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第19話 もうあなたの婚礼簿には戻らない
証言会の翌日、王宮から私は婚礼主任への復帰を打診された。
「局を立て直すために必要だ」
そう言われても、私は即答できた。
「戻りません」
フェリクスは別室で最後の説得を試みた。
「今ならまだ、君の席を用意できる」
「その席は、誰かを黙らせるための席でしょう」
「君のためを思って」
「私のために番号を消した人の台詞ではありません」
私は婚礼簿の写しを閉じる。もう、あの簿冊に私の人生を挟み込ませるつもりはなかった。
王宮の廊下を出ると、アルノーが待っていた。相変わらず無口な顔で、けれど今日ははっきりと口にする。
「北辺に、新しい誓約庫を作る。公開閲覧と再発行を分けない、本来のための場所だ」
「そこへ来い、と?」
「君がいないと始まらない」
胸の奥が熱くなった。私はゆっくり頷く。
「ええ。もう、あなたたちの婚礼簿には戻りません」




