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(仮)俺の花嫁は傾国の悪女ではない、多分。(2026.05)  作者: MAYAKO


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第二話 悪女の内訳     

投稿です。

毎日この時間になりそうです。

残り六話、お楽しみ下さい。


 メイド、ソルティ・ドルティは走る。


 目指すは50㎞ほど先のキャンプ地。

 獣人族特有の体力を活かし、氷の大地を走り抜ける!

 月夜の中、簡素な小さな馬車が見えてくる。


 他には何もない。

 警備兵一人もいないのだ。

 いるのは年老いた御者が一名。


(最初の結婚の時には、30名からのお伴がいたにょに……)


 悲しみと怒りに包まれるソルティ。

 その馬車の中には、噂の姫君シュガーロッドが静かに眠っていた。


 ぱちり、と開く目。


 何かが近づいている、有り余る魔力がそう告げる。

 ゆっくりと身を起こすシュガーロッド。

 金色の髪がサラサラと肩を流れ、ボリュームのある胸が柔らかく揺れる。


「ソルティですか?」


 深い緑色の眼が、馬車の窓越しにソルティ・ドルティを捉える。


「お役目、ご苦労様です。寒かったでしょう?早くお入りなさい」


「はい、姫しゃま!」


「どうでした?ソルティ?」


 魔法でお茶を温め、ソルティにそっと差し出す。


「ありがとうございましゅ、姫しゃま」


 可愛い花柄のティーカップを受け取ると、早速ソルティは報告をし始めた。


「うわしゃとは違っていましゅた」


「そうなのですか?ではどのようなお方で?さすがに3mの殿方は怖いのですが、2mほどですか?」


「……」


 猫舌なのだろか、ちびちびとお茶を舐めるソルティ。


「ま、まさか4m!?」


「姫しゃま!人族で4mは存在しないと思いましゅ、そうなるともう鬼族が大型の獣人族、ジャイアントでしゅ!」


「ではどのような?」


「176㎝、58キロ、銀色の髪と黒い瞳、剣技を見ましゅたが、間違いなく剣聖でしゅ」


(176?私より20㎝も!?……58キロ?()()()()は10キロ差ですか……)


「……剣聖さま……では噂の方は?敵と見なせば皆殺しにするとか」


「そのような方には見えましぇんでしたが?おしゅらく強さゆえの噂でしょう」


「では男女魔物問わず、*モザイク*を*モザイク*して*モザイク*してしまうという鬼畜のような性豪の噂は?」


「ひ、姫しゃまっ!姫しゃまがそのようなこと、口にしてはいけましぇんっ!」


「で、ですが」


 そのような人物を夫と呼べるのか?

 シュガーロッドは怖くて悲しくなっていたのだ。


「従者の者と、女子の手も握ったことがない、と話しておりましゅた。ダンスもメイドのリンとかいう女性としか練習していないと」


「で、ではそのリンさまと*モザイク*や*モザイク*のようなことを!?メイドは主人に忠実、そこを無理矢理……なんて卑劣な!」


「いやいや、私の調査によりましゅと、メイドのリンは58歳の超ベテランでしゅ」


「ちょーベ、ベテラン!?」


「はい」


「じゅ、熟女(じゅくじょ)好みだったのですか!?」


 そんなぁ……熟女?それも超ベテラン?

 そんな熟女には勝てない……悲しくなるシュガーロッド。

 どうやら想像力豊かな姫君のようである。


「あ?いやいや、そうではなくでしゅね、リンは騎士団や警備隊からとても慕われ、母親的な存在なのでしゅ!心根の優しいメイド長でしゅ!」


「!?……わ、私ったら……なんてことを!こ、これはリン様に謝罪しなければ!」


 耳まで真っ赤になるシュガーロッド。

 とんでもないことを想像していたようである。


「……その必要はないと思いましゅ……でしゅが」


「?」


「そ、そにょ……バイセンしゃまのHな話しも、単なる噂でしゅ……ただ……」


「ただ?」


 さっ、と顔が曇るシュガーロッド。

 何か他にも?


「しょの、姫さまの噂が……」


 ひじょーに言いにくそうなソルティ。


「あ」


 あ、と察するプリンセスシュガーロッド。


「……4回目ですしね」


「でしゅが、一回目の結婚は……」


 そう、一回目の結婚は、隣国カンタラである。


 そこには、増税に苦しむ民がいた。

 姫は増税に反対し、贅沢三昧を追求する王家に喧嘩を売ったのだ。


 初日の結婚式場で!


 ここがどうも『激しい気性』の噂の元である。

 そして姫は民に追われたのではなく、王侯貴族達に命を狙われ、国をその日のうちに追われたのである。


「あのような贅沢尽くしの結婚式、許せませんでした……外では子ども達が飢えて死んでいるのですよ!」


「はい、なぜ王しゃまはそのような所へ嫁に行けと……2度目の時も……」


 2度目の結婚相手はかなり傲慢(ごうまん)で、女性は子どもだけを産めばいいと公然と言い放つ王子であった。

 戦士としてもかなり強く、その強さが傲慢に繋がっていた。

 すでに後宮には多くの女性がいて、私の必要ある?と考えさせられる人物。


 とにかく全てにおいて俺が上だ、頂点だ、剣聖以上だ!という王子にシュガーロッドは言い放った。


「そこまで言われるなら、スクワット10000、腕立て10000、懸垂10000、素振り10000、私についてこれますか?我が夫なら当然!」


 王子は、足腰が立たなくなった。


「姫しゃま、新婚初夜は体力テストの場ではありましぇん」


「え?戦士なら、普通ではないのですか?」


「普通ではないと思いましゅ」


 そして屈辱に塗れたこの王子、ついに実力行使にでる!

 無理矢理シュガーロッドをベッドに押し倒したのだ!


 プリンセスシュガーロッドはここで勘違いをした!


 男女の秘め事は、シャワーやお風呂、身を清めた後と思っている。

 ではこれは?


 シュガーロッドはこの程度の運動、日常である。


 !


「あ、スパーリングですね!」


 瞬時に膝と腕を()()るプリンセスシュガーロッド!


 ボキベキ。


「あ、ごめんなさい、タップしないから……」


 ここで離縁である。


「姫しゃま、初夜に関節技は禁止でしゅ!」


「……反省しています。ですが、あのタイミングは違うと思いましたので……その、もっとこう、優しくというか……」


「カモトヒのことも言ってましゅた」


「ああ、あの国ですか……」


 3回目の結婚、この時も運悪く結婚式当日に魔物が侵攻してきたのだ!

 原因はこの国の強引な土地改良政策。

 魔物の土地を強引に奪い、住処を占領し手に入れた土地。

 その奪還に魔物達が動いたのだ。


 為政者達は逃げ出したが(もちろん花婿も)、シュガーロッドとソルティはこの国に残り、民を逃がし続けた。


 そこに現われたのが城塞都市ウンタラの城主ドバシィ・リュウ侯爵と帝国の精鋭騎士団。

 彼は奪還を命ぜられ、騎士団と傭兵を率いて見事、その命を果たしている。

 ここでシュガーロッドはドバシィ侯爵と会っている。


 そこは戦場だった。


「凄まじい強さだな?貴公は拳聖か?民に代わって礼をいうぞ、城塞都市ウンタラに来ないか?」


 戦い続け、ボロボロのシュガーロッドとソルティ・ドルティ。

 侯爵はこの時、まだ二人を知らない。


「いえ、武芸は(たしな)みますが、拳聖ではありませぬ侯爵閣下」


「ん?侯爵閣下?よくわしが侯爵と分かったな?……まて、その紋章?……まさかプリンセス……」


「さて?何のことでしょう?もうこの国は大丈夫のようですね、行きましょうソルティ」


「はい、姫しゃま」


「……」←(侯爵:やっぱ姫じゃああああん!)

「……」←(姫:ソルティイイイ!)

「……」←(ソルティ:あ゛あ゛あ゛)


「「では、侯爵閣下、ごきげんよう」」


 綺麗にハモり、ふっ、と消えるシュガーロッドとソルティ。


「ま、待たれよ!」


 すると、侯爵の横に現われる黒い影が現われた。


「ドバシィさま」


「なんだ?」


「プリンセスシュガーロッドさまは、拳聖を辞退されております」


「なんだと?称号はいらないと?」


 報告しているのは城塞都市ウンタラの忍びである。


「いえ、すでに弓聖の称号持ちです」


「はぁ?とんでもない怪物だな」


「はい、そう言われるのがイヤで辞退したそうです、強さゆえの誤解も多く」


「……気に入った、我が息子達の嫁に欲しい!王家に連絡しろ!あの戦い振り、潔さ!なによりも美しく強い!あの魔物の大軍相手に引かなかった勇気!従者の戦い振りも見事!」


「御子息達の手に負えますか?数々の離婚歴がありますが?」


「剣聖がいるではないか!」


 こうしてこの二人の結婚が決る。

 そう、先に申し込んだのはこちら側、実は城塞都市ウンタラサイドなのだ!


 シュガーロッドの強さの秘密は祖父にあった。

 プリンセスシュガーロッドの祖父は槍聖だったのだ。

 この祖父がシュガーロッドの才能に目を付け、鍛え上げた。


 そう、このお姫様、槍を持たせてもとんでもなく強いのだ。


 歩く最終兵器、決戦兵器とまで言われるシュガーロッド。


 そしてもう一つ、恐れられている事実があった。


 それは結婚先が全て神聖マッハン帝国の領土となったことだ。

 1度目の結婚先はシュガーロッド離婚後、内乱が起り神聖マッハン帝国が乱を治め属国化している。

 2度目の結婚先は、武力衝突である。神聖マッハン帝国に宣戦布告して負けている。


(噂では、骨を折られた恨みが宣戦布告の原因とか)


 3度目は前記のとおり、国が魔物によって滅んでいるのだ。


 ……神聖マッハン帝国第三王女シュガーロッドは悪女ではなく、魔女ではないのか?……

 ……厄災の女……

 ……不運を呼ぶ悪女……


 噂は広まり続ける。


 そう、悪い噂ほど広がりやすいのだ。

 その黒い噂は城塞都市ウンタラに届き広まる。


 ……おいおい、大丈夫か?……

 ……俺達の城塞都市ウンタラ、厄災の女がくるのか……

 ……とんでもない悪女プリンセス、バイセンさま、大丈夫か……


「姫しゃま、不運が続きましゅ……なにゆえこんな……」


「仕方のないことです、私ではどうしようもありません。みな人の口から出た言葉」


 いつの間にか朝日が昇り始める。


 ……お目覚めですか?……


 外の御者より声が掛かる。


「姫しゃま、本日は城塞都市ウンタラに到着しましゅ、朝餉を用意しましゅので、しばしおやしゅみください」


「……そうさせてもらうわ、ソルティ……」


 綺麗な朝日である。

 闇を斬り裂き、全てを照らし始める。


 その朝日を見て、孤独なプリンセスシュガーロッドはどうか、よい一日でありますようにと祈らずにはいられなかった。


次回、運命の二人が巡り会う!

サブタイトルもそのままズバリ、第3話 出会い です。


次回第三話サブタイトルは 出会い です。

明日、20:50投稿予定です。

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