第四話 お城にて
こんばんわ。
投稿です。
パレードは中止と言う話しだったが、馬上の二人を見て、城内は大いに盛り上がった。
……たった一頭にぼろい馬車じゃねぇか……
……おい、見ろよあの痩せた馬……
……まぁ4回目だろ?いいかげん、お払い箱じゃねぇのか?……
……お似合いの御一行だぜ……
「見る目がありませんなぁ」
……はぁ?……
見るからに異国の商人である。
服装も言葉のアクセントも明らかに異なっている。
「あの馬は、竜馬ですぞ」
……!?……
「あれは馬に見えるだけ。あの御者、龍馬を従えるとは」
……な、なんだよそれ!あの馬、龍なのかよ!?……
「馬車の木目が見えますかな?」
……塗装で見えん……
「商人としての修行が足りませんなぁ、木目が異常だ、きっとあれは王家に伝わる馬車でしょう」
……?……
「おそらく、ドライアドの霊木。長時間乗車していても差ほど疲れますまい、お尻が少々痛くなるくらいでしょう、防御はドラゴンのブレスも効果無しの超一級品」
……はぁ?……
「それにあの姫君……」
様々な話題を呼び込み、シュガーロッド御一行は城塞都市ウンタラに到着する。
そして到着と同時に問題が発生する。
キレたのはソルティ・ドルティ。
「お金が無いでしゅと!?」
前日、城塞都市に忍び込んだが、結構お間抜けなソルティ。
まさか全額使い込んでいたとは、思ってもみなかった。
「前回の魔物の侵攻に、全て使わせてもらった」
そう答えたのはゲンジロウである。
「我が姫しゃまの!」
「ソルティ、そこまでです。魔物の侵攻阻止に役立ったのなら、なによりです、それでいいじゃありませんか」
「しかし、でしゅが……」
「結婚式は略式で私は構いませんよ、4回目だし。私はいいのですが、バイセンさまは初婚、私でホントにいいのかと……」
とんでなく悲しくなるシュガーロッド。
「俺は一向に構わぬ。支度金については、改めて城主である父より謝罪があると思う。俺……私からも改めて謝罪とお礼を言わせてくれ、あの莫大な支度金を使ってしまって本当に申し訳ない、だが、あの金があったからこそ魔物の侵攻を防ぐことができた、ありかとう、そしてすまない……」
謁見の間の横、控え室でもめる4人。
特にソルティ・ドルティは機嫌が激ワルだった。
(姫しゃま、替えのドレスというか服装はあと2着でしゅ、それも一着は狩り仕様でしゅ)
(十分では?)
(今日と明日はお披露目でしゅ!披露宴でしゅ!いいでしゅか、結婚式なのでしゅよ!)
(簡易でしょ?)
(そーれーでーもーでしゅ!)
(もう3回も着ました、ここは全部、だ、旦那様にお任せいたします)
「会議はお済みですか?」
ゲンジロウが尋ねる。
まぁ、みんな聞こえていたが。
「オホン、ではしゅべてバイセンしゃまの判断にまかしぇる」
一同の目がバイセンに集まる。
当のバイセンはというと、ただシュガーロッドを見つめているだけ。
「ん?なんだ?」
「若、よろしいですか?今日と明日の結婚式、すべて若に任せるとのこと」
「……俺にか?」
(だから若っ!魔物の侵攻でお金全部使っちゃったでしょう!)
(ああ、使った。だから先程、ごめんなさい、とあやまった)
(では、今日と明日のドレス、どうなさるのです?任せると言っていますよ!)
(は?ドレスが無い?)
(若は騎士団の礼装でいいのでしょうが、奥様はどーします!)
(おくさま?誰だよ奥様って!?)
(一度死にますか?あなたの奥様ですが)
(……そ、そうなんだ)
(自覚してくださいっ!その奥様の服ですよ!ド・レ・ス!)
(どうすんだよ?持ってないの?持参かと思っていたが?)
(何のための支度金ですか!みんな任せるとの意味での、あの大金ですよ!)
その、とんでもない大金は式の全てを用意せよ、との意味ともう一つあった。
出戻り4回目よろしく、である。
あとは侯爵家の周囲に対して、見栄もある。
城塞都市ウンタラの城主は、一日でこのような立派なドレスを用意することができる。
権力、及び財力の誇示だ。
(今のままでも充分可愛いではないか?)
「会議はお済みでしゅか?」
まぁ、これもみんな聞こえていたが。
真っ赤になって、下を向いているシュガーロッド。
(か、か、かわいい?可愛いなんて……な、なんだろう、バイセンさまの言葉、何を聞いてもドキドキする……こんなの初めて……)
(聞こえてましゅよ、姫しゃま!)
大丈夫か?この二人?こんな恋愛初心者で?
これから夫婦になって、あんなことや、こんなことをしないといけないのに。
何故か眼が合うソルティとゲンジロウ。
「ゲンジロウ」
促すバイセン。
「はい、ではシュガーロッド姫、ここからはウンタラ地方のしきたりです、ご存じかとは思いますがもう一度説明致します」
「はい」
「まずは今から城主にお目通りです、服装は普段着、平素の姿を見せるという意味です。そして北の大地と空に感謝しバイセン様の盾となり剣となることを祖霊に誓います」
「こくこく」
激しく頷くシュガーロッド。
「ここでバイセン様は妻であるシュガーロッド様の盾となり剣となることを誓います、そして明日の朝、再び謁見の間で城主に目通りして、ここで指輪の交換、夫婦成立です、よろしいか?」
「「こくこく」」
綺麗にシンクロするバイセンとシュガーロッド。
「本来でしたら、本日の謁見の後、城塞都市ウンタラでのパレードですが、今回は……城主と若の判断待ちですね」
(ソルティ)
(なんでしゅ?姫しゃま?)
(今まで3人の殿方を見てきましたが、こんなにドキドキする方は初めてです)
(そうでしゅか……)
(どうかしましたか?)
更に小声になるソルティ・ドルティ。
(明日の朝、指輪交換でしゅ、この意味、おわかりでしゅか?)
(?)
(明日の朝、でしゅよ)
(地方のしきたりでしょう?)
(本日、今夜、初夜でしゅ!)
「ええええええええええっ!?」
びくっ、とするバイセンとゲンジロウ。
(ソソソソ、ソルティ!?心の準備が!)
一方こちらでは。
(何を話していたのだろう?)
(まぁ大体検討はつきますがね。若、明日の朝、指輪の交換です、いいですね?)
(?……ああ、そういうしきたりだ。元々この地方の豪族、源家しきたりだったのだろう?遙か昔、しきたりを残し、北の地を守るという合意でマッハンに下ったのだろう?)
(はい、私もそのように聞いています、そのしきたりです。いいですね明日の朝ですよ)
(朝がどうかしたのか?)
(問題は朝ではなく、夜です!)
(夜?)
(本日、今夜、初夜です)
「はあああああああああっ!?」
びくっ、とするシュガーロッドとソルティ・ドルティ。
(ま、待て、知り合って間もないに、いきなり!?そんな酷いことできるか!まずは相手の気持ちを知ってからだ!)
(まぁ恋愛経験ゼロの若が、全てすっ飛ばしての結婚ですからねぇ、これは政略結婚です、気持ちは二の次です。冷たい言い方ですが、お互いの気持ちは関係ありません。式も建前です)
(手は繋いだぞ、馬に乗るとき)
(それはよかったですね)
(馬上では体が当たったり、いい匂いがしたり、大変だった)
(はいはい、色々と大変だったでしょうねぇ)
(……なんか冷たい言い方だな?嘲笑も垣間見える気がする)
(気がするだけでしょう?ここはもう割り切って、初夜を楽しんで下さい)
(おい、それはできん)
キッパリ、スッパリ断言するバイセン。
(はい?)
(俺だけ楽しんでどうする?姫は楽しいのか?俺は彼女を弄びたくないし、酷いことはしたくない)
(それは?)
(嫌われたくないのだ。噂の悪女にはどう見ても、見えん)
(演技では?)
(ゲンジロウ、演技に見えるか?)
(見えませんねぇ……惚れましたか?)
(……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ああ)
ここで、小さなノックがコンコンと響き、扉が開く。
城主と謁見である。
謁見とは言っても王都のように畏まった感じでは無い。
広い部屋に、正面にやや大きめの椅子が二つ。
そこには城主であるドバシィ・リュウと、その妃シューナー・リュウが着座していた。
そしてもう一方のドアの前には、バイセンの兄、2名が見てとれた。
ここでお付きの二人は退散である。
ゲンジロウとソルティは静かに退室した。
「城塞都市ウンタラ、城主ドバシィ・リュウである」
「妻のシューナー・リュウである」
「兄、マル・リュウである」
「同じく兄、カク・リュウである」
一人残ったシュガーロッドは正面に向って深々と礼をした。
「神聖マッハン帝国第三王女シュガーロッド・ボーダーです、これよりバイセンを夫とし彼の盾となり剣となることをウンタラの大地と空、世の祖霊に誓います」
「神聖マッハン帝国ドバシィ・リュウ侯爵が第三子、バイセン・リュウである、これよりシュガーロッドを妻とし彼女の盾となり剣となることをウンタラの大地と空、世の祖霊に誓う」
「では、明日の朝、指輪交換まで天と地と祖霊の判断を待つ」
ここで明日の朝まで、何事も無く、指輪の交換ができれば祝福されたとして結婚成立である。
「さてシュガーロッド、支度金の件、大変申し訳なく思う。許されよ」
改めて頭を下げるドバシィ。
「いえ、お役に立てたのならなによりです」
「すまぬ」
そしてドアが開き、数々の料理が運ばれてくる。
さらに城塞都市の将校、商人、数々の技術者達が雪崩れ込んでくる。
宴会である!
「さて、最初の儀式は終った、後は明日の朝を待つだけだ、本日はめでたい、皆、大いに呑んで食うように!」
そう言って、城主はガバガバと酒を呑み始めた。
(ドバシィ、ホントにあの子が魔物を倒していたのですか?)
そう聞いたのは妃のシューナーだ。
(ああ、お付きの者と二人で、魔物の大軍を止めていた)
(あの可愛らしいお二人で?)
(そうだ、気に入ったか?)
(はい、バイセンとお似合いのようです)
(ふふっ、4回目だぞ)
(では、尚更幸せになってほしいものですね)
どうやら妃のシューナーはシュガーロッドを気に入ったようである。
が、もちろん、気に入らない者もいる。
「バイセン、なぜ断らなかった?4回目の悪評女だぞ?」
そう言って絡んできたのは次男のカクである。
気の強そうな吊り上がった目、でかい口。
一癖も二癖もありそうだ。
「兄上は噂で女性を判断するのですか?」
平然と言い放つバイセン。
そのバイセンをギロ見するゲンジロウ。
その目は明らかに、おいおい、若ぁ?どの口がモノを言っているんです?と訴えていた。
「火のない所に煙は立たない、って言うぜ、俺は近づかん」
「今はどうです?」
「あんなチビに何ができる?床上手か?」
「妻への侮辱は許しませんよ、兄上」
「ははっまだ妻ではあるまい、明日の指輪交換までは使用期間だ」
ぱくぱく。
もぐもぐ。
「リンさん、これは何という食べ物です?」
「ああそれはブリザードホースのトマト煮です」
「トマト煮?この寒い地方にトマトがあるのですか?」
「はい、御用達の商人、リンジョウさんから頂きました。酸味が強いのですが、お気に召しましたか?」
「はい、おいしいです!」
素直、かつ朗らかなシュガーロッド。
どうやらリンは、このお姫様が気に入ったようである。
ちょいちょい、とバイセンを手招きするメイド長のリン。
(なんだ?リン、どうした?)
(若さま、あの子は当たりです、大当たりですよ)
(え?)
(決して噂の悪女ではありません、あの子はよい妻になりますよ)
(そ、そうか)
(はい、何故か分かりませんが、ごめんなさいと言われまして)
(なんだそりゃ?)
(私にも分かりませんが、誠実な方のようです)
次男の批判はまだ続いていた。
「見ろ、この城塞都市ウンタラの現状を!金が無い?もともと金をよこさない王都が悪いんじゃねぇか、ここの暮らしは、戦いの連続で大変なんだぞ!俺達は魔物を防いでいるのに、まともな資金も、物資も送ってこねぇじゃねぇか!送ってきたのは4回目のお荷物、これで魔物が防げるかぁ?」
そんな話しに耳も傾けず、スタスタとシュガーロッドに近づく者がいた。
「リンさん、こちらは?」
「先程の御用達商人の、リンジョウさんです」
「この城塞都市に荷を降ろしているリンジョウです」
「こんにちは、リンジョウさん。美味しいトマト、ありがとうございます」
「……お忘れですか?」
「?」
頭上に?マークが浮かび上がるシュガーロッド。
「以前、どこかでお会い致しましたか?」
「はい」
「ソルティ、この方に見覚えは?」
「ありましぇん」
「そんな、ソルティさままで……あの時はお世話になりました」
「「?」」
「私はカモトヒの出身です」
「「!」」
「まさかあの時の戦士様に出会えようとは、今の私があるのは、いえ今の私達カモトヒの民の暮らしがあるのは、あなた様方のおかげです。このご恩一生忘れることは……ございません」
「おいおい、リンジョウ、何を話している?悪女に取り入って悪巧みか?さすがは商人だなぁ」
酒を片手にリンジョウを睨むカク。
リンジョウはニッコリ口で笑って、「ご冗談を」と言った。
そう、眼は笑っていない。
「おい、商人風情がなんだぁ?その態度は?」
かなり酔っているようだが、カクの眼も笑っていない、それどころか酒に酔って眼が血走っている。
「お酒ですか?義兄さま、いただきましょう」
さりげなく助け船を出すシュガーロッド。
そういって、陶器の湯飲みを差し出す。
リンジョウはまたもシュガーロッドに助けられた。
しかし、その湯飲みを見て止めに入るバイセン。
「ま、まて!兄上のその酒は……」
(それに酒に湯飲みを差し出すか!?酒の呑み方も知らないのか!?)
この酒は『竜倒し』というとんでもないお酒なのである。
まず、口に含んだだけで、噎せて吐き出すほどの酒だ。
火の魔力が含まれ、一口で昏倒すると言われる最早酒ではなく、猛毒である。
致死量は大さじ3である。
この酒は、呑むというより、舐めるといった表現が最適だ。
嬉々として酒を注ぐカク義兄。
「まぁ一杯やれよ、義妹よ」
どくどく。
湯飲みの縁まで注がれる『竜倒し』。
「はい」
噎せて吐き出す様を、大いに笑おうと構えるカク。
商人のリンジョウは口を出すことができない。
ここで口を出せばカクが不敬だ、と言うことが分かっているからだ。
(しかしこの酒は危険だ!ワシがフラついて姫にぶつかるか?くっ、それこそ不敬か!?)
ごっくん。
一気に飲み干し、湯飲みを差し出すシュガーロッド。
「ご返杯です、義兄さま」
「!」
「どうぞ、ご遠慮なさらずに」
固まるカク。
固まるリンジョウ。
固まりすぎるバイセン。
「あ、私の湯飲みではダメですか?ではそちらの御猪口で呑まれます?」
ここで周囲は、大爆笑に包まれた!
そう、ここは北の辺境城塞都市ウンタラ。
別名酒呑み城。
戦いに明け暮れ、呑んで騒ぐモノばかりの都市なのだ。
皆、明日をも知れぬ身、いつ魔物に命を奪われるか分からない土地なのだ。
そんな酒呑み城で、相手が湯飲みで呑んだのだ!
ならば、同じ湯飲みでご返杯が常識!まして進めた方が小さな御猪口で返杯など有り得ない。
「お、お前……ホントに呑んだのか!?」
「このような美味しいお酒、捨てたとでもお言いか?『竜倒し』まさに美酒!」
「名前まで知っているのか……」
「とうぜんでしょう」
「……魔力で包んで呑んだな」
「人の魔力で包まれるほど、『竜倒し』は甘いお酒ではありませんよ、ご存じでしょう?どこで手に入れられました?」
「酒を調達する商人がいる」
「この場には?」
「いる」
末席から声が上がる。
「……私ですが」
「王都で流通している『竜倒し』は稀釈されているモノがほとんどです、これは原酒、このような美味しいお酒を、ありがとうございます」
深々と頭を下げるシュガーロッド。
……おいおい……
……こ、これは……
とんでもない酒飲み姫がやって来た!
それも結婚4回目の悪女!
謁見の間での宴会は、大いに盛り上がった!
そう、酒が呑めるというだけで認められる、とんでもない辺境の荒くれ共のお城。
参加者は、この酒飲み悪女が気に入ったようである。
「……」
「バイセンしゃま?」
驚きの表情を隠せないバイセン。
いや、ドン引きか?
「だ、大丈夫なのか?『竜倒し』をあんなに呑んで」
そう、普通は死んでしまう量である。
「はい、姫しゃまは少々おしゃけを嗜みましゅ」
「あれで、少々か?」
(え?俺も少々なのだが、少々が違う?)
酒の話しで盛り上がる姫と、その周囲。
いつしか酒の話しは剣聖の話になる。
周囲の者達もカクと姫の話を聞き始める。
「ではカク義兄さまはバイセンさまと剣聖を争ったと?」
「ああ、だがあいつの方が上だった」
「聖剣が、バイセンさまを選んだのですね」
「ああ、そうだ。評議会の話しによると俺は剣聖の器じゃないそうだ」
「そりゃそうでしょう?弟嫁に『竜倒し』を勧めるなんて、剣聖失格ですよ!」
周囲、爆笑。
「はははっすまん!」
その様子を見ている長兄のマル。
横にはバイセン。
更にその横にはゲンジロウが控えていた。
どうやら3人で呑んでいるようである。
「凄いな、お前の嫁は。あのカクがあっさり謝罪したぞ」
「……」
「どうした」
「皆と仲良くしているのは見ていて嬉しい。嬉しいが、嬉しくない。なぜだ?俺は面白くない」
「なんだそりゃ?ああ、嫉妬か?」
「…………違う」
「声が小さいなぁ」
「剣聖の話しは俺がしたかったのに……」
「若が花嫁置いて、こっちに来るからです」
「ふふ、愚か者め、カクのヤツに取られないようにしろよ?」
「なっ!?」
一瞬、最大限に燃え上がる嫉妬の炎!
(ま、まさかこれが目的か?剣聖である俺をここまで動揺させるとは!まさに悪女の所業!)
嫉妬に燃える夫(予定)の眼を余所に、義兄と話しを続けるシュガーロッド。
「聖剣は普段はどこに?」
「ああ、聖剣はふだん妖精の森にある。でかい岩に刺さっているんだ。そこで剣聖が呼ぶと手元に現われる」
「……チラ」とバイセンを見るシュガーロッド。
その目は尊敬に満ちていた。
眼があって、なぜか嬉しいバイセン。
嫉妬の炎は瞬時に消火される。
「剣聖はバイセンなんだよなぁ、ああ、そうだよ、俺が呼んでも来なかった」
「でもバイセンさまが呼ぶと?」
「あっさり来やがった!」
周囲、再び爆笑。
「笑うな!お前ら!」
どうやらその時の戦いを、皆知っているようである。
……いやぁカクさま、いいところまでいったんですがねぇ……
……あの勝負は凄かった……
「他にも色々あるぞ、聖槍だったら神聖ジークの森、あと拳の拳聖だったらリモウスの祠、聖弓は月の神殿、聖斧はバトゥの大木、みな凄まじい力を秘めている」
「呼べば、応えてくれると?」
「ああ、認められたヤツが呼べばな」
……俺の嫁なんざ、呼んでも返事してくれん……
……そりゃ、お前の稼ぎが悪いからだろ?……
……がははははっ……
ここで商人達が何やら話し始めた。
そして代表としてリンジョウが城主の元に進みでる。
……ボソボソ……
「バイセン!ちょっと来い!」
三兄弟が一瞬、固まる。
「「「でた、父上のちょっと来い!」」」
「今回はバイセンご指名か?」
横目でバイセンを促すマル。
「おいおい、宴会でちょっと来い?何用だ?」
ニヤけるカク。
どうやら父親の呼び出しに、いい思い出がないようである。
「何用です?」
「商人達が、花嫁に献上したいものがあると」
「?」
「ドレス一式と装飾品、1時間で揃えると豪語した、受けるか?」
「はい?な、何でまた!?」
「若さま、『竜倒し』を呑み干す者がこの世にいるとは!それを見られただけでも末代までの語り種。いいモノを見せて頂きました。滅多に見られるモノではありませんぞ!それに恩人でもあります。どうかお受け下さい」
(恩人?どんな恩人なのだ?)
商人達はもちろん、計算尽くである。
このままパレードになれば、店が賑う。
『竜倒し』の話しが広がれば夜の店も大いに繁盛するだろう。
「シュガー!」
自然と声が出て、バイセンはシュガーロッドを呼ぶ。
「は、はい?なんでしょう?」
すくっ、と立ち上がり、スタスタと歩くシュガーロッド。
その姿を見て、周囲は驚嘆する!
あれだけの酒を呑んだのだ、ぜったい蹌踉めくと思っていたのだ!
……おいおい、歩いたぞ!……
……いや、その前に立ったぞ!……
……ほ、ほんとに呑んだのか?……
「商人達がドレス、装飾品を献上したいと言ってきたが、どうする?こうなるとパレード復活だが?」
シュガーロッドは即答した。
「バイセンさまにお任せ致します、仰せのままに」
「では、受けよう」
おおおおっ!歓喜する周囲!
こうしてパレード復活、この日城塞都市ウンタラは大いに賑わった!
今回はここまでです。
次回 第五話 サブタイトルは そしてその夜 です。
毎回ご愛読、ありがとうございます。
次回予告
「ソルティいいっ!やってしまいましたああああああっ!ああっどうしましょう!?」
「調子にのって呑みすぎるからでしゅ」
「に、臭いますか?ソルティ?私、お酒臭いですか?」
「はい、凄まじく臭いましゅ」
「……初夜で酒臭い女って、アリですか?」
「ソルティ的にはナシ、でしゅ」
「ひいいいいいいん、どうしましょう!?」
さて、どうする?シュガーロッド。
次回をお楽しみに。




