表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/235

二百八

 ルリさんの魔術講座。基本を学びいざ実践。だがしかし、誰にでも使える超初級魔術も、私にかかれば破綻をきたす。


「なんでやぁぁぁっ……」


 切実とした声が漏れ出した。


「攻撃魔術ならともかく、生活系魔術すら発動しないなんてね……」

「お母様。その様な事が稀にあるのですか……?」

「いいえ、私も初めて聞いたわ。魔術が全く発動しないなんて人」


 ま、まだだ。まだ『闇』の生活系魔術を試していない。そうよ、私は闇の魔術使いだったんだわっ。だから良いの。他の魔法が使えなくてもっ!


「お、おばさま。まだ『闇』の魔術を試してないですよ。さあルリさん教えて下さい、『闇』の生活系魔術をっ!」

「……在る訳ないじゃない。そんなの」


 詰んだぁぁぁっ!


「なんでやぁぁっ……。魔力だけ吸い上げておいて、詐欺やないかぁぁぁっ……」

「魔力を消費している!? ねぇっ、それ本当なのっ?!」


 鷲が獲物をガッチリと掴むかの様に、ルリさんは私の肩を掴む。


「グスッ、そうよ。なんかすうっと血の気が引く様なのがそうなんでしょ?」


 涙声でそう答えると、ルリさん達は互いに顔を見合わせた。そしてルリさんは私を優しく抱きしめる。


「な、なんですか?」

「うん……今の顔すっごく可愛かったから」


 慰めじゃないのかいっ!


「うーん、魔力を消費しているのは間違いなさそうね」

「え……? 分かるんですか?!」

「ええ、魔力を使えば使う程、体温が上昇していくのよ」


 あ、なんだ。それを確認する為の抱擁か。


「何、その顔」

「いや、タダ抱きしめたいだけなのかと……」

「真昼間から何を変な事言っているのよ。八割は欲情に駆られたに決まっているでしょ」


 多いなっ! ってゆーか、分かったのならもう離して下さいっ。


「お姉様が魔力を保持していないのなら、焜炉に火も点けられない筈ですわ」

「そういや、散々お茶出して持て成してくれてたね……」


 どうしてソコ嫌そうに言うかな。


「ちょっとこっち来て」


 ようやく抱擁を解いたルリさん。今度は私の手を掴んで庭の端へと連れてゆく。


「おばさん。何かあった時の為に、結界をお願いします」

「はーい。任せておいてね」


 おばさまは親指と人差し指をくっ付けて、オーケーのサインを出した。結界って、一体何をするつもりなんだ?!


「カナさんよく聞いて。これからあなたに攻撃系の魔法を教えるわ」

「攻撃系の魔法!?」

「ええ。初歩的なヤツだけど、その精霊にとっては最大の攻撃手段よ」


 呼び掛けを行っている精霊には、同じ下位でも『S』『A』『B』という『ランク』が存在し、それぞれが一つだけ攻撃手段を持っているのだという。


「今から教えるのは下位のランクBの呪文。だけど気を付けて、これだけでも十分に人を殺傷する事が出来るわ」


 ゴクリ。と固唾を飲み込んで、ルリさんからレクチャーを受けた――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ