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(仮)俺の花嫁は傾国の悪女ではない、多分。(2026.05)  作者: MAYAKO


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第六話 その日     

こんばんわ。

投稿です。


 その日の朝。


「で、まだ起きてこないと?」


「はい」


「ゲンジロウ、たたき起こしてこい!」


「おそらく、皆さん寝ていますが」


 寝坊である。


「負傷ではないのだな?」


 ここは謁見の間。

 主賓抜きで、昨日のメンバーが全員集合している。


「はい、最前線で戦われたソルティさまは傷を負いましたが、月夜の獣人族、大事ないと言われました」


「ソルティは魔将軍を追い返したとか?」


「はい」


 しん、と静まる一同。


主賓(しゅひん)の二人は?」


 問い詰める城主のドバシィ・リュウ侯爵。


「さすがにあの魔物の数、如何に称号持ちでもお疲れでは」


 そう言うのがやっとのゲンジロウ。


「おいおい、指輪の交換で成立だぞ?ゲンジロウ、起こしてこい」


 (うなが)す長兄のマル。


「お疲れ?どっちだ?戦いか?それとも子作りか?バイセンが間に合わなければ、あの女、俺がもらうぜ、いいだろ?父上!」


 シュガーロッドがお気に入りの次兄。

 弟から奪うつもりでいるのは、半ば本気である。

 みな戦いで傷だらけで、魔物との交戦で興奮がまだ収まらない。

 その時、バン!と扉が開いた。


「「遅参、ご容赦を!」」


 入ってきたのは、これまた傷だらけの痣だらけの剣聖と弓聖。

 最終的にはシュガーロッド、前線に立ち拳で魔物を粉砕し続けたのだ。

 それ程までに魔物の数は多かった。


「ふふっ、ようやく来たか、おいバイセン、先代剣聖は戦場で傷一つ負わなかったらしいが?」


「はい、父上。私はまだまだ修行が足りませぬ」


(いいでしゅか姫しゃま、よい一夜でしゅた、と言うのでしゅよ?そして指輪の交換、それで成立でしゅ、余計なことはいっしゃい言ったらいけましぇん!)


(はい、分かっております、シュガー)


(咬まないでくだしゃいね?)


(……はい、分かっております、シュガー)


「さて、プリンセスシュガーロッド!」


「は、はい、お義父さま」


「おお、お父さまか、いい響きじゃ。魔物との戦い、見事であった。従者のソルティ・ドルティも聞きしに勝る活躍じゃったな」


「夫を支える、妻の勤めでございます」

「主を支える、メイドの勤めでしゅ」


「では、シュガーロッド、昨夜はどうであったか?」


「はい、よき一夜でした」


(言えた!)


「ほう、我が第3子バイセン、昨夜はどうであったか?」


「……はい、よき一夜でした」


「?」


 城主であり父でもあるドバシィは、バイセンの表情を見逃さなかった。


(なんだぁ?悔しそうな表情だった?剣聖であろう?昨夜の魔物に強者でもいたか?それとも子作りでなにかあったのか?)


「どうしたバイセン?」


「いえ……」


「なにか不満か?この場は古より伝わる大事な場、言いたいことはちゃんと申せ」


「……しかし」


「何があった?」


「……昨夜、シュガーに後を取られました、それが悔しく」


「………………は?」


 超疑問符の城主ドバシィ。


「ふふっ」


 一瞬、ドヤ顔になるシュガーロッド。


「後を……取られたああああっ!?」


「はい、それだけではありません、あの絞め技(ソルティ直伝の『葛締め』です)は脅威でした……」


 皆固まり、静まりかえる謁見の間。

 目を見開き、謁見の間にいる全員がシュガーロッドを見た。


((((((バイセンにナニをしたのだ!?))))))


「剣聖になって、あのような経験、屈辱(くつじょく)でしたが(はげ)みにもなります」


「屈辱?」←長兄

「励み?」←次兄


((((((ナニがあったぁああバイセン!まさか悪女の毒牙にっ!?))))))


 ここで熱い視線に応えるように、シュガーロッドが口を開いた。


「私も、あのような経験は初めてでした」


((((((!?))))))


(おいおい!バイセンッ!いつの間にそんなことができるようになったのだ!?)←長兄

(おいおい、バイセンッ!4回目の女にそこまで言わす!?兄を越えたか!?)←次兄


「聞きますと、お父さまからの直伝の秘奥義とか、感服いたしました」


 今度は周囲の視線が、城主ドバシィに集まる!


「父上、そのような技、是非私にもご伝授を」

「わ、私めにも!」


 長兄と次兄が詰め寄る!


「な、なんのことだっ!?」


 ここで凄まじい殺気の如き猛気(もうき)を発している人物が一名。


(作者注:猛気とは、獰猛の猛に元気の気、荒れ狂う気を表した造語です)


 ドバシィの妃、シューナー・リュウである。


(あなた……)


(な、何かな?シュ、シューナー?)


(私めはそのような秘奥義、受けておりませぬが?)


 小声だが、ドバシィには雷鳴のように聞こえる。


(い、いや、ちょ、ちょっと待て!)


(秘奥義とは?……是非、今夜お手合わせを)


(はいぃ!?)


(お・て・あ・わ・せ・を!)


 静かな雷鳴が轟き渡る……。


 青ざめるドバシィ・リュウ。


「……」←ソルティ、演算中。


 チン。


 答えが出たようである。


「私直伝の『葛締め』を、外したということでしゅか?」


「ああ、父上からの直伝、『桃皮剥ぎ』でな」


 ここでようやく、周囲が収まった。


「……その方ら、いったい、ナニをしておるのだっ!」


 父、激怒。


「それは剣聖と弓聖ですから鍛練です、組み手です」


 そう、この二人は技や術の鍛練が優先順位一位なのだ。

 ちょい、ちょい、と手招きする城主でもあり父親でもあるドバシィ。


「ちょっと来い」


「はい?」


(このバカ者!初夜でする組み手が違うだるぉおおおがああっ!)


(し、しかし父上、私と同等に戦える相手はそうはいません、つい、嬉しくなり)


(別の意味で、嬉しいコトしろよぉおおおお!このバカ息子!)


(で、うまくいったのか?)


(いえ、魔物の襲来でまだなにも)


(ナニしてんだ!カクが本気で狙っているぞ!しっかりしろ!お前は夫になるのだぞ!その次は父だ!)


「え?」


「いいか、この北の辺境、氷の魔力の影響で子ができぬ者も多くいる。祖父や、曾祖父になる者など稀だ」


「5人いた子も3人になりました」


「……母上……」


(ソルティ?)


(男子ばかり5人、馬車の中でお話ししましたが、お忘でしゅれでしゅか?)


(……寝ていたようです)


(そういうところでしゅ、姫しゃまの悪いところは!……長男は3歳の時病気で、次男は12歳の時魔物に襲われて)


(そうだったのですね)


 子ども好きのドバシィとシューナー。

 女の子が欲しい、と頑張ったが産まれてくる子は全部男の子だった。


 元気に育て!と頑張ったが、最初の子どもは病気で二人目は魔物の侵攻でなくした。


 この荒れた辺境、悪女と言われるくらい図太い嫁がいい、そう言ったのはシューナーである。


「シュガーロッド」


「は、はいお義母さま」


「女の子を望みます」


「え?」


「元気な子であれば、なによりですが、あなたの義母として女の子を希望します」


「え?で、ですが」


(ソルティ、こ、こ、これはとんでもない無茶振りでは?)


(取敢えず、お返事するでしゅ!)


(……なんて言えばいいのです?)


 咄嗟(とっさ)に出た言葉は「努力します」だった。


「よい返事じゃ、まぁ私達の努力の結果は5人。今は目の前にいる3人ですが。みな自慢のいい子ばかり……あなた方の努力が、報われることを祈ります……ゲンジロウ」


 無言で頷くゲンジロウ。


「では、指輪の交換を」


「「はい」」


 綺麗にシンクロし、何だか嬉しい二人。

 バイセンが取り出した指輪は銀色で至ってシンプルな指輪だった。


「これは、私が剣聖になった時、父上から頂いた指輪だ。父上は先々代国王から頂いている。魔将軍を倒した褒美だそうだ。これを君に」


「では私の指輪はこれです」


 それは紅玉が埋め込まれた金の指輪だ。


「これは私が弓聖を取った時に、お爺さまから頂いた指輪です」


「お爺さま?たしか聖槍の?」


「はい、先代王の弟です」


 お互いの大事な指輪は交換され、無事式は終った。


「これで正式な夫婦だ、お互いをよく支え合うように」


 そう言って、城主ドバシィは席をたった。

 次に席を立ったのは長兄のマルだ。


「では義妹よ、弟をよろしく」


 次は次兄のカク。


「バイセンが気に入らなければ、指輪返して俺の所に来い」


「返すつもりは、ありませんよ」


「はぁ?チッ、剣聖は取られるし、嫁まで取られたかぁ」


「カクにぃ、剣聖は争ったが、嫁は断ったんだろ?」


「そういうことに、しといてやるよ」


 それでも食い下がるカク。

 キラリと指輪を見せる。


「この指輪、欲しくないか?これは俺が剣聖を取り損ねたとき、母上から頂いた指輪だ」


「「!」」


 驚く兄弟。


「この指輪は、父上が初めて母上に贈った竜の牙で作られた力の指輪だ、いつでも用意しておくぜ」


 どうやらこの世界、お互いの大事な指輪を交換し合う風習があるようだ。

 そしてシューナーが席を立った。


「やっと私に、娘ができました、嬉しい限です」


 その言葉を聞き、自覚が生れるシュガーロッド。

 それは、なにか不思議な感覚であった。


(私は、ここの家族の一員になったんだ!とうとう4回目にして……やっと人妻になった!もう私はこの人の奥さんなんだ!)


 ちょいちょい、と手招きするシューナー。


「?」


(なんでしょう?ソルティ?)

(内密なお話しでは?)


 ソルティにも手招きする。


((?))


「近う」


((はい、なんでしょう?))


(バイセンのこと、よろしくお願い致します)


(!……こ、こちらこそ、お義母さま……)


「リン、城内の案内を」


「はい、シューナーさま。では若奥様こちらへ、武器庫や厨房へ案内します」


 そう言って進み出るメイド長のリン。


 若奥さま……若奥様さま……若奥さま……。


(なんて不思議な響き!4回目ですが若奥さまだなんて、なんか申し訳ないわ……)


「はい、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 新たな生活が始まった。


 指輪の交換が無事におわる、それはウンタラ地方の大地と大空、祖霊に祝福された証。

 これにて正式に夫婦と見なされ、新しい生活が始まる。


 しかし、この二人は政略結婚。


 大地や大空、祖霊の祝福無し、と判断されても結婚するしかないのだ。

 要は、儀式は建前である。


「ですが、皆さまに祝福されていた気がします」


「気ではなく、ここの砦の皆しゃまは、ちゃんと迎入れてくださっていましゅ」


「嬉しい限です……」


 城塞内の案内が一通り終り、自室で寛ぐシュガーロッド。

 二日目なのにもうここは自分の部屋、何年も住んでいるかのようなリラックスぶりである。


「取敢えず、これを姫しゃま!」


 ドサドサッとテーブルに積まれる本。


「……なんですの?この本」


「本格的な、真面目なHな本でしゅ」


「は?」


「妊活の参考書と問題集でしゅ」


「……!」


「……読書タイムでしゅ」


「……いや、その……赤ちゃんができる行程は知っていますけど……」


「読み聞かせがいいでしゅか?」


「じ、自分で読みます!」


「ご要望があれば、取り寄せもいたしましゅが?」


「要望!?……と、とくにありません!し、しかし、さ、参考書は分かりますが、問題集とは?」


「さぁ?読めば分かると思いましゅ」


「ソ、ソルティは読まないのですか?」


「ソルティはBLしか読みましぇん」


「BL?BLとは?」


「姫しゃまには、ちょっと早いかも、でしゅ」


「そ、そうなのですか?い、いろいろな本があるのですね」


「姫しゃま、ではじっくりお読みくだしゃい。ソルティは夜まで出ましゅ」


「でる?」


「城の周囲を綺麗にしてきましゅね」


「掃除ですか?」


「はい、姫しゃまとバイセンしゃまの夜の邪魔をしないように、城塞都市ウンタラ周辺の魔物達を皆殺しにしてきましゅ」


「ちちち、ちよっと待ってくださあい!ソルティ!」


「?」


「む、無闇に殺してはいけません!害のない魔物だっています!」


「そうでしゅか?では追い払うように心掛けましゅ」


「そうしてください」


 しかし、ソルティの奮闘虚しく、この夜二人は結ばれなかった。


 ベッドの上でしくしく泣き出すシュガーロッド。


「ごめんなさい、申し訳ないです」


「謝ることはないよ、お腹が痛いのだろう?俺は男だからその痛さが分からないが、暖かくして休むといいと聞く、ああ、腰が痛いとも聞いたが?」


「……はい」


(まだ先のはずなのに、なんではじまったの……生理……)


 そっと腰に手を当てるバイセン。


「!」


「俺はヒーラーでもあるからな、どう?暖かい?」


「……はい」


「このまま眠ってもいいよ」


「そ、それは……」


 しかし、バイセンの手の心地よさに、ネコのように眼を細めるシュガーロッド。


「長旅や、戦いの疲れもあるだろう、ゆっくり休もう」


(この人は……なんて優しい人なのだ、私には勿体ない夫だ……無理矢理しようとする夫だっていたのに)


 それは2番目の夫、シュガーロッドに骨を折られた、あいつだ。

 結局、こいつは骨折で、思いを遂げるとこはできなかった。


 バイセンとシュガーロッドの二人は、一つのベッドでゆっくり朝まで眠った。


 いや、眠ったのはシュガーロッドだけである。

 それは、心地よい眠りであったようだ。


 バイセンは、というと……徹夜である。


(お、女の人が横にいるのに、こんな状態で眠れるわけがないだろおおお!)


 妻という存在をどう扱っていいのか、まったく分からないバイセン。

 恋人、お付き合い、デート、思い出作り、全てブッ飛ばしての政略結婚。

 スヤスヤ眠っているシュガーロッドを横に、剣聖バイセンは途方に暮れた。


 次回、初ちゅー……お楽しみに。


次回 第七話 サブタイトルは 湖畔にて です。

残り二話になりました。

面白いですか?このお話。

毎回ご愛読ありがとうございます。


次回予告


「湖を見に行かないか?」

それはデートの誘い。

まだ、手と腰しか触っていない妻。

日常でも距離を縮めないと、と思い、思いついたのがピクニックである。

「まぁ湖の視察も兼ねてだが」

そう、視察は口実である。

バイセンの妄想計画では、シュガーロッドと二人で一頭の馬に騎乗し湖へ、である。

そして湖で……ごにょごにょ……である!

さて、うまくいかな?この計画。


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