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(仮)俺の花嫁は傾国の悪女ではない、多分。(2026.05)  作者: MAYAKO


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第七話 湖畔にて     

こんばんわ。

投稿です。

このお話、面白いですか?


 数日後。


「湖を見に行かないか?」


 それはデートの誘い。

 まだ、手と腰しか触っていない妻。

 日常でも距離を縮めないと、と思い、思いついたのがピクニックである。


「まぁ湖の視察も兼ねてだが」


 そう、視察は口実である。

 バイセンの妄想計画では、シュガーロッドと二人で一頭の馬に騎乗し湖へ、である。

 そして湖で……ごにょごにょ……である!


「魔力が満ちて、凍らない湖なんだ。珍しい鳥や魚がいるし、緑が……」


「行きます!」


 即答である。

 スパーリングはしたが、技に夢中でどこに触ったか、ろくに覚えていない妻。

 はっきりと覚えているのは、腰に当てられた暖かい大きな手。


 思い出しただけでも、全身が溶けてしまいそうである。


「天気もいいし……今日は休日なのだ」


「ではお弁当作りましゅね」


「え?」


「若、湖に?釣りですか?狩りですか?用意いたしましょう」


「は?」


(え?ゲンジロウ、付いてくるの?)


「ゲンジロウ、副団長として、今日は任せようと思っているのだが?」


「気になさらずに、我らがいなくてもちゃんと機能しますよ、日々の訓練はダテではありません」


「姫しゃま、サンドイッチでいいでしゅか?」


「はい!ソルティ!」


 ニコニコニッコのシュガーロッド。

 まぁ、この笑顔で良しとするかぁ、と少し暗くなるバイセン。


 ここでバイセンとシュガーロッドは、我が耳を疑うセリフを耳にする。


「ソル、タマネギは抜いてくれ」


「はぁ?ゲン、誰にモノを言っているでしゅか?」


「「ソル?ゲン?」」


「どうかしましゅたか?」


「あの、ソルティ、副団長をゲンと呼ぶのですか?」


「はい、お互いの主が夫婦になったのでしゅ、ここは協力関係を築き情報交換を密にと思い、ゲンと呼んでましゅ」


「ゲンジロウさんは副団長ですよ、皆の手前もありますし……」


「姫しゃま、ゲンは副団長でしゅが、ソルティは拳聖でしゅ」


「ソルティが格上だと?」


「はい、当然でしゅ」


「ゲンジロウ、お前ソルティのことをソルって?」


「はい、主に苦労する者同士、何故か意見が合いまして、お互いをこう呼ぶようになったのです」


「「主に苦労する者同士?」」


「姫しゃま、最近よくバイセンしゃまとハモりましゅね」


「そ、そうでしょうか?」


「若、なにかいいことありましたか?」


「な、ナニを言っているゲンジロウ!」


 ソルティとゲンジロウの意識誘導に、見事に引っかかるシュガーロッドとバイセン。

 ゲンジロウの失言を無かったことにしてしまう。


「では先に向ってくだしゃい、サンドイッチや飲み物を持参しましゅ、ゲン、タマネギ抜きが欲しかったら、自分で作るでしゅ!」


「え?ソルティ、私も一緒に作りますよ?」


(手作りサンドを食べてもらいたいっ!)


「いえいえ、まずはお二人で湖へどうぞ」


 ニンマリ眼でソルティが応える。


(あ、二人で行ってこいと?そ、そ、そ、それって!?)


「ソルティ、湖は広いぞ?俺達の場所が分かるのか?」


 とか言っているが、明らかに明るくなるバイセン。


「はい、ソルティは獣人族でしゅ、鼻が効きましゅし、追跡は得意でしゅ」


「若、馬の用意を……」


 そう言って身支度を始めるゲンジロウ。


 ドゲシッ!


 ここでソルティのローキックが、目に見えぬ速さで炸裂する!


 モノも言わずにブッ倒れるゲンジロウ!


(ごらぁ、ついていく気でしゅかぁ?ゲン?)


(……じゅ、従者としての役目が、護衛のお役目が……)


(剣聖と弓聖に護衛がいりましゅかぁ?)


(だだだ、だが、しかし)


「おやゲン、躓きましゅたかぁ?しっかりしてくだしゃい」


「ん?ゲンジロウ?どうした?大丈夫か?」


「は、はいい」


 こうして二人は出発することになった。


 ぱかぱか。


 馬は二頭である。


「その……タンデムは恥ずかしいです……嬉しいのですが……」


 綺麗に手綱を捌き、見事な乗馬を見せるシュガーロッド。

 二頭の馬は仲良く湖を目指す。


 バイセンにとっては、見慣れた景色だが、シュガーロッドは北の大自然の景色、感動したようである。


「綺麗な所ですね、バイセンさま」


「北の辺境だが、雪と氷ばかりではない、見事な緑もある」


 湖に到着すると、散策タイム!

 この広い大地に二人きりである。

 雄大な景色、湖に映る果てしない空、遠く近く聞こえる小鳥の囀り。


「よい、天気ですね」


「ああ、少し歩くかい?」


「ええ、そうしましょう!」


 下馬し、トコトコ湖畔を歩く二人。


 ガサッ、と後方で音がする。


「……なんだ?魔物の気配はしなかったが?」


 振り向くバイセン。

 それと同時に前方の小鳥に誘われ進むシュガーロッド。


(え?なんて綺麗な青い鳥なんでしょう!お腹が黄色?)


 カワセミに似た綺麗な鳥である。


 小鳥に夢中になり先に進むシュガーロッド。


 振り向いたバイセンは焦った。


「え?シュガー?どこに!?」


 シュガーロッドがいないのである!


「いや、ほんの一瞬だ、近くにいるはず!」


 シュガーロッドはその脚でかなり進んでいた。


 パシャ!


 水音。


「……を……」

「はい……」


(え?人の声!?それもどこかで聞いたことがあるような?)


 岩場に出ると、そこには二人の人物がいた。


「母さん、どう?」


「今日は、まだまだだねぇ」


 そこには釣りをしているシューナーとカクがいた。

 装備も釣り用で、目立つと言えば、カクのロングソードくらいだ。

 帯剣以外は、まさに釣り人である。


「え?」


 驚くシュガーロッド。


「「え?」」


 ビックリするシューナーとカク。


「え?シュガーロッド、あなたどうしてここに?」


「え?あ、あのおはようございます、お義母さま、カク義兄さま」


「なんだ?お前も釣りか?」


「い、いえ、私達は……」


「達?バイセンも来ているのですか……それでは大きいのを釣らないと!腕が鳴りますねぇ!シュガー、バイセンは魚好きですよ、あなたも釣りなさい!」


「え?」


 その時、ウキがピコン!と沈んだ!


「母さんっ!」

「ほいっ!」


 釣り竿を大きく引き上げるシューナー!

 糸の先には!?


 ……釣り針だけであった。


「またエサを取られましたか……カク!」

「はい、母さん。残念だったね」


 ここでシュガーロッドは思ったことを口にした。


「仲がいいのですね」

「ん?ま、まぁなぁ」


 応えたのはカク。

 カクはいつもと違い、母親の世話をこまめにしているのだ。

 え?この人、こんな人だったの?とシュガーロッドが思う。

 もしかして横柄な態度は、城内だけとか?


 その姿を見て、聖槍である祖父を思い出すシュガーロッド。


 釣りも教えてもらったのだ。


「エサ、ちゃんと付けるのですよ、カク」

「はい、はい」


 よく見ると、シューナーはエサを付けない。

 針にエサを通すのはカクだ。


 エサは生き餌、ウネウネと動くミミズのような虫である。


 ポチャン!


 ゆっくりと沈んでいく虫。


(……え?もしかしてお義母さま、虫に触れないとか?)


「おい、シュガーロッド、バイセンも来ているのか?」


「は、はい」


 ゴシゴシと湖の水で手を洗うカク。


「これ、カク!水面を乱すでない!」


「はいはい」


(なんだ?お前ら、こんな人気の無いところ、ちゅーでもしに来たのか?)


(お、お義兄さまっ!)


(外でそれ以上はダメだぞ?噂にでもなったら……おもしれぇかも!)


(だから、お義兄さまっ!)


「カクッ!えさっ!エサ取りが上手な魚がいるっ!」


「はいはい」


 なんだかとても嬉しそうなカク。


「だからッ水面を揺らすでないっ!」


「手ぐらい洗わせて下さいよ」


「ふふっ、よし、今度こそ!」


 ポチャン!


(……皆さん、ニコニコだ。お義母さまもカク義兄さまも楽しそう)


「カク義兄さま、もしかして、お義母さま生き餌がダメだとか?」


「ああ、触れんし、釣り針にブッ刺すのもダメだ」


「ならば、生き餌ではなく、(ねり)()を……」


 と、シュガーロッドが言った瞬間!


 口を押さえられた。


 その動き、速いのなんの!

 剣聖と同等、いやそれ以上の速さ!


「むぐっ!?」


(練り餌のことは言うな!)


 コクコク。


 器用に頷くシュガーロッド。

 でもなんで?と言う目つきをしてみる。


(練り餌の存在を知ったら一人で釣りに行くかもしれん)


(!?)


(……心配なのだ、それに……その俺の……俺の役目がなくなる)


(!)


 直感!


 あ、この人、お母さんが好きなんだ!

 それも大好きだ!


 しかし、このままの体勢はヤバイ、こんな姿バイセンさまに見られたら。


 べろべろ。


「おわっ!?」


 慌てて手を放すカク!


「お、おまえ、なんちゅーことを!」


「シュガー!?」


 そこに現われるバイセン!


「カクにぃ、何を!?」


(なななななななナニをしているのだっ!?)×∞+嫉妬の業火!


「カク!カクッ!アミを!大物です!」


「え?」


「バイセンも来たのですか!?はやくっ!」


「「はいっ!」」


 綺麗にシンクロし、動き出す兄弟!


「母上!少し泳がせて弱らせるのですっ!」


 竿のしなりから見て、大物は間違いない。


「そんなに強く引いてはいけませんっ!」


「バイセンさま!アミはこれで?」


「それでいいっ!」


 格闘すること30分、釣り上げられる1m程の大物!


「うわぁ、母さん!これは凄い!」


「母上、魚拓とります?」


「大きいですねぇ!」


「ふふん!これはここで、みんなで食そうぞ!余ったら氷の魔法で冷凍し、城の者共に振舞おう!」


 そこにやって来るゲンジロウとソルティ。


「おお、お前達も来たか!見ろ!この大物!」


 お母さん、超上機嫌!


(えっと……1、2、3……サンドイッチ、たりましゅかねぇ?)


 湖畔で賑やかな昼食会が始まった!

 石を積み、火を起し、皆でご飯である。

 早速焼き魚にされる巨大な魚、味付けは塩である。

 その塩に興味を示す、シュガーロッド。


 ぺろっ。


「こ、このお塩、美味しいですねぇ!焼き上がりが楽しみです!」


「ああ、南の山の岩塩だ、母上、ワインです」


「なに?酒もあるのか?」


「ゲンジロウ、持参です」


「おおゲンジロウ!誉めてつかわす!ソルティも!このサンドイッチ、絶品じゃ!」


 チョイチョイ。


 賑やかな中、薪拾いのカクがバイセンを手招きする。


「?」


(なんだい?カクにぃ?)


(先に話しておく)


(?)


(お前の嫁が、練り餌のことを話そうとした)


(ダメだろ、それ!)


 勿論母親の釣り好きを知っているバイセン、その目は瞬時にシュガーロッドを捕らえる。


(ああ、だから慌てて口を押さえたんだ、話してくれるな、と)


(……そこに俺が来たと?)


(そうだ、本来なら指を()まれても仕方なかったんだが……)


(カ、カクにぃ、咬まれたのか!?)


(いや、ベロベロされた)


「はぁ?なにそれ?」


 思わず声が出る。そして複雑な気持ちのバイセン。

 え?べろべろ?俺、されたことないんですけど?


(お前の嫁、なんか母さんに優しいんだ、人なつっこい犬みたいというか。あ、(たと)えがわりぃか?)


(いや)


 一言否定し、妻のシュガーロッドを見るバイセン。

 その視線に気づき、手を振るシュガーロッド。


「焼けましたよぉ!バイセンさーまー!」


(おい、呼んでるぞ、お前の愛しの妻が)


(う、うるさいなぁ)


 釣りや武具、バイセンやカクの小さい頃の話し、会話は終ることがなかった。


「姫しゃま、陽が傾いてきましゅた、もうそろそろお開きでしゅ」


「母さん」

「母上」


「そうですね、今日は良い一日でした、城へ帰るとしましょうか」


「ゲンジロウ!二人をいいか?」


「カクさま、シューナーさま、ワインの飲み過ぎです!」


 どこにこんなにあったのだ?と言うくらい転がっているワインの空瓶。

 楽しい時間を過ごしたシューナーは、少し呑みすぎたようである。


「ソルティ、お義母さま達の馬を、それとお魚の残りを」


 バタバタと撤収である。


「はいでしゅ」


「シュガー、俺達は火の始末だ、残り火がないようにしなければ」


「はい、バイセンさま」


 水や魔法で火の気を断つ二人。


「……あの……バイセンさま……」


「なんだ?」


「……その」


(言わなければ、カク義兄さまとのことを)


「どうした?」


(な、なんて言えばいいの!?)


「練り餌のことか?」


「!……はい」


 最早シュガーロッドは泣きそうである。


「そんな顔するな、だけど、もうベロベロはダメだぞ」


「!……は、はい……ごめんなさい……」


(なんで私あんなこと、したんだろう……)


「さて、火の始末も終ったし、帰るぞ」


「あの……」


 一瞬、ギラリと輝くシュガーロッドの眼。


「ん?」


「その、王都流の謝罪を……」


 興味を覚えるバイセン。


(謝罪はいいが、王都流?どんな謝罪なのだ?)


「ほう、それはどんな?先程のごめんなさいで十分だが?」


「それではいけません、後ろを向き、左膝をついて下さい」


(?)


「こうか?」


(なんだこれは?)


「はい、そうしたら眼を閉じ、3つ数えて下さい」


「ああ、では数えるぞ1……2……!?」


(シュガーの気配が消えた!?)


 目を閉じてもそこは剣聖、気配で位置が分かるのだ。

 そしてシュガーも称号持ち、気配を消すのは得意なのだ!


 ちゅっ。


「!?」


 驚いて眼を開けると、シュガーロッドの顔が、目の前にあった。

 綺麗な深い緑色の眼。


 その(うる)んだ眼がバイセンを(とら)えていた。


「え?」


 段々と赤くなる二人。


「すすすすすす」


 す、を連発するシュガーロッド。

 何が言いたい?


「す?」


「す、すみませんっ!こ、こ、子供じみたことを!」


「え?いや、こ、子どもはこんなコトしちゃダメだろ?」


「でででででで」


 で、を連発するシュガーロッド。


「で?」


「で、で、では、大人げないことを……」


 逃げ出そうとするシュガーロッドを素早く捕獲するバイセン。


「ひゃぁ!?」


 軽く脇を掴まれ抱き寄せられる。


「んっ……ん……!?」


 今度はバイセンからである。


「ん?んんっ!?」


「あ、わりぃ」


「ぷはぁ、バ、バイセンさま……ね、熱烈すぎます……酸欠起してしまいます……」


「……」←見つめ合い+反芻しているバイセン。

「……」←同上のシュガーロッド。


「戻ろうか」


「……はい!……あっ!?……んっ……あん……」


 岩場を抜けると、ゲンジロウとソルティが待っていた。


「「!?」」


(ゲン、こ、これは!?)

(ソル!?何があったのだ!?)


 あからさまに頬を染め、ソワソワしながら戻ってくる二人。


((絶対なにかやってる)でしゅ!)


 パカパカ。


 全員で帰宅中。

 ニヤけ顔を必死に堪えるシュガーロッド。


(い、いけません、皆様の前で……)


 でも、気を抜くと、口元が緩んでしまう。


(ふ、夫婦なんだから、と、と、当然の行為……のはず)


 一方こちらはバイセン。


(……キキキキキキスをしてしまった……それに……)


 動揺している。


(む、胸を触って……ここは男らしく、責任を!)


 ここで気が付くバイセン。


(ん?責任も何も、妻ではないか!?)


 かなり混乱中である。


 そして夜がやって来る。


 今回はここまでです。

 残り一話、さてこの二人の未来は?結末は?

次回、最終話です。

サブタイトルは 結ばれる二人 です。

毎回ご愛読ありがとうございます。


次回予告


(さっさと食べて、一緒に来るでしゅ)

(え?)

(今夜は私とゲンの二人で、デートでしゅ)

(は?)

(デート内容は、城内外の警備でしゅ。姫しゃまとバイセンしゃまの、熱き夜を邪魔をする奴等の駆除でしゅ、いいでしゅね?)

眼がマジだ。

あ、これヤバいヤツだ。

はい、以外の選択肢、無いヤツだ。

ゲンジロウは静かに頷いた。

蘇る回避不可のローキック。


では次回をお楽しみに。

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