二百九
「煉獄の園。揺らめく炎纏し存在――」
『煉獄の園』とは火の国の事を指し、『揺らめく炎纏し存在』とはそこに住まう精霊を指す。頭の中でイメージを固め、ルリさんから教えて貰った『呼び掛け』を行った。
私のイメージとはこうだ。火の国に羽根の生えたイケメンの妖精さん達が沢山居て、皆が揃ってこう言うのだ。『ヘイユー、やっちゃいなよぅ』と。
だから、なのかな……? ソレを解放した途端、肌がチリつく様な熱風が駆け、大河に大きな水柱が立ったのは……
「なっ……」
ルリさんはそう声を上げたが、撃った本人は声すらも上がらない。ザバリ。と返す波と水飛沫に、ただただ呆けていた。
「何よこの威力っ!」
ルリさんも想定外だったらしい。
「これ……精霊魔法以上の威力ないですか……?」
「そうねぇ、タダのファイヤーアローでこれとは……カナちゃん。攻撃魔法は禁止ね」
「は、はい……」
おばさま……微笑みが怖いです。
「あんた一体どんなイメージしてんのよ」
「え……? どんなって――」
私は頭の中でイメージしたイケメン妖精達のやっちゃいなよぅ。を話して聞かせる。聞かせるとルリさんは、呆れた表情で私を見ていた。
「あんた……愉快な発想しているわね」
やかまひいっ。
「……でも、それも面白そうね」
「え……?」
ルリさんはニヤリ。と口角を釣り上げて、私から離れてゆく。そして、さっき私が放った魔法を大河に向かって放つ。しかし、立ち上った水柱は、私より遥かに低い。
「……確かに威力は増したわね。だけどコレ、割りに合わないわ……」
ルリさんの話によれば、イメージした人数分魔力を消費している。との事。その割りには、威力が低過ぎるのだそうだ。
「まったく、バケモンねあんたは……」
そう言われたのは二度目だけど、二度目は不思議と不快な気分にはならなかった。
その後改めて、ルリさん仕様にイメージを書き換えて試射してみる。立ち昇る水柱はやや低くなったものの、過剰威力である事はルリさんの術からみても明らかだ。
「どうしてこうなるんかなぁ……」
ルリさんが頭を掻きながらそう言うが、それは私も知りたい事である。
「そうだ、リリーカさん。火の精霊を呼び出してくれない?」
どうしてこうなるのか? 直接聞いてみた方が早い。そう思ったんだけど、注がれる視線はどれも冷たいものばかり。
「お姉様。精霊使いが使役する精霊と魔術で呼び掛ける精霊は、同じ世界の住人であっても別な存在ですわよ」
「へ……?」
顔の温度が瞬く間に上がるのを感じた。




