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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第二章

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そんなに驚くなよ


 こないだエリテマソーラときた岩山——

 この世界にもヤナギやポプラみたいな植物があったので、等間隔で挿し木をして水を撒く。でも、ここに根づいてもらう必要はない。


「では皆さん、はじめてください」


 今回は初の試みということで、元主席導師でもあるマギアレフィカに陣頭指揮を頼んだ。

 参加者の多くは農業従事者だが、その性別や年齢はさまざま。

 共通しているのは——


「「「棘荊魔法《ブライア》」」」


 木属性魔法を拾得していること。

 一斉に唱えられた魔法により辺りは荊だらけに。元あった挿し木と地面の茶色を、緑に染めていく。


 成功ならず……。

 まだまだと、二度、三度と繰り返していく。

 魔力のみで構成された蠢く荊は、互いに絡み合い、時間経過で消える。

 それでも追加される魔法の荊の方が多く、緑の割合は増える一方。

 

 だんだんと魔力の尽きた参加者が目立ってきた。

 彼ら彼女らは、同行した役人から支払いの手続きを受けて給金を受け取る。

 こうして抜けた穴には、順番待ちしていた参加者が加わった。


「どうして仕事を終えた者は帰らない?」

「なんでも二属性魔法を見てみたいそうです。も、もし邪魔なようでしたら解散させますが」


 疑問に答えてくれた役人。

 どことなく軽く返事しちゃった感は拭えないが、べつに見られて困るものでもない。

 とはいえ、昼食は作業中ずっと滞在するオレらのぶんしか用意してないぞ。


「次から屋台でも出すか」

「弁当は持ってきているそうです」

「ほう」


 見れば、仕事を終えた者らは花見よろしく好き好きに腰掛けて、パンやら漬け物やら干し肉を食っているではないか。

 さすがに酒を持ち込んだ不心得者はいないようだが。


「本当は、稼いだ金を街で使ってほしいんだがな」


 まだ、そこらでテイクアウトって感覚は芽生えてないらしい。


 それにしても……、すでに交代は三巡目。

 朝からはじめて昼を過ぎた。


 日当をやめたのは正解だったな。

 一日中の従事はムリだろうと時給にしたんだ。一時間で白銅二枚。

 飯屋で二食ぶんくらい。酒場ならつまみで一杯やれる程度。


 魔力が尽きるまでの労働なので個人差が大きい。でもだいたい鳴らすと三時間前後。

 木属性魔法を唱えるだけでなく、挿し木の運搬や差し込みもやってもらったから振れ幅はあるが。


 ちなみにこの白銅貨は、銅に二割ほどハズレ銀を混ぜたものだ。なのに、価値は銅貨の五倍。

 つまり、銅貨一枚換算で六百二十五%も価値が上がったのだ。

 ここから鋳造費を抜いても、持ち出しはほとんどなく貨幣の流通量を増やせると言う算段。

 もちろん打出の小槌ではない。金による価値の裏付けがあってはじめて白銅貨の価値が生まれるわけで、だから調子に乗り過ぎないようにしないとならない。


 そして今回はいい機会ということで、王国の公共事業の給金に充てたわけだが、


「こんなキレイなカネを見たのははじめてだ」

「どうも銅貨五枚とおんなじらしいで」

「なら、ワシらが使うぶんにはちょうどええな」


 こんなリアクション。

 貨幣に慣れていない農業従事者が多いので、とくに訝しむ様子もなく、ピカピカの『五百円玉』と刻まれた白銅貨に喜んでもいた。


 ちょっとした遊び心……っていうのは冗談で、もしオレの他にも似た境遇の者がいるなら、もうこちらの正体はバレているはず。オレは目立ちすぎだからな。

 だから『警戒せずに声をかけてね』という意図を形にしてみた。

 ソイツに悪意があれば同郷の者でも対処しなくてはならない。こういう覚悟も込めてある。


 それにしても、なかなか上手くいかない。

 出費が回収できるか心配になってきた。


「どうだ、マギアレフィカ」


 どうだと聞かれてこうだと返せない状態のままらなのはわかっているが、焦りのあまり、つい曖昧なことを聞いてしまう。


「私の見立てですと、結果への意識が散漫なのかと」

「参加者の息が合っていない、みたいな意味か?」

「はい」


 ふぅむ。どうやら二属性魔法の発動はタイミングだけの問題じゃないらしい。


「ちょっとインタビューしてくる」


 オレはそれだけ言い残して、見学している連中のところへ。

 ちょうど大欠伸かいて暇そうな爺さんがいたので、話しかけた。


「ひえ! おお王様っ⁉︎」

「そんなに驚くなよ。いや、驚かせてすまないな。でだ、一つ聞きたい」

「……はあ、ワシにですか?」

「ああ。農作業するときに掛け声をかけ合ったり、歌をうたったりはしてないかと思ってな」


 そんな余裕あるわけないだろって表情。というより答えられないことに困っているのかも。

 だが爺さんは「あっ」となにかを思いついた様子。


「収穫祭んときの、畑ぇ耕すのを模した踊りがありまして……」


 それもだんだん尻窄みに。

 しかしオレが求めていたのな、これ!


「それだそれ! ちょっと見せてくれないか。他の者らも、踊りを見せてくれた者には一杯奢るぞ」

「——へ、陛下!」


 追っかけてきた役人は目を白黒させる。


「いいから。手間を取らせるが対応を頼む」

「御意」


 それから数名の役人が王都まで買い物に走り、


「聞いたかみんな! 踊りの褒美に王様が一杯奢ってくださるとよ」

「ほほっ、そいつぁスゲェ」

「踊るぞ」

「「「おおーう!」」」


 どうやら酒の一杯に『王様の奢り』というプレミアムがついたらしい。

 それを見学していた者たちは面白がって、じゃあさっそくと手を打ち、声をあげ、その場で踊りはじめた。

 

 次第にそれは祭りの熱を帯びていき、いまも木属性魔法を唱える者たちにも伝播。そして——


「陛下へいか! 発動しました! あれは紛れもなく『異常繁殖魔法(オーバーグロウズ)』です!」


 見ればわかることを、マギアレフィカは小さく跳ねながら伝えてきた。

 表情に微かな変化しかない彼女なので、無表情のままつま先ジャンプしているみたいで滑稽だが、ツッコミなんかあとでいい。


「大成功だ! みんな、今日は好きなだけ飲んでいいぞ! だからもっと踊りを! 踊りつづけてくれ!」

「「「おおーう!」」」


 役人たちにはもういちどお使いを頼むことになるんだが、それをオレが言う前に、二属性魔法の成功に喜んだ彼らは率先して動いてくれた。


 巨木が二本三本と増えていく。

 エリテマソーラのときのように広い範囲ではなかったけど、それでも想像以上の成功だ。

 成功率に加えて、踊り要因も含めて計算し直さないといけないが、これは採算とれるなんて程度で済む効率じゃないぞ。


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