盾の角で攻撃もしていたのを良かった点として挙げておこう。




