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第4話 欠番の婚礼証
翌朝、私は未整理箱七をひっくり返した。
出てきたのは、再発行待ちの婚礼証の束と、王都誓約局からの回収指示書だった。だが肝心の四八七二だけが抜かれている。代わりに入っていたのは「記載不備につき保留」とだけ書かれた簡素な札。署名も日付もない。
「これを指示書と呼ぶのは無理がある」
アルノーが私の肩越しに紙を見た。
「正規の命令なら局長印が要るはずです」
私は台帳をめくる。四八七二の行だけ、薄く削られた跡があった。番号を消して別の証を差し込もうとして、途中で諦めたのだろう。
「削り跡まで見えるのか」
「誓約印は、押されたあとより消されたあとに本音が残ります」
アルノーは無言で頷き、誓約庫の鍵束を私へ置いた。
「なら、全部開けろ。責任は私が持つ」
王都では、責任という言葉はいつも私へ押しつける側が使っていた。けれど彼のそれは、開けていいと言うための責任だった。
私は鍵束を受け取った。
欠番四八七二は、ここから先の全部を暴く鍵になる。




