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第3話 【誓印照合】は破棄理由を隠さない
その夜、年金申請に来た未亡人ヘレナ・ヴァイスが、破れた封筒を震える手で差し出した。
「夫は昨冬の救雪隊で亡くなりました。婚礼証の再発行がなければ、遺族年金を受けられないと」
封筒の中には、半分だけ残った婚礼証と割れた誓約印の欠片が入っていた。私は欠片へ指を触れた。次の瞬間、白い文字が視界いっぱいに流れ込んでくる。
発行番号四八七二。
破棄理由、王都誓約局による回収。
再送先、北辺誓約庫未整理箱七。
最終押印者、フェリクス・ローデン。
「……見える」
思わず声が漏れた。誰が押し、誰が回収し、どの箱へ押し込んだのか。封蝋と台帳と手の癖が一本の筋になって頭へ差し込まれてくる。
「何がだ」
アルノーが近くまで来ていた。私は息を整えながら答える。
「この婚礼証は、亡くなったご主人の死後に無効化されていません。王都が意図的に回収し、再発行を止めています」
ヘレナの顔から血の気が引いた。
「なぜ」
「この証が残っていると、ご主人の年金と持参金返還が必要になるからです」
私は机の端を握った。欠番四八七二は、ただの手違いではない。誰かの冬を奪うために抜かれた番号だ。
そして私の中で目覚めたそれは、破棄理由を隠してはくれなかった。




