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第5話 氷の辺境伯は破れた封を拾う

誓約庫の床へ落ちた封蝋の欠片を、アルノーは自分で拾った。


 辺境伯が紙片を拾う必要など本来ない。だが彼は私の前にそれを置き、ただ一言だけ言った。


「見るんだろう」


 私は頷いた。欠片は、王都から北辺へ送られた婚礼証の封に使われたものだった。触れた瞬間、また白い線が走る。


 輸送箱番号三一。


 同送品、持参金宝飾箱二点。


 受領後移動先、王都持参金庫。


「婚礼証と一緒に、持参金宝飾まで動いています」


「未亡人の?」


「はい。本来は遺族へ戻るべき耳飾りと首飾りです」


 アルノーの目がわずかに細くなった。


「死人の持参金にまで手をつけたか」


「王都の誰かが」


「なら、死人の名誉ごと返してやる」


 淡々とした言葉だったのに、その中には怒りより硬い温度があった。私は少しだけ笑ってしまう。


「辺境伯は、思っていたより優しいんですね」


「優しくはない。紙一枚で領民を凍えさせる連中が嫌いなだけだ」


 そう言って彼は外套を翻した。氷の辺境伯は冷たい顔をしているのに、破れた封を見捨てない。


 その事実だけで、この北辺の書庫は王都よりずっとましだと思えた。


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