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二百三十二

「な……なんだオマエは……一体何なんだっ!?」


 鞭を打つフォワールの手が止まった。赤く腫れ上がった箇所が瞬く間に治ってゆくさまを見て、フォワールは驚愕の表情を浮かべたまま一歩、また一歩と後退る。鞭を打たれる度に、そこから炎が吹き出そうなくらい熱く疼いていた傷は、今や完全に回復していた。


「ば、バケモノ……っ!」


 脱兎の如く駆け出すフォワール。恐らくはタドガーに報告をしに行ったのだろう。これは脱走する最後のチャンスだ。と思い実行に移す。しかし、魔術は完全に使用不能。枷は鉄製で、鍵が無ければ外す事は不可能。八方塞がりで諦めた時、フォワールがタドガーを引き連れてやって来た。終わった……もうどうしようもない……


「いいですか? よく見ていて下さい」

「うぐぅっ!」


 フォワールが勢い良く鞭を振るうと打たれた箇所の衣服が裂け、爆発にも似た熱い感覚が神経を駆け巡った。そしてその傷口は即座に修復されてゆく。タドガーはゾッとする様な笑みを浮かべていた。そして、懐から何かを取り出すと、ソレを太腿に突き立てた。


「あひぃっ! あぁ……ぁ……あうっ!」


 突き立てられたモノが乱暴に引き抜かれる。痛みで身体が無意識に反応した。


「これは素晴らしいっ! 実に素晴らしいっ! 遥か昔に繰り返された常軌を逸した実験の数々。周辺諸国の介入により闇へと葬られた古の技術が実を結んでいただなんてっ!」


 治りゆく傷口を見ながらタドガーは嬉々として声を上げる。


「ち……がう……これ……は、神……様から……貰った……の」

「神……? とうとう気が狂ってしまいましたか……」 

「えっと……どういう事なのですか? 『ヘミニス』様」

「『サヒタリオ』、あなたも聞いた事が無いですか? 南方諸島の王の所業を。後に『悪魔の布告』と呼ばれた非道極まりない行いをっ」

「…………ま、まさかこの女っ……不老不死?!」

「そうですっ!」


 タドガーはフォワールにビシリ。と指を差した。


「この女は腕を落とそうが首を()ねようが死ぬ事もない、正真正銘のバケモノです。殺した筈の人間が生きて会いに来た。なんて巫山戯(ふざけ)た事を罪人が言っていた。と、噂で耳にした事がありましたが、まさかこの女だったとはっ!」

「で、では……」

「ええ、この女はもはや人では無い。死ぬ事もありませんから気を使わず存分にやって下さい。私は実験室(ラボ)で、この女の体組織を調べるとします」


 グルン。と二人の首が動き、四つの目玉が私を見つめる。一歩、また一歩と近付く度に、二人の顔が笑みへと変わってゆく。

 

「い……い……嫌ぁぁっ!」


 私の声が牢内に木霊した――

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