幕間 3 憧れて
幕間 憧れて
よく周りから良い子だねと言われることが多かった。
だから別にこれと言って理由はなかった。
今の生活に満足していたし、幸せだとも思っていた。
まったくもって荒れる理由なんてない。
それなりに勉強だってスポーツだってできた。
ただ自分に個性を感じることができなかった。
どこにでもいる普通の女の子。
私はただのちっぽけなどこにでもいる女の子だった。
別にそれに不満を持ったことだってなかった。
そして出会う。
彼女と出会ったのは偶然だった。
ただ道を尋ねられただけ。
「この辺りに槇島公園ってのがあると思うんだけど知らない?」
いきなり道を尋ねてきたその人はきれいな女性だった。
女の私から見ても思わず目を引かれるくらいに。
そしてその格好がさらに彼女を目立たせていた。
いまどき女子高生でもはかないような短かすぎるスカート。
あれは絶対にしゃがんだら丸見えだ。
そしてまだ梅雨も明けたばかりで涼しいくらいの気温にもかかわらず、へそ丸出しで水着じゃないかと一瞬疑うくらい短く薄いシャツ。
それを盛り上げる大きな胸。
自分の貧相なそれと比べ、思わず一歩後ろへたじろぐ。
「えっと…槇島公園はこの先の信号を左に曲がってすぐですけど。」
何とか答える私に、
「そ、ありがとねん♪」
と言い歩いていく。
道行く人が皆振り返って見る。
老若男女関係なしだ。
だがそれを、まったく意にせずお姉さんは去っていく。
その後ろ姿は格好良かった。
今まであれほどの個性を発する人間に会ったことがない。
それなのに本人はまるでそのことを気にしている様子もない。
「格好いい…」
そして少しずつ私の個性も変化していく。
それは良い方向になのか、それとも悪い方向になのか。
これは私がまだ高校生になる前の話…




