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二百二十五

 下腹部に衝撃を受け、その場にガクリと膝を着く。痛みに顔を歪ませながら、ソレを与えた男を見上げる。


「な……何をするの……」

「へへ……ナニをってか。決まってるじゃぁないか、ナニをするのさ」


 先程とは打って変わってしっかりとした声で男が言う。酔っていたのは演技?!


「なぁ、構わねぇだろ? こんな良い女ただ渡すのも勿体ねぇ。何度か天国へ送ってからにしようや」

「止めておけ。どんな性病を持っているか分からんぞ」


 仲間の一人が冷酷な目で私を見下ろしながらそう言う。ちょっとソレ非道くないっ?!


「それに、クライアントは無傷で。と仰っていた。余計な手出しをすれば、報酬は貰えないかもしれんぞ」

「チッ、どうせあのオッサンだって楽しむんだろうがよ。……まあ、しゃーねーか。胸を揉むくらいで我慢してやらぁ」


 それは私が我慢ならないんだけど!?


「そんなの、お断りよ……」


 ベラベラと長いお喋りで少しは痛みが引いてきた。この二ヶ月、訓練をしてきたお陰か身体は随分鍛えられた様だ。でなければ、最初の一撃で昏倒させられていただろう。


「へぇ、結構根性あるねぇ。だが、三対一で勝てるとでも――」

「悠久の空。温和なる風纏いし存在(もの)――」

「チッ、コイツ魔法を使うぞ! おい! 早くアレを寄越せ!」


 酔っぱらいモドキのセクハラオッサンは、二人の背後に控える、ローブを頭からスッポリ被っている三人目の男に向かって手を差し出す。三人目の男はローブの中から慌てて小瓶を取り出し、そしてソレを地面に落とした。


「ばっ!」


 勝機!


「――その力以て、敵を吹き飛ばせ!」


 ルリさんから教えて貰った相手に強風を浴びせる呪文。私が使うと竜巻となってしまうが、この騒ぎに乗じてオジサマの家に逃げ込めば助かる。だが――


「……え? な、なんで?!」


 前はちゃんと発動したのにどうして!?


「へ……へへ。な、何だよ驚かすんじゃねーよ。ハッタリかますたぁ、中々肝が座ってる。だが、残念だったな」


 セクハラオッサンが小瓶の中身を私の前に振り撒くと途端、強烈な眠気に襲われた。


「こ、これ……は」

「錬金術で(こさ)えた睡眠薬だそうだ。コイツの香りを嗅ぐとアラ不思議、どんなヤツでもおネムに……」


 饒舌なセクハラオッサンが顔から雪に突っ込んだ。マスクもしないでベラベラと喋るから……


「コイツってさ、……バカ?」

「まあ、相当オツムが足りないのは認めるよ」


 認めちゃうんだ。


「それよりも、コレが効かないオマエはなんなんだ?」

「なんなんだ。と言われても、体質。としか言えないけど?」


 恐らくは、不老不死の能力に起因するのだろう。そのお陰で助かったとも言える。


「体質、か……仕方が無い。少々手荒な真似をさせて貰うか」


 そう言うと、冷酷な目を持った男は腰から光る何かを取り出した――

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