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よりにもよって王様かよ! 中間管理職のオッサン、勇者と魔王がいる異世界に転生したので、RPG的なお約束にダメ出しする  作者: 枝垂みかん


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たくさん稼いでこいよー


「首飾り……だな」


 宝箱の中見は、夜会のドレスに合いそうな真っ赤な石があしらわれたネックレスだった。


「なぁペデモント兵士長、これってどんな効果があるんだ? ちょっと試してみてくれ」

「——え、ええ⁉︎」


 なにを驚いている。

 ダンジョンの隠し部屋で見つかったネックレスだろ。だったらステータスアップとか魔法の威力上昇とか、そういう類の恩恵がありそうじゃないか。


「そ、そのご下命とあらば」

「——なりません兵士長! ここは自分が!」

「いやしかしだな……」


 いったいなんのやり取りだ、これ。

 あっ、女性向けのアクセサリーだから着けるのに抵抗があるのか。気持ちはわらなくもない。


「これまではどうしてきた?」

「ダンジョンでの拾得物は国庫に納めたあと、商業連盟に卸していたかと」


 なんと杜撰な、とは言えないか。これは完全なるオレの手落ち。

 このぶんだと、冒険者に口八丁で納税逃れをされていそうだ。商人に買い叩かれている可能性だってある。

 鉱石のように分割できないアイテムの価値を記した表を、なるべく早いうちに調達(・・)しなければ。


「あとで王妃たちに聞いてみる」

「では陛下の私室に届けるよう手配いたします」

「頼む。ところで、この隠し部屋はまたすぐに利用できるのか?」

「日を跨がないと魔獣も宝箱も現れません」

「正確な時間は?」

「——も、申し訳ありません!」

「怒ってない怒ってない。オレは優し〜く話している。だから、叱られているみたいなリアクションはしないでくれ」


 パワハラしてる気分にさせられるし、周りからそう見られかねないからな。

 この手の危機管理意識だけは未だに抜けない。


「明日の同じ時間に。明後日は一刻早く、みたいな感じでやってみるといいかもしれないぞ」

「ハッ!」


 ペデモント兵士長の生真面目さは好ましいんだけど、なんというか、このタイプって知らず知らずのうちに妙なフラグを立てていそうで放って置けないんだよなぁ。


「部下たちの管理もしっかりしているし、慣れないダンジョン内で立ち回りの工夫までしている。だから、オレにペデモント兵士長に対する不満はない」

「より励みます!」


 彼のモチベーションの高さは、職務への忠実さゆえか、それとも王国への忠誠心からか。


「陛下のなさりようは、自分の故郷にも届いておりまして」

「ほう」

「ダンジョンを封鎖したことで、魔獣の害も減り、故郷の友人曰く『今年は楽に冬が越せそうだ』と自分の父も母も喜んでいたそうです」

「それは鼻が高い。ペデモント兵士長も親孝行ができてよかったな」

「ハッ!」


 ダンジョン封鎖は着実にオレの評判を上げ、同時に、従事する兵士たちの人気にも波及しているらしい。

 いいこと尽くめじゃないか。

 反比例して、冒険者組合への風当たりはキツくなりそうだが。


 おおっと、噂をすれば冒険者パーティーのご登場だ。

 しかしなぜか、こちらをチラチラ見るばかりで先に進まない。


「ここより第一層の階層主の間となります」

「そういうことか。だったら順番待ちしなくていいと伝えてやったらどうだ」


 そろそろダンジョン探索のノウハウを盗まれていると察しはじめたってことかな。


 兵の一人が向かうと、しぶしぶといった様子で冒険者パーティーは階層主のフロアへ踏み込んだ。

 すると、なにもない広間に火柱があがり——


巨大火蜥蜴ジャイアントサラマンダーです」


 隠し部屋で見たのとは比べ物にならない恐竜サイズのサラマンダーが現れた。


「あんなものどうやって倒す……」


 冒険者パーティーはたったの五人なんだぞ。


「加勢してやらないと!」

「それはなりません。そのような行いは『横殴り』と呼ばれるマナー違反ですので。いらぬ反感を買います」


 こんどはMMORPG用語かよ。

 どうでもいいけど、むざむざ魔獣に喰われるところなんか見たくはないぞ——というオレの心配は杞憂に終わった。


 なかなかの連携プレーで、サラマンダーが火を吹く直前に顎をカチあげて炎を逸らしたり、盾役が頭のを押さえているあいだに弱い腹を狙ったり、見るべきところは多かった。

 あっという間に弱らせて、巨体はみるみるうちに砂となって消えていったんだ。


 そして残された鉱石らしき物を拾い、


「チッ、ハズレだ」

「おい!」

「おっといけね。ジロジロと盗み見されてたんだったな」


 それを荷物袋に納めた。こちらに聞こえるように悪態をつきつつだ。

 オレが誰かを知ってもこの態度。すでに冒険者の末端まで王様へのヘイトは溜まっているらしい。


「ほぉう。階層のボスが落とすアイテムには当たり外れがあるのか。兵士長、いいことを聞いたな」

「——ッ‼︎ チッ。行くぞお前ら」


 言葉遣いや素行はともかくとして、別にこの冒険者が特別な悪人ということではない。

 それぞれに立場があり、持っていた利権を奪われれば反発するのが当たり前の反応だ。

 普通は、自分が得た利益によって他者が苦しむことになるなんて誰も考えたりはしないもの。


 悪いのは腐敗した構造そのものである。

 だから、


「たくさん稼いでこいよーっ。そのぶん国が潤って、みんな平和で豊かに暮らせる!」


 すまんが今は敵対する者として煽らせてもらうぞ。だが、冒険者を悪いようにしないから。

 ピリッと肩を怒らせた若者の背に、オレは無言の約束をした。


「で、オマエらは巨大サラマンダーを倒せそうか?」

「「「……」」」

「了解。絶対にムリはするな」


 階層主の間を回れ右して、ここからはオレも攻撃に加わり経験値を稼がせてもらった。


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