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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん
第一章

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ベタなエピローグだよ


 棒で皮袋をペシペシと叩いている甘ギャルふう第三王妃の姿は、見ていて微笑ましくもあった。

 だが、拗れた距離感を踏まえたオレの脳内では——


 プエルラーレが現れた。

 プエルラーレはとても機嫌が悪い。

 王様は混乱した。


 このような脳内メッセージが浮かびあがる。

 よくよく考えたら、彼女とは肉体のうえでは夫婦という関係。略して肉体関係。ああ、途端にいかがわしくなってしまった。意味も真逆だし。

 ダメだ、今はまともに向き合えそうにない。

 となれば、ここは戦略的撤退。回れ右だ——


「ふーん。そうやって逃げるんだー」


 王様は逃げ出した。

 しかし回り込まれた。

 拗ねたプエルラーレからは逃げられない。

 王様はダルマさんが転んだ状態で硬直した。


 ええい‼︎ 現実逃避したいからって脳内ゲームごっこに逃げるんじゃない、オレ、踏みとどまれ!

 でも慎重に、地雷だけは踏まないように、それとなくを心がけて……。


「実はプエルラーレに似合いそうな——」

「あんな豪華なネックレス、あたしには似合わないもんねー」


 いきなりドカンかよ。


「ち、違うぞ」

「んん〜? なにが違うのぉ」


 やばい自ら袋小路に飛び込んでしまった。


「あたし三番目だしー、エリテマソーラお姉さまみたいに色っぽくないしー、どっかに伝手があるわけでもないしー」

「そ、そういうことではないぞ」

「どういうことではないの〜?」


 参った。序列など気にしたことないけど、簡単に否定はできない。お世継ぎ問題とかそういうゴタゴタの種になるからだ。

 オレに関して言えば、それ以前。未だにその手の接触すらなしなんだけどさ。


「プエルラーレは頑張ってくれてるじゃないか。オレは日々、ものすごく感謝しているんだぞ」

「ふーん」


 さまざまな意図の込められた『ふーん』だ。

 クッ、オレではすべてを解読できそうにない。


 と、そこへ——


「おや、プエルラーレもいっしょだったのか」

 

 へべス大臣の登場。なにやら小包みを持っているようだが。

 問題はそっちじゃない。あまり気にしないようにしていたけど、仮にも義父。不仲をみせるのは非常によろしくない。


「ふーんだ。ヘーカはパパと仲良くしてればー。いいもーん、もうそういう目で見られてても、違うよって言ってあげないんだから」


 だ、誰がだ! 誰が未だにそんな誤解を引きずっている!

 へべス大臣が痩せて若干イケオジになったからか? それが疑惑の火種を燃え上がらせたのか⁉︎


 どうでもいいけど大臣もなんか言えよ。拗ねてるプエルラーレも可愛いなぁ、じゃないっつうの。

 オマエは蚊帳の外だからニコニコ見ていられるかもしれないがな、こっちはどうしていいものやらなんだぞ。


「そうそう陛下、こちらを。商工連盟の総裁からの届け物です」


 それを早く言えよ! などとツッコミしてる場合じゃない。

 よしよし、ようやく出来あがったか。

 こんな物で窮地を脱することができるかは不明だが、食うがいいプエルラーレ——オレの誠意を。


「ん? あたしに?」

「ああ。これはダンジョンで手に入れた物ではないけど、プエルラーレに持っていてほしいんだ」


 大臣から受け取った小包みを開け、緩衝材のなかから取り出した銀細工を手渡した。


「棒のペンダントヘッド⁇ 変わった意匠だけど……」

「真ん中に穴が空いてるだろ、そこから思いっきり息を吹き込んでみてくれ」


 コクッと頷くと、プエルラーレはカプリと端を咥え——


 ピィイイイイイイイイイイーッ‼︎


「んな! なにこれ〜⁉︎」

「ホイッスルだ。危ないときは、それを吹き鳴らすように」

「……そ、そしたらヘーカが助けにきてくれるぅ、みたいなぁ?」

「誰かが来る」


 プエルラーレのモジモジがピタリと止まった。いかん、正直に答えすぎたか。


「も、もちろんオレも聞こえるところにいれたら駆けつける。だからイタズラで鳴らすんじゃないぞ」

「てひひ。は〜い」


 ホッ……。なんとか機嫌が治ったようだ。

 普段から身につけていられるよう、かなりデザインは凝ってもらったからな。気に入ってもらえてなによりなにより。

 おかげでオレの歳費はスッカラカラカン。落ち着いたら、ダンジョンで小遣い稼ぎをしてこないとだ。

 まぁ、喜んでくれたならそれでよし。これにてミッションコンプリート!


◇


 ——その晩のことだ。

 オレが寝息を立てはじめる間際、控えめに部屋のドアが開いた。両開きの片側だけ。

 つづく、ふぁさり、柔らかい衣擦れの音。


「ねぇ、ヘーカ起きてる〜?」

「……寝てる」

「起きてるじゃーん」


 こんな夜更けになんのようだ、と身体を起こすと、そこには——生まれたままのシルエットがはっきりわかるプエルラーレがいた。


「あ、あられもない‼︎ 年頃の娘がなんて格好を! よりにもよって単身男性の部屋に押しかけるなんて、どど、どういうつもりだっ」

「いや、あたしヘーカの妻だし」


 そういやそうだった。


「でも、てへっ。照れちゃってるヘーカもなんかいいかも〜」

「お、おい待て。オレらにそういうのはまだ早いと思うぞ。なっ」


 ベッドに手をつき、にじりよるプエルラーレ。揶揄ってるわけではないらしい。

 だ、誰かオレにホイッスルをくれ! ピーッてされる前にピーッて吹くから!


「オ、オッサンをおちょくるのもいい加減に……って聞けよオイ! 待て待て、待てだプエルラーレ。頼むから待てってばぁぁぁ〜ッ!」


 あー、あー、あー……。



 ——セルフレイティング——


 ——セルフレイティング——


 ——セルフレイティング——



 そして一夜が明け——ちゅんちゅん朝ちゅん。


「おはよ、ヘーカっ」

「あ、ああ」

「んじゃ、あたし行くね〜。またあとで、てっ、あいたたッ。てへへ〜っ」


 ふぅ……。

 太陽ってオレンジ色してたのか。


「魔法、使えなくなってないよな?」


 などと古のネットミームを持ち出して現実逃避。違うか、オレは余韻に浸っているんだな。

 まだ心地よい重怠さは残るが、切り替えて、身なりを整え部屋を出る。と——


 タイミング的に一番会いたくない人物がいた。


「だ——、大臣!」

「……。昨晩(ゆうべ)はお楽しみでしたね」


 さんざんRPG的なお約束にダメ出ししてきたオレだが、これにはなにも言い返せなかった。



 第一章はここまでとなります。お読みいただきまして、ありがとうございます。


 本作、多くの方に読んでいただいておいて、いまさらなのですが、

『無双もしなければ失敗もする。こんなWEB小説らしからぬ現実路線なオッサンが主人公で、読んでくれる方はいるのだろうか?』

 と、不安を覚えながら書きすすめました。

 なので第一章完結まで読んでいただけたことを、心より嬉しく思っております。


 さて、第二章ですが、

 王国内の話から国外へと広がっていきます。

 9/15現在、ストックは5話のみ。ただいま執筆中です。


 少しでも「つづきが気になる」「おもしろい」など興味をもっていただけたのなら、ぜひとも【ブクマ】【★★★★★】【レビュー】で応援してくださいませ。

 執筆の励みにもなりますので、よろしくお願いします。


             枝垂みかん

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