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(仮)俺の花嫁は傾国の悪女ではない、多分。(2026.05)  作者: MAYAKO


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第三話 出会い     

投稿です。


「姫さま、あれが城塞都市ウンタラです、ごらんになられますか?」


 御者のジューウンが馬車を止める。


「あれがそうですか?遠くに見えますが、大きいのですね」


「はい、数万人の戦士達が暮らしている場所です」


「北の要とか聞きましたが」


「はい、まさにその通りです」


 お付きのメイド、ソルティ・ドルティは着替えを済ませ武装解除し、丸くなってシュガーロッドの横で寝ている。

 獣人族は基本夜型、日中は寝ていることが多いのだ。


 コトコトガッタン。


 馬車が城塞都市ウンタラに近づいていく。

 人通りが多くなり、ついに馬車は止まる。


「列んでいるようですなぁ」


「なにかあるのでしょうか?」


「……」


(あなたの結婚式のパレードでは?)


 という言葉を、ごっくん、と呑込むジューウン。


「聞いてみましょうか?」


「結婚式のパレードでは?」


 ジューウンは呑込んだ言葉を吐き出した。


「あ」


「誤解を招くのは、そういうところですぞ、姫さま」


「あ、ジューウン、姫しゃまって言った」


「起きましたか、ソルティ」


「ごまかしゅな、城に入るまでは、お嬢しゃまと呼ぶように言ったのはジューウンではないか!」


「はは、そうでしたな」


「あの、お散歩してきてもよろしいでしょうか?」


「どうしゅた?ケツでも痛くなったのか?」


「……ソルティ、おしりと言ってください、恥ずかしいです」


「長旅でしたからね、あまり遠くには行かないで下さい」


 そう言って、さりげなくシュガーロッドの服装チェツクをするジューウン。


(華美ではないし、装飾品もなし。バレることはないでしょう。噂では傾国の悪女、姫さまがシュガーロッドと分かったらどなるか)


 まぁ消えるように逃げるだろうなぁ、と思うジューウン。

 魔力も武技もほぼ敵無し。

 本気で暴れたら、誰も止められないのでは?


 それが、本国で問題になったのだ。


 強くて優しい第三プリンセスシュガーロッド。

 聖槍の祖父が他界すると、すぐ嫁に出された。


 邪魔なのである。


 特に母親である王妃には嫌われて育った。

 シュガーロッドは母親が大好きであったが、母親はそうではなかった。


「見て下さい、ソルティ、あんなに長い行列が!」


「凄い人でしゅね!」


 ……だよなぁ……


「?」


 ……折角のお祭り、中止だとよ……

 ……なんでもお輿入れする姫さまが、止めたとか……

 ……んだよ、それ、商人としては稼ぎ時なんだがよぉ……

 ……魔物が出たとか……

 ……そんなん、いつでもどこでも出るだろ、ここは北の辺境だぜ……

 ……そう、俺たちは辺境の民だぞ、ゴブリンがでて中止?どこにでもいるだろ、ゴブリン……


「ソルティ、私は悪いことをしたのでしょうか」


 静かに落ち込むシュガーロッド。


「いえ、しょんなことはありません、ことが起きてからではおしょいのです、ひ……お嬢しゃまの判断は間違っておりましぇん」


 黒い影がチラホラ見え始める。


「ん?あれはなんでしょうか?武装しているようですが、騎士団か警備隊ではないでしょうか?」


 馬も連れているようだが、乗馬していない。

 どうやら、長い列の荷を改めているようだ。


「しょのようでしゅね……!?」


「どうかしましたか?ソルティ?」


 小声で囁くソルティ。


(ひ、姫しゃま!おパンツ、コルセット一式、馬車の中に干しっぱなしでしゅ!)


(ひいいいっ!?そ、それは大変です!ソルティ!お願いっ!)


(し、しかしっ、慌てて戻ると怪しまれましゅ!)


(で、では私がお話しでもしておきましょう)


(だ、大丈夫でしゅか?)


(まかせなさいっ!外交は得意です!)


(……)←かなり不審な目。


(まかせなさい、外交は得意です)←2回目。


(では戻りましゅ!)←それでも心配。


 動きやすい革の防具。

 警備隊?いや動きが違う、これは騎士団だ、そうシュガーロッドは判断する。

 目の前に迫る騎士団、みな背が高く見上げる大きさである。


(ま、まずはここで怪しい者ではないです、スマイルを!)


 しかし顔が引きつった。


「どうかされましたか?お嬢さん?」


「……い、いえ」


 第2弾!では、はねぎらいと感謝の言葉を!


「城塞都市ウンタラから歩いて?お勤め、ご苦労様です、都市や私達の守り、感謝致します」


「これはこれはご丁寧に、どちらから?」


「王都からです」


(あ、言っちゃった、まずい?)


「……」


 ここでシュガーロッド姫、周りの静けさに気が付く。

 騒がしさが、消えていたのだ!


「ん?」


 その原因は、声である。

 静かに透き通る声、もし子守歌など歌ったら、即落ちするのでは?

 そう思わせる声。

 なんとも優しい声で、周囲の者達は、その声に魅了されたのだ。

 気づかないのは本人だけ。


「吟遊詩人?歌姫ですか?」


「え?い、いえ、違いますが……」


(そう言えば、お爺さま、よく歌を歌ってくれとか言われてましたけど?一曲歌った方がいいのかしら?)


 そんな中、一人突進して来る人物がいた。

 ずんずんと歩み寄ってくる!


(ひっ、ち、ちょっと怖いかも……)


 銀色の髪、黒い眼。

 弓聖のシュガーロッドはその青年を見て思った。

 揺れる銀の髪、キラキラと。


(え?か、かっこいい!姿勢もいいし、このひと絶対強い!おじいさまみたい!)


 なぜか祖父を思い出すシュガーロッド。


(作者注:青年が地味で、年寄りっぽく見えるのではない、ないですからね!)


 槍聖の祖父、シュガーロッドの才能を見抜き、弓を、槍を、狩りや釣りを、そして料理まで教えてくれた優しいお爺ちゃん。


(おじいさまが、いなくなってから何もかも歯車が合わなくなった……私、頑張っているのに……頑張り、足りないのかなぁ……)


 迫り来る人物を見て、泣きそうになるシュガーロッド。


(ああ、こんなお方が夫ならよかったのに!)


 更に加速して迫る銀の髪!


(え?わ、私の間合い入った!?あっさりと!弓聖でもあり拳聖の資格を持つ私の間合いに!?何者!?)


 驚き、固まるシュガーロッドに相手は告げた。


「私は、城塞都市ウンタラの騎士団団長のバイセン・リュウです、神聖マッハン帝国王女シュガーロッドさまですね、お迎えにあがりました」


 そう言って、優雅に礼をするバイセン。


(この声、間違いない、姫だ)


「え゛?」


 思考停止……再起動。


「え?」


「バイセン・リュウです」


「え?」


 思考停止……再再起動。


「ええええええっ!?」


(なななな、なんで?なんで分かったのかしら!?私がシュガーロッドだって!?いや、その前にっ!バイセン・リュウって!?)


 慌てて馬車から戻っているソルティ。

 獣人族は耳がいいのだ!


「……おじょ……姫しゃま、バイセン・リュウしゃまです、ご、ごあいしゃつを」


 そういってギロリ、とバイセンを(にら)むソルティ・ドルティ。

 昨夜の黒い服装ではなく、やや明るめの服のソルティ。

 評価したのは横のゲンジロウである。


「明るい服もお似合いですね」


「だまらっしゃい……ん?姫しゃま?」


 思考停止中……再再再起動。


(こ、このお方、な、なんか眩しい……目を……目を合わせられないっ!これは……もしかして剣聖の技!?(作者注:違いますよ))


「お、お迎え、ありがとうございます、仰せの通り、私は神聖マッハン帝国のシュガーロッドでがしゅ」


「……(咬んだ)」←バイセン。

「……(咬んだ)」←ゲンジロウ。

「……(咬んだ)」←お付きの騎士団。

「……(咬んだ)」←周囲の者達。

「……(咬んだんでしゅか!?)」←ソルティ・ドルティ。

「……(咬んだ)」+真っ青←本人。


「姫しゃま?」


「……ます……」


「え?」


「……旅に出ます……探さないで下さい……」


 ガシッ、と走り出すシュガーロッドを掴むソルティ・ドルティ!


「か、咬んだくらいで旅に出ないでくだしゃいっ!」


「お、夫になる人の最初の挨拶で!あれだけ練習したのにぃ!」


 ここで周囲の者達は思い始めた。


 おかしくないか?

 この姫さま、ホントに悪女か?

 噂とかなり違うが?


 ……天然では?と。


 それとも……芝居か?

 半泣き上目遣いでバイセン・リュウを見るシュガーロッド。


 さて、どうする、バイセン・リュウ?


 騎士団、団長として騎士として男として力量が問われた。

 ここでバイセン・リュウは、躊躇(ためら)わず、もう一度同じ言葉と動作を繰り返した。


「私は、城塞都市ウンタラの騎士団、団長のバイセン・リュウです、神聖マッハン帝国の王女シュガーロッドさまですね、お迎えにあがりました」


 一回目を、無かったことにしたのだっ!


「ぐすっ……お、お迎え、ありがとうございます、仰せの通り、私は神聖マッハン帝国のシュガーロッドです……」


 パチパチパチッ!


「え?」


 最初に拍手をしたのは小さな子どもだった。

 お芝居でも観ている感じだったのだろうか、ちゃんとセリフが言えたので素直に拍手をしたのだ。


「おねぇちゃん、じょうず!」


「え?……あ、ありがとうございます……」


 思わずお礼を口にするシュガーロッド。


 するとそれから、大きな拍手が湧いた!


 ……まさか、王族のお見合いに立ち会えるとは!……

 ……バイセン様の口上、カッケー……

 ……騎士の口上、初めて聞いたぜ……


「姫、馬車はどちらに?」


 下を向き、黙って指さすシュガーロッド。

 皆同じような馬車や荷車がズラリと並ぶ。


「?」


「あれです」


 その中の一台、それは一回り小さな馬車であった。

 止まる拍手。


 ……え?……

 ……おいおい、御者一人にメイドさん一人?……

 ……王都からだろ?……

 ……小さくね?あれが王族の?……

 ……ちょ、扱い酷くね……

 ……まぁ4回目だしなぁ……

 ……でもよぉ……

 ……おい、みんな!道を空けろ!……


 ざぁっと列んだ馬車や荷車が脇に下がり、道を空ける。


 ……なんだ……

 ……どうした?……

 ……噂の姫さまが、お通りだとよ……


 騎士団が指示する前に、城塞都市ウンタラまでの道が開いた。

 これは想定していなかった姫さま御一行。


(え?出戻りで、4回目の私にここまでの敬意を?いや、違う、これはバイセン様に対する敬意だ!この方は民に慕われている!)


「では」


 と言って一礼し、馬車に戻ろうとすると、バイセンが引止めた。


「待たれよ」


「?」


 ここでバイセン反省。


(あれ?俺、なんで引止めたんだろ?)


 そう、昨夜あの声を聞いてから、バイセンはその声の主に対して、思いを馳せていたのだ。


 どんな女性なのだろう?


 髪は?瞳は?身長は?噂通りの悪女なのだろうか?どんなに考察しても悪女には思えない。

 きっと髪は金色であろう、マッハンの王族は金髪が多い、目は?深い緑色?

 城塞都市ウンタラは北の辺境、氷の世界だ。

 森林はあるが、それ以上に雪原が広がる世界。

 暖かい王都から来るのだ、きっと彼女は木々や草花のような、綺麗な深い緑色に違いない。


 勝手な想像を膨らませ、シュガーロッドを組み立てていくバイセン。


 身長はきっと高いだろうな、マッハンの者はみな長身だ。

 ああ、それに武術に長けている者が多い、きっと細身で筋肉質、リュウ一族の俺に似ているのではないか?

 悪女かぁ……つり目のキツイ顔立ちだろうか?いや、いや母上はつり目だが優しい。

 どのような顔立ちなのだろうか?声からして優しい感じなのだが。


 後は噂だな、噂で判断してはいけないのだろうが、火のない所に煙は立たない、火種があるのだろうか?


 そしてバイセン、徹夜する。


「で、珍しく寝坊ですか?」


「何のことだゲンジロウ?さぁ姫を迎えに行くぞ」


 そしてご対面。


(髪は金色だ!眼も!お、お、思った通り!?し、しかし……な、なんだこの、ちっこい生き物は!?)


 平然とした顔をしているが、中身はこんなことを考えていたのだ。


(この人が、俺の花嫁?つ、妻!?)


 思わず待たれよ、とか言ってしまったバイセン。


 彼はもっと彼女のことを知りたいと思い、周囲のことも、部下がいることも、全てキャンセルして、何も考えず声が出てしまったのだ!


(行くな、君のことがもっと知りたい!)


 その思いが、思わぬ行動をとらせた!


「ゲンジロウ、馬を」


「はい」


 バイセンは、ひらり、と馬上の人となった。

 そしてシュガーロッドに対して、手を差し伸べた。


「え?」


 明らかに戸惑うシュガーロッド。


(え?俺は何をしているのだ!?)


 もちろん、バイセン本人も戸惑っている!


「城塞まで送ろう……いや、城内を案内する、手を」


(は?俺は何を言っているのだ?)


「……え?」


 バイセンの微かに震える手を、これまた微かに震える手で握るシュガーロッド。


 手を繋いだ瞬間、ドオオッ!と歓声が沸いた!


 ふわり、とシュガーロッドを引き上げるバイセン。


「きゃ!?」


 ちょこん、と横座りになるシュガーロッド。


「行くぞ、ゲンジロウ、馬車の警護を」


「はい」


 こうして二人は運命の出会いを果たした。


(い、勢いで馬の乗せちまったぁあああ、お、落とさないようにしなければっ!)

(い、勢いで馬に乗ってしまいましたあ、お、落ちなおように注意しなければ!)


 ……こうして二人は運命の出会いを果たしました?


 はい、今回はここまでです。

次回、第4話 サブタイトルは お城にて です。

毎回ご愛読ありがとうございます。

次回投稿は明日のこの時間です。

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